2026年8月発行

かなわなかった見学会 令和8年度エコスクール・地球環境モニタリングステーション—落石岬見学会報告

  • 嵯峨 理紗(連携推進部外部資金室補助金調整係長)
  • 田中 樹(環境リスク・健康領域エコチル調査コアセンター研究事業室係員)

はじめに

毎年6月の環境月間にあわせて、環境保全の重要性を子どもたちに学んでもらうことを目的として、北海道根室振興局と根室市は、落石地区の小学生を対象にエコスクールを開催しています。

国立環境研究所もこの取組に協力し、地球環境モニタリングステーション落石岬の見学会を実施しています。また、長期観測を継続していくうえで地域の方々のご理解が欠かせないことから、エコスクールを「地元にある施設から、世界的な環境研究に役立つ観測データが生み出されている」ことを知っていただく貴重な機会とも捉えています。

ここでは、今年度の事前学習会の模様と、6月4日(木)に実施予定だった見学会にまつわるエピソードをお届けいたします。

地球環境モニタリングステーション落石岬とは?

国立環境研究所が1994年に北海道根室市に建設した観測ステーションで、2024年に30周年を迎えました。本施設では大気中の温室効果ガスなどの観測を継続しており、得られたデータは地球環境研究に広く活用されています。詳細は、以下からご覧いただけます。

落石岬ステーションとその周辺の様子
(写真:落石岬ステーションとその周辺の様子)

事前学習会

今年度も6月の見学開催に先立ち、5月22日(金)に北海道根室振興局のご協力のもと、見学会に参加予定の小学生の皆さま(根室市立海星小学校と根室市立おちいし義務教育学校の5、6年生)との事前学習会がオンライン開催されました。国立環境研究所側は、地球温暖化研究棟の1階にある会議室1から配信を行いました。

地球温暖化研究棟。1階には会議室のほか、ギャラリーもあります。
(写真:地球温暖化研究棟。1階には会議室のほか、ギャラリーもあります。)

事前学習会では、町田敏暢特命研究員が地球環境モニタリングステーション落石岬の概要や、ここで何を観測しているのか、地球温暖化とは何か、について説明しました。

説明の中で、落石岬で観測したCO2濃度のグラフも紹介されました。グラフを見ると、濃度が長期的に上昇しているだけでなく、毎年ほぼ同じ周期で増減し波打っていることが分かります。こうした特徴に着目しながら、「CO2濃度が低くなる季節はいつか」「季節によって変化する原因は何か」といったクイズが出題されました。

町田敏暢特命研究員の説明の様子。長年の継続的なデータ取得があってこそ描けるグラフです。
(写真:町田敏暢特命研究員の説明の様子。長年の継続的なデータ取得があってこそ描けるグラフです。)

地元の小学生の皆さまは町田敏暢特命研究員からのクイズに積極的に手を挙げるなど、環境問題への興味・関心が非常に高いことがうかがえました。また、「化石燃料の材料は何ですか?」といった鋭い質問もいただき、町田敏暢特命研究員が「良い質問!」と回答する場面もありました。

町田敏暢特命研究員がクイズを出している様子。余談ですが、町田敏暢特命研究員は説明にあたって落語の枕(まくら)を参考にしているとのこと。
(写真:町田敏暢特命研究員がクイズを出している様子。余談ですが、町田敏暢特命研究員は説明にあたって落語の枕(まくら)を参考にしているとのこと。)

また、説明の中で「自動サンプリング装置」「海洋がCO2を吸収」「船舶での観測」など、興味や関心をかき立てられ、深掘りしたくなるキーワードがたくさん出てきました。事前学習会後に調べてくださった方もいたのではないでしょうか。今回の事前学習会をきっかけに、子どもたちの中から将来の研究者が生まれることがあれば嬉しい限りです。

最後に、町田敏暢特命研究員から子どもたちへ「自然を大切に、CO2を出さない工夫を」というメッセージが贈られ、45分ほどの事前学習会は盛況のうちに終了し、見学会に向けて期待が高まります。

雲行きが怪しくなり……

落石岬での見学会の日が近付くにつれて、出張者全員の心に一つの懸念が生じ、次第に大きくなっていきました。それは、台風です。台風6号「チャンミー」が強い勢力で日本列島に迫っていました。

町田敏暢特命研究員、笹川基樹室長をはじめ、今回の見学会の対応を行う国立環境研究所のメンバーは、前日6月3日(水)昼頃の同じ飛行機で東京から北海道に向かう予定であったため、運航するのかどうか、欠航した場合の対応はどうするのか、判断のタイミングに応じた行動と連絡の体制を準備して、緊張しながら航空会社の発表を待ちました。

直前の中止

もしや予定どおり運航するのではという一同の期待もむなしく、6月2日(火)夕方、航空会社より欠航の連絡が届き、今回の見学会は残念ながら中止にせざるをえませんでした。

6月に日本列島に台風が上陸したのは14年ぶりとのことで、今回は予期せぬ見学会中止となりました。近年、台風や大雨による気象災害が毎年のように発生していますが、原因の一つとして地球温暖化があるといわれています。

参考:パンフレット「深刻化する豪雨~我々はどのようなリスクに直面しているのか~2025」|環境省
https://www.env.go.jp/content/000346702.pdf

また、ここ数年は感染症の流行や熊の出没など、見学会の実施に影響を及ぼす様々な事象が発生しています。本年も台風の接近に加え、落石岬近隣地域での林野火災に関する情報が共有されるなど、自然環境の変化が研究活動にも影響を及ぼし得るのだということを改めて強く感じました。

こうした時代だからこそ、落石岬をはじめとする観測拠点で長期観測を継続し、地球環境の変化を正確に把握していくこと、また、その成果や意義を観測地域の方々や次世代を担う子どもたちに伝えていくことが重要と考えています。

おわりに

見学会を心待ちにしてくださっていた根室市立海星小学校、根室市立おちいし義務教育学校の皆さまには、実際に落石岬を訪れていただくことはできず、残念な思いをさせてしまったかもしれません。今回の事前学習会を通じて、地球環境モニタリングステーション落石岬や地球環境観測について少しでも関心を持っていただけたのであれば幸いです。

また、今回の見学会開催に向けてご尽力くださった北海道根室振興局、根室市と地元の皆さまに心より感謝申し上げます。

今回の事前学習会や見学会の準備を通じて、皆さまのご理解とご協力が長期観測を支えていることを改めて実感しました。今後もこうしたつながりを大切にしながら、地球環境観測の意義や成果を地域の皆さまや次世代を担う子どもたちに伝えていきたいと思います。

行くはずだった落石岬ステーションの内部。また機会があればぜひ訪れたいです。
(写真:行くはずだった落石岬ステーションの内部。また機会があればぜひ訪れたいです。)

地球システム領域の追記

今回は台風の影響により開催を見送ることとなりましたが、エコスクールでは、大気中のCO2が海に吸収されることで海水が酸性化していく仕組みや、その影響について、海水酸性化実験を通して学んでいただく予定でした。また、実際にCO2を観測している機器の見学を通じて、根室市立海星小学校・根室市立おちいし義務教育学校の皆さまが暮らす地域が、地球温暖化の解明や対策に欠かせない重要な観測の場であることを知り、身近に感じていただきたいと考えておりました。幸い今年の6年生は昨年度のエコスクールに参加いただきましたので、来年度にエコスクールを開催できればすべての学年の方に漏れなくステーションを見学いただけることになります。来年度に落石岬でエコスクールが開催できるよう関係者の方々と調整を進めさせていただければと思っておりますので、今後とも、地球環境研究センターの業務にご理解・ご協力いただけますと幸いです。

(地球システム領域地球環境研究センターモニタリング支援係一同)

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