2015年9月号 [Vol.26 No.6] 通巻第298号 201509_298005
夏の大公開「あなたのエコの芽見つけよう、育てよう!」を開催しました
2015年7月18日(土)、夏休み最初の土曜日に、恒例の国立環境研究所「夏の大公開」を開催しました。この機会に研究所に来て下さった方の数は、昨年度より少し多い4,433名でした。地球温暖化研究棟では、工事中の建物が近くにありアクセス道路が通行止めとなってしまったため、午前中は来場者がやや少ない状況でしたが、新しい企画なども盛りだくさんでお客様満足度の高いイベントができたのではないかと思います。
この日の地球環境研究センターの主な出展内容は以下の通りです。
1. 徹底討論、地球温暖化の緩和策—温室効果ガスをどこまで減らすべきか—
シリーズ5回目となった、来場者の皆さんと意見を交わしながらのパネルディスカッション。今回は、最も基本的な温暖化対策である地球温暖化の緩和策をテーマとしました(写真1)。詳細は、後日あらためてご紹介したいと思います。
2. 潜入! 実験室ツアー「温室効果ガスを測る—装置からスパコンまで—」
地球温暖化研究棟では、公開エリア以外の施設(実験室・データ処理室等)を登録制で特別に公開するラボツアーを毎年行っています。今回は、今年3月に屋外の大型コンテナ内に設置した地上で太陽光を用いて温室効果ガスを高精度に観測する高分解能FTS観測システム[注]という実験装置の説明をメインにし(写真2)、衛星で観測した温室効果ガスに関するデータを処理する専用スーパーコンピュータと、今年6月に導入したばかりの汎用スーパーコンピュータをご紹介する盛りだくさんのコースを設定しました。ツアーは午前と午後で計6回行いましたが、全回満員の人気でした。屋外の大型コンテナ内で何が行われているのかを知り、また1日に2つもスーパーコンピュータが見られる機会は、貴重な経験になったかと思います。
3. 地球環境モニタリング「空から測る」「海で測る」「宇宙から測る」
地球温暖化という現象をとらえるためには、さまざまな環境における温室効果ガスの観測が不可欠です。以前のラボツアーで実験室をご紹介した、航空機による大気観測プロジェクト「CONTRAIL」では、航空機搭載測定機器の実物を展示し、どのような仕組みで民間航空機を用いた大気観測を実現させているのかをわかりやすく説明しました(写真3)。民間の航空会社と国の研究機関が協力すれば地球規模の環境変化をより詳細に、効率よく把握することができるということがわかっていただけたのではないかと思います。
また、海が二酸化炭素を吸収したり放出したりすることや、二酸化炭素が海に吸収されると海水が酸性化することを楽しく知っていただくために、体験型の実験を行いました。実験は、液体の酸性・アルカリ性を調べる溶液(BTB溶液)を混ぜた海水入りの小瓶に呼気や外の空気を入れて振り混ぜた時の色の変化を観察するというものです。海水が自分の息の中に含まれる二酸化炭素を吸収して青色(アルカリ性)から黄色(酸性)に変わったり、部屋の空気を入れて振り混ぜるとまた青色に戻ったりする様子に、お子さんから年配の方まで皆さん驚かれていました(写真4、図)。
今年で観測開始から7年目を迎えた温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」の展示は、直径約80cmの球面ディスプレイへの衛星観測データの投影など、かっこいいものばかりで、今年も大人気でした。自在に地球を動かし、「宇宙から」見ているような感覚は、好奇心をそそるのでしょうか。後継機の「いぶき2号」計画の紹介もありました。
4. 植物や土壌によるCO2の吸収・排出
植物や土壌の影響による二酸化炭素濃度の変化を見る実験に関する展示もありました。実際に観測に用いる自動開閉チャンバーシステムを運転し、土壌から発生した二酸化炭素がチャンバー内にたまっていく際の濃度変化を、大画面スクリーンで見ていただきました。一方で、植物苗を入れたチャンバーにLEDランプを照射して、光合成によってチャンバー内の二酸化炭素が減少していく様子も観察していただきました。またロボットアームのような3次元超音波風向風速計を用いて、樹木の周辺の風向・風速を精密に測り、二酸化炭素の移動を詳細に観測していることを説明しました。来場した方々の多くは、土から二酸化炭素が発生するということや、植物がたくさんの二酸化炭素を吸収することに驚かれていた様子でした(写真5)。
5. 地球温暖化とオゾン層破壊の解説
数値シミュレーションによる気候変動予測チームでは、Flashを使ったオゾン層クイズと温暖化クイズ、「5分で解説します。温暖化編」「5分で解説します。オゾン層編」の展示を行いました。
クイズはネコのイラストがかわいい「おこさま編」とひねりのきいた問題が並んだ「おとな編」があり、順番待ちができるほどの人気でした。「5分で解説します」のほうは温暖化とオゾン層の最新の科学的知見に関して、研究者がパワーポイントを使って、5分で解説しました(写真6)。
6. パネルで探検クイズ ふね編
今回のクイズのテーマは「海で測る」。受付でクイズシートと蛍光ペンを受け取り、展示パネルを見てクイズに回答すると、地球環境研究センターオリジナルミニタオルがもらえる人気企画です(写真7)。シートを受け取った参加者は辺りをキョロキョロ。目的の「ふね」のパネル付近は大賑わいでした。クイズをきっかけに、普段じっくり見ないような展示にも足を運び、関心をもってもらう、というこの企画の趣旨は今年も大いに達成されていました。
7. ぱらぱらマンガ喫茶
子どもたちがジュースを飲みながら地球環境に関する工作(ぱらぱらマンガ、新作パズル)などが楽しめる部屋を設けました(写真8、9)。飲み終わったジュースのごみの分別がきちんとされていたのは、参加者の環境への関心の高さを表しているのでしょう。
8. UVかるた選手権in地球温暖化研究棟
パネルディスカッションが終わった場所で子どもたちとお母様を主な対象として、UVかるた選手権を開催しました(写真10)。かるたの読み札はそのまま覚えておくと、いつかはきっと役に立つものばかり。2枚の札をとると、UVセンサー付きカードかこの夏刊行された「太陽紫外線と上手につきあう方法」という本がもらえてしまうというから、子どももお母さんも真剣そのものでした。
9. 自転車 de 発電
自転車をこぐエネルギーを電気のエネルギーに変えて、家電製品を動かすことで、エネルギー消費量について体感してもらうこの企画は、年齢(小・中・高・一般)と性別でクラス分けした発電量ランキングを出すようにリニューアルするなど毎年強化されています(写真11)。そして、参加者には、発電の時系列グラフや暫定順位を表示した認定書をお渡ししました。電気は自宅ではスイッチ一つでつけられますが、電気と同じ仕事を自分でするとなると、そのエネルギーがいかに大変なものであるかが実感できます。
夏の大公開では、職員総出で皆様を楽しくお迎えできるよう、毎年工夫を凝らした企画を用意しています。TXつくば駅より、産業技術総合研究所と共同無料循環バスも運行される(今年は10分間隔)等、アクセスも良くなっていますので、是非一度足をお運びください。