CONTRAILについて

民間航空機を利用した大気中二酸化炭素など温室効果ガスの観測プロジェクト

二酸化炭素(CO2)に代表される大気中の温室効果ガスの濃度は18世紀後半の産業革命以来増え続けています。2021年に発表された気候変動に関する政府間パネルの第6次評価報告書(IPCC AR6)には、「1750 年頃以降に観測された大気中の温室効果ガスの濃度増加が、人間活動によって引き起こされたことには疑う余地がない」と記されています。将来の気候を予測するためには将来の温室効果ガスの濃度を予測する必要があります。大気中CO2の分布や時間変動には、CO2が陸上の植物や海洋によってどのような吸収や放出の影響を受けたかという情報が含まれています。しかしながら、CO2の吸収量や放出量を推定するために必要な地球上のCO2の観測は未だ不十分であり、特に上空における観測は決定的に不足しています。

上空のCO2を観測する際の民間航空機の利用は、その定期性、長期性、そして広い空間をカバーできる特徴を持つことから、極めて強力な手法であると言えます。このような観点から日本航空(JAL)が運航する航空機を利用した第1期のプロジェクトでは、自動大気サンプリング装置(ASE)を使って上空の大気を採取する方法でCO2などの温室効果ガスを1993年から2005年までの長期にわたって観測しました。これらの観測から、西太平洋上空におけるCO2濃度の季節変化や長期変化の中の年々変動が南半球から北半球にわたる各緯度によってそれぞれ特徴を持っていることなどを明らかにしました(Matsueda et al., 2002)。

JAL航空機を使った第2期のプロジェクトはCONTRAIL(Comprehensive Observation Network for TRace gases by AIrLiner)と呼ばれ、改良型のASEやCO2濃度連続測定装置(CME)を新たに開発し、2005年から2006年にかけてボーイング747-400型機と777-200ER型機に搭載しました(Machida et al., 2008; Matsueda et al. 2008)。2015年から2016年にかけてはボーイング777-300ER型機にCMEを搭載するための機体改修を行いました。これらの航空機は両方又はどちらか一方の装置を搭載して定期的に日本とオーストラリア、ヨーロッパ、東アジア、南アジア、東南アジア、ハワイそして北アメリカの各空港を結ぶ路線上で広範囲にわたる観測データを提供しています。