2014年6月号 [Vol.25 No.3] 通巻第283号 201406_283009
酒井広平講師による「検定試験問題を解いてみよう」シリーズ 6 温室効果ガスインベントリと京都メカニズム —3R・低炭素社会検定より—
3R・低炭素社会検定は、持続可能な社会の実現のため、3Rや低炭素社会に関する知識を活かして、実践行動を行う人を育てることを目的としています。【3R・低炭素社会検定 低炭素社会分野試験問題解説集「はしがき」より】
検定試験問題から出題します。
問13京都議定書に関する説明として、最も不適切なものはどれか?
中級レベル
正答率 84%
- ① 京都議定書は2008年の北海道・洞爺湖サミットで採択された
- ② 附属書Ⅰ国は毎年温室効果ガス排出吸収目録(インベントリ)を提出しなければならない
- ③ 各国は削減目標を達成するために京都メカニズムを利用することができる
- ④ 京都議定書第一約束期間において、附属書Ⅰ国全体で、基準年に比べて5%削減することを定めている
- ヒント
- 京都議定書は1997年の京都のCOP3で採択されました。
- 答えと解説
-
答え: ①
京都議定書は、1997年に京都で開催された気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)で採択されました。京都議定書は、2008年〜2012年の第一約束期間において先進国(附属書Ⅰ国)全体で温室効果ガスを1990年比5%削減することを定めています。さらに、先進国(附属書B国)に対して、各国ごとに拘束力のある数値目標を定めています(例:1990年比で日本−6%、アメリカ−7%、EU−8%など)。各国はこれらの目標を達成する義務を負いますが、柔軟性措置として海外で実施した温室効果ガスの排出削減量等を、自国の排出削減約束の達成に換算することができる京都メカニズムの利用を認めています。京都メカニズムには、国際排出量取引、クリーン開発メカニズム(CDM)、共同実施(JI)があります。
京都議定書の基準年は一部の国を除き基本的に1990年ですが、HFCs、PFCs、SF6については、1995年を基準年とすることもできます。
問14京都メカニズムに含まれないものはどれか?
初級レベル
正答率 89%
- ① CDM(クリーン開発メカニズム)
- ② JI(共同実施)
- ③ AGTC(技術協力アドバイザリーグループ)
- ④ 国際排出量取引
- ヒント
- 京都メカニズムに含まれるのはクリーン開発メカニズム(CDM)、共同実施(JI)、国際排出量取引の3種類です。
- 答えと解説
-
答え: ③
京都議定書では、各国が数値目標を達成するための補助的手段として市場原理を活用する京都メカニズムが導入されています。京都メカニズムには以下の制度が含まれます。
- クリーン開発メカニズム(CDM):附属書Ⅰ国(投資国)が非附属書Ⅰ国(ホスト国)において、排出削減または吸収プロジェクトを実施し、その結果生じた排出削減量の一部を附属書Ⅰ国がクレジット(CER)として獲得し、自国の削減量に組み入れることができる仕組み
- 共同実施(JI):附属書Ⅰ国同士が協力して排出削減または吸収プロジェクトを実施し、その結果生じた排出削減量を投資国がクレジット(ERU)として獲得し、自国の排出削減量に組み入れることができる仕組み
- 国際排出量取引(IET):附属書Ⅰ国同士が排出割当量やクレジットを売買する仕組み
問15CO2排出量に関する記述にあてはまる割合として、最も適切なものはどれか? 2008年度、日本の温室効果ガス排出量のうちCO2の排出量は A %を占めており、そのほとんどがエネルギー起源のCO2排出量となっている。
中級レベル
正答率 61%
- ① 30
- ② 50
- ③ 70
- ④ 95
- ヒント
- 日本のCO2の割合は驚くほど高く、排出量約13億トンのうち、12億トン以上はCO2になります。
- 答えと解説
-
答え: ④
温室効果ガス排出量のガスにはCO2のほか、CH4、N2O、HFCs、PFCs、SF6といった6種類のガスを総じて温室効果ガス総排出量として報告、発表されております。この設問では日本におけるCO2の排出が全体総排出量の何%を占めているかを問われております。日本の排出量は95%がCO2排出であり、その他のガス(CH4、N2O、HFCs、PFCs、SF6)の排出割合は小さくなっております。特に、石炭、石油、天然ガス等の化石燃料を燃やして排出されるエネルギー起源のCO2排出量が多くを占めており、いわゆる工業国であることが分かります。例えば、家畜や農業の盛んなニュージーランドはCH4排出が全体の約4割を占めるなど、国の経済や国土状況によって、排出されるガスの種類に特徴があります。
- *正答率は第5回3R・低炭素社会検定受験者のものです
- 出典:3R・低炭素社会検定(http://www.3r-teitanso.jp)低炭素社会分野試験問題解説集
温室効果ガスインベントリと京都メカニズムについては、「わが国の2012年度(平成24年度)の温室効果ガス排出量について 〜第一約束期間の排出吸収量出揃う。マイナス6%の目標を達成〜」でも紹介しています。