2014年6月号 [Vol.25 No.3] 通巻第283号 201406_283002

地球環境豆知識 29 緩和策と適応策

  • 地球環境研究センター 主幹 広兼克憲

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地球温暖化の対策には、その原因物質である温室効果ガスの排出量を削減する(または植林などによって吸収量を増加させる)「緩和策(mitigation)」と、気候変化に対して自然生態系や社会・経済システムを調整することにより温暖化の悪影響を軽減する(または温暖化の好影響を増長させる)「適応策(adaptation)」とに大別できる。

緩和策は、大気中の温室効果ガス濃度の制御等を通じ、自然・人間システム全般への影響を制御するのに対して、適応策は直接的に特定のシステムへの温暖化影響を制御するという特徴をもつ。したがって多くの場合、緩和策の波及効果は広域的・部門横断的であり、適応策は地域限定的・個別的である。

緩和策の例としては、京都議定書のような排出量そのものを抑制するための国際的ルールや省エネルギー、二酸化炭素固定技術などをあげることができる。適応策の例としては、沿岸地域で温暖化の影響による海面上昇に対応するための高い堤防の設置や、暑さに対応するためのクールビズ、作物の作付時期の変更などの対症療法的対策が相当する。

なお、最大限の排出削減努力(緩和策)を行っても、過去に排出した温室効果ガスの大気中への蓄積があり、ある程度の気候変化は避けられない。それによる影響に対してとり得る対策は、変化した気候のもとで悪影響を最小限に抑える「適応策」に限られる。しかし適応策だけですべての気候変化の影響を和らげることも不可能であり、緩和策も同時に進める必要がある。適応策は温暖化対策全体の中では緩和策を補完するものとして位置づけられているが、双方とも温暖化対策として不可欠である。緩和策の効果が現れるには長い時間がかかるため、早急に大幅削減に向けた取り組みを開始し、それを長期にわたり強化・継続していかなければならない。

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参考文献

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