ココが知りたい温暖化

Q10家庭でできる温暖化対策

!本稿に記載の内容は2010年3月時点での情報です

家庭でできる温暖化対策では、何をするのが最も効果的なのでしょうか。

金森有子

金森有子 社会環境システム研究領域 統合評価研究室 研究員 (現 社会環境システム研究センター 統合評価モデリング研究室 主任研究員)

平均的な家庭における温暖化対策としては、さまざまな対策を組み合わせる必要があるでしょう。ただし、家庭によりエネルギーの使い方は異なるため、どの対策が効果的であるかも家庭によって異なります。比較的簡単かつ効果的な対策としては、待機電力を減らすことなどが有効です。どんなに効果的な対策でも、一つで足りるということはありません。各家庭で可能な対策に積極的に取り組んで下さい。

家庭でできる温暖化対策:省エネと創エネ

はじめに、家庭でできる温暖化対策は大きく2種類あります。一つは「省エネ」といわれるもので、高効率機器の導入や生活での無駄を省くことによりエネルギー消費量を削減する方法です。そしてもう一つが「創エネ」です。これは、太陽光発電や太陽熱温水器などの再生可能エネルギーの導入を進める方法です。本回答では省エネに注目して効果的な温暖化対策を紹介していきます。

効果的な温暖化対策は家庭によって異なる

省エネに関する情報はいくつも発信されていますが、「ずばりこれが効果的である」と紹介されている対策はあまり見受けられないかもしれません。というのは、効果的な温暖化対策は家庭によって異なりますし、またすぐ取り組める対策もあれば、さまざまな理由により取り組むのに時間がかかる対策があるため、情報の発信者もこれが効果的と断定するのは難しいのです。たとえば、夜中まで照明をつけている家とそうでない家では、照明に必要な電力消費量が大きく異なりますし、冷房や暖房に利用するエネルギー量は地域差が非常に大きいです。このように家庭でのエネルギー消費量は、ライフスタイルや地域によっても異なります。ですから、家庭でできる効果的な温暖化対策は、「各家庭で多くのエネルギーを消費している物事そのものや、無駄な使い方を控えること」になります。

家庭からの二酸化炭素(CO2)排出量

これでは回答にならないので、まず初めに、現状を把握するために平均的な家庭におけるCO2排出量を示します。地球環境研究センターに設置されている温室効果ガスインベントリオフィス(GIO)では、自家用車のエネルギー消費を考慮した、家庭からの用途別のCO2排出量を算定しています。2007年度の結果を見ると、TVなどの機器を動かすための動力・照明(32.2%)、自家用乗用車(28.7%)、お風呂などの給湯(13.8%)、暖房(12.4%)、冷房(2.4%)となり、動力・照明、自家用車、暖房、給湯からのCO2排出量が家庭部門において多いことがわかります。

家庭でできる省エネ

それではここからは、家庭でできる省エネを紹介します。図1に家庭で簡単に取り組める温暖化対策と一年間のCO2削減効果について示しました[注1]。冷房に関する対策の効果が小さいですが、これはそもそも冷房のCO2排出量が少ないためです。図の中では削減効果が大きい対策として、自家用車関連の対策や、使用していない機器の電源プラグをこまめに抜くといった待機電力の削減が挙げられます。電源プラグの抜き差しは面倒ですから、節電タップ等を利用すると楽に管理できます。

自家用車に関してはエコドライブを心がけることはもちろんですが、さらに近所へ出かける際は徒歩や自転車、遠方へは電車などの公共交通機関を利用することで、エネルギー消費量が抑えられます。このようにエコな機器の使い方だけでなく、エネルギー消費量の少ない活動に切り替えるといったタイプの対策も非常に効果的です[注2]

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図1家庭でできる温暖化対策と二酸化炭素削減効果(単位:二酸化炭素換算kg)

一般財団法人省エネルギーセンター「家庭の省エネ大事典」より抜粋し筆者作成 http://www.eccj.or.jp/

*1) 加藤ら (2008) エコドライブによる燃費改善要因の解析. 自動車技術, 62(11).

金額は電気代が22円/kWh、ガス代が150円/m3、ガソリン代が124円/L、水道代が228円/m3のとき。

次に、すぐには取り組めないけれど効果が大きい対策として、省エネ製品の購入・買い替えと住宅に関する温暖化対策を紹介します[注2]。電気製品は年々エネルギー効率が良くなっています。製品を選ぶ際は、省エネラベル(図2)に注目して下さい。一年間の電気代の目安も示されており、家計へのメリットもわかる表示になっています。また、住宅にも省エネポイントがあります。リフォームによって窓ガラス、サッシを交換すると断熱性、気密性が大幅に向上し、暖房や冷房をそれほど入れなくても快適に暮らせるようになります。他にも住宅にホームエネルギーマネジメントシステム(Home Energy Management System: HEMS)[注3]を採用することは住宅内の無駄なエネルギー消費を防ぎます。

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図2省エネラベルの見本

最後に、少し視点を変えた対策を紹介します。たとえば、皆さんは食品を購入するとき、何に注目しますか? 値段や質、産地等を確認すると思います。産地の確認は安心、おいしいだけでなく、省エネの観点からも重要です。遠方で作られたもの(特に外国)は輸送に大きなエネルギーを要します。また、ビニルハウスを利用した栽培は、生産に多くのエネルギーを要します。地産地消、旬産旬消という言葉がありますが、地元で露地栽培される “旬” の食材を利用することは家庭部門の省エネに見かけ上は効果は現れませんが、家庭で取り組める温暖化対策の一つです。

あなたにできる温暖化対策

ここまでに家庭で取り組めるさまざまな温暖化対策を紹介してきました。地球温暖化の甚大な影響を避けるために、これからは家庭でも温室効果ガス排出量の大幅な削減が求められることは必至です。一方、現在のように大量の化石燃料由来のエネルギーに支えられた生活をしている私たちにとって、急にエネルギー消費量を大幅削減することは困難です。ここで示した対策はすぐに取り組めるものから、物理的、経済的、さまざまな理由によりすぐに取り組めないものもあります。まずは、環境家計簿[注4]などを利用し、自分の生活におけるエネルギー消費量を把握してみましょう。そしてここで示した対策のうち自分の家庭ですぐに取り組める対策はこれ、5年以内に取り組めそうな対策はこれ、といったように時系列的な視点も踏まえて対策を整理し、すぐ取り組める対策から積極的に取り組んでみてください。一つひとつの温暖化対策は効果が小さいものも少なくないうえ、生活を制限されるような息苦しさを感じるかもしれません。しかし、無駄なエネルギー消費の削減は、家計を助けることにもつながりますし、効果が小さいものを積み重ねていくうちに、意識や生活そのものが変わり、それなりに大きな効果が得られるようにもなります。この意識やライフスタイルの変化に加え対策技術の進歩や温暖化対策に関する制度整備が進めば、生活の質を落とさずに大幅な温室効果ガスの削減が可能になるとの報告もあります。是非皆さんには前向きに、そして積極的に、身近な省エネ行動から取り組んでほしいと思います。

注1
削減効果はある条件の下での数値です。たとえば冷房の対策では、「1年に112日、1日9時間、外気温31°Cの時にエアコン(2.2kW)の温度設定を27°Cから28°Cに上げた場合」の効果です。外気温が高い場合、冷房時間が長い場合、エアコンの能力が大きい場合等の条件の違いにより、削減効果は異なります。
注2
省エネ機器への買い替えのタイミングやかしこい車の使い方に関しては、ココが知りたい地球温暖化「省エネ製品に買い替えるべき?」や、「車のかしこい使い方」に、詳しい説明がありますので、合わせて御覧になって下さい。
注3
HEMSとは住宅内の家電機器や給湯機器など住宅内のエネルギー消費機器をネットワーク化し、自動制御するシステムであり、民生部門における省エネルギーと地球温暖化への対策技術として期待が寄せられています。
注4
さまざまなところで環境家計簿は紹介されています。たとえば東京電力ではCO2家計簿という名前で紹介されています。

さらにくわしく知りたい人のために

  • 一般財団法人省エネルギーセンター 生活の省エネルギー http://www.eccj.or.jp/machine.html