2012年8月号 [Vol.23 No.5] 通巻第261号 201208_261002

国連持続可能な開発会議(リオ+20)におけるセミナーの開催等について

環境計測研究センター 環境情報解析研究室長 松永恒雄

2012年6月13日〜23日(本会議は20日〜22日)にリオデジャネイロ(ブラジル)で「国連持続可能な開発会議(リオ+20)」(United Nations Conference on Sustainable Development, Rio+20)が開催された。国立環境研究所(以下、国環研)は、環境省・宇宙航空研究開発機構(JAXA)と共同でサイドイベントとしてセミナー「温室効果ガス観測技術衛星GOSAT:グローバルな気候変動に関する政策策定への道筋」(Greenhouse Gases Observing Satellite “GOSAT”—A clue to global climate policy development)を開催したので、その概要等を報告する。

リオ+20は、ブラジル政府による「国連環境開発会議(地球サミット)」(1992年にリオデジャネイロで開催)のフォローアップ会合の提案を受け、第64回国連総会(2009年)で開催が決定された国際会議であり、その参加者数は約30,000人(参加国の代表団のほか、NGO関係者、報道関係者等を含む)、本会議場でのサイドイベント数は約500件にものぼった。

GOSATのセミナーは、リオ+20の本会議が開催されたRiocentro(写真1)の通りを挟んだ向い側にあるAthletes Park(写真2)に設置された日本の展示施設(ジャパンパビリオン、写真3)内の多目的スペースにて、6月21日に開催された。Athletes Parkは2016年にリオデジャネイロで開催されるオリンピックにも使用される面積約25haの公園であり、リオ+20参加国や地方自治体、国際機関や企業等の展示施設が多数設置された。

photo. 本会議場(Riocentro)

写真1リオ+20本会議場(Riocentro)の一部

photo. 展示会場(Athletes Park)

写真2リオ+20展示会場(Athletes Park)入口付近

photo. ジャパンパビリオン

写真3ジャパンパビリオン入口付近

セミナーは元国環研理事の西岡秀三氏の司会で行われた(写真4)。最初の講演者としてJAXA本間正修氏が開会挨拶の後、「JAXAにおける地球観測計画:現在と今後」と題してGOSATやその後継機であるGOSAT-2を含めたJAXAの地球観測衛星の現状と今後の計画について講演した。続いて環境省佐々木緑氏が「温室効果ガス観測技術衛星GOSATによる気候変動政策への貢献」として、宇宙からの温室効果ガス観測に対する行政面からの期待を述べるとともに、GOSATシリーズの戦略的開発や、米国・欧州の類似衛星との連携構想について説明した。またJAXAの中島正勝氏は「GOSATの概要、そしてGOSAT-2ミッション」と題して、衛星システムとしてのGOSATの紹介やGOSAT-2の構想を述べた。国環研からは横田達也室長(地球環境研究センター)が「GOSATプロジェクトのこれまでの成果とデータプロダクトの状況」として、今までに得られたGOSATの成果やプロダクトを紹介したほか、松永が「GOSAT-2:展望と課題」と題して、GOSAT-2で何を目的とするか、そのためにはどのような性能が求められるか等を講演した。最後に環境省梶原成元審議官の挨拶により、セミナーは閉会となった。

photo. GOSATセミナー

写真4GOSATセミナーの様子(司会の西岡元国環研理事)

さらにセミナーを開催したジャパンパビリオンにおいて、環境省の展示の一部としてGOSATやその他の炭素循環にかかる各種観測、GOSATシリーズに関する構想についてのポスターの展示やパンフレット等の配布も行った。

リオ+20での他国等の展示、サイドイベントにおいて特定の衛星ミッションに焦点をあてた企画はほとんどなかったことより、今回のGOSATに特化したセミナーおよび展示によってGOSATのプレゼンスを一定程度国内外に示せたのではないかと思う。

なおリオ+20についてはすでに各種報道があったように、成果文書として「私たちの望む未来(The Future We Want)」が本会議最終日の夜に採択された。本文書では環境や開発に関する現状を再確認した上で、持続可能な開発における「グリーン経済」の手段としての重要性や、国連環境計画(UNEP)等の制度的枠組みの強化、「持続可能な開発目標」策定に関する政府間交渉の開始、発展途上国への資金援助・技術供与の目標や重要性が謳われた。本文書は今後10年間以上にわたり、環境と開発の両立を目指す取り組みに関する重要な指針の一つになるものと考えられる。しかし本文書の採択後、本文書に対する各国の見解、スタンスを主張する演説が数時間続いたことからもわかる通り、必ずしも全ての参加者が本文書に満足している訳ではない。また先進国と発展途上国の対立、先進国間の立場や方針の違いといった他の国際会議でもまま見られる構図がリオ+20でも残念ながら見られた。「私たちの望む未来」に至るには、今後さまざまな利害を理解・調整した上で、一つずつコンセンサスを得ていくことが必要であろう。

関連ホームページ

  • 国連リオ+20ウェブサイト http://www.uncsd2012.org/
  • The Future We Want - Outcome Document http://www.uncsd2012.org/thefuturewewant.html
  • 外務省リオ+20ウェブサイト http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/kankyo/rio_p20/gaiyo.html
  • 外務省成果文書概要 http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/kankyo/rio_p20/pdfs/gaiyo2.pdf

リオ+20本会議場のフードコートと
日本館の会場(Athletes Park)の簡易トイレ

地球環境研究センター 衛星観測研究室長 横田達也

リオ+20には世界からの要人、政府関係者、NGO、報道関係者が集まる。その多くの人たちの胃袋を満たすため、本会議場の五つのパビリオンのうち、一つはまるまるフードコートであった。広いホールに数多くのテーブルと椅子が配置され、常時にぎわっていた(写真5)。周囲には国際色豊かな屋台が並ぶ。日本食としては寿司と焼きそば丼が販売されていた。ここには大きな液晶ディスプレィが配置され、音声と共に本会議場の様子が生中継されていた。本会議場に入場できるのは、政府代表団またはそれ以上のVIPとして登録されている者のみである。そのため、ここには食事をとりながらテーブルでノートPC作業を行う人も多く見られた。食事と作業場所を兼ねた効率的なパビリオンといえる。一方、本会議場から至近距離の各国のパビリオンが配置されているAthletes Parkには、会議後に施設を撤去するためか、環境に優しいつくりの建物、すなわちプレファブやテントの建造物が数多く見られた。日本館もその一つであった。面白かったのは、広い会場にトイレは集約されており、しかも工事現場用の洋式簡易トイレが立ち並ぶ(写真6)。そこを覗くと我慢の決意を強いられた。スーツ姿のどんな要人であってもここで用を足さなければならないことを想像すると、環境に優しいとはこのようなことなのかと、思わず笑みがこぼれた。

photo. フードコート

写真5本会議場のフードコートのあるパビリオンの様子

photo. 簡易トイレ

写真6Athletes Parkの簡易トイレ

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