2012年5月号 [Vol.23 No.2] 通巻第258号 201205_258006
観測現場から—千葉県館山— サンゴと一緒に北上中
水温の上昇にともなって温かいところにいる種類のサンゴの分布が北上しており、地球環境研究センターでは日本全国の8海域でモニタリングを進めています。サンゴは、共生する褐虫藻が光合成を行うことと、骨格を作って他の生き物のすみかとなっていることから、サンゴの分布が変化すると、それにともなってサンゴを利用する生き物の分布も変化すると考えられます。モニタリングサイトの一つである千葉県館山では1990年代以降に静岡県伊豆が北限といわれていたエンタクミドリイシが出現しました。そのエンタクミドリイシをのぞき込んでみると、小さなカニが棲んでいるのを見つけました(写真)。このカニの名前はサンゴガニ。サンゴにしか棲まないカニで、この発見が北限記録になります。他のモニタリングサイトでも気を付けて探してみると、長崎県対馬に北上したエンタクミドリイシにもサンゴガニが棲んでいました! やはり、サンゴが北上すると、サンゴを利用している生き物も北上するのです。

千葉県館山のエンタクミドリイシに棲むサンゴガニ(撮影:中井達郎)