最近の研究成果 地上設置フーリエ変換分光計観測網、スカイラジオメーター、ライダーデータを用いた「いぶき」(GOSAT)から得られた二酸化炭素及びメタンカラム平均濃度のエアロゾル及び薄い巻雲の影響評価
温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)により観測された短波長赤外スペクトルから二酸化炭素(CO2)及びメタン(CH4)のカラム平均濃度(XCO2及びXCH4)が推定されている。2009年の打ち上げ後「いぶき」の観測は継続されているが、推定値のエアロゾルや巻雲による影響はあまり多く調べられていない。
本研究では、図1に示すような3観測地点(日本のつくばと佐賀、ニュージーランドのローダー(Lauder))において、「いぶき」と地上設置フーリエ変換分光計からの推定値の差(CO2の場合はΔXCO2、CH4の場合はΔXCH4)と、エアロゾルや巻雲との関係を調査した。調査にあたり、スカイラジオメーター観測から取得したエアロゾルの光学的厚さ(AOT)*1、オングストローム指数(AE)*2、単一散乱アルベド(SSA)*3とライダー観測から取得したエアロゾルや薄い巻雲の鉛直分布を使用した。「いぶき」のデータは地上観測地点の緯度・経度0.1°以内で得られたもの、地上観測のデータは「いぶき」の上空通過時間の30分以内のデータを平均したものを用いた。

図2に示すように、ローダーのAOTの値は大気が清浄な地点であるため他の地点よりかなり小さいが、全地点でΔXCO2とスカイラジオメーターによる波長500 nmのAOTとの間の回帰直線は負の勾配を示した。巻雲や厚い境界層内エアロゾルが存在する場合、「いぶき」のΔXCO2の値が低くなる傾向があること、砂塵現象による大きなAOTの値の時には、大きな負のΔXCO2の値となることが分かった。

図3に示すように、ローダーはつくばや佐賀よりも大気が清浄な地点で対流圏のエアロゾルの影響を受けにくいため、ライダー観測から見積もった成層圏エアロゾル光学的厚さ(SAOD)の値が小さいにもかかわらず、SAODとΔXCO2及びΔXCH4の間の回帰直線は、明瞭に大きな負の勾配を示した。図には示していないが、9月〜11月の間は、AOTとΔXCO2及びΔXCH4の間の回帰直線は両方とも負の勾配を示した。本研究で得られた知見が、「いぶき」データの更なるデータ品質の改良に活用されることを期待したい。
