2019年6月号 [Vol.30 No.3] 通巻第342号 201906_342003

科学の国の「はて、な」のコトバ 15 PICO(ピコ)

  • 地球環境研究センター 物質循環モデリング・解析研究室長 伊藤昭彦

【連載】科学の国の「はて、な」のコトバ 一覧ページへ

普段の生活で使われるコトバが、科学の国ではちょっと違う意味になることがあります。このコーナーでは、そうしたコトバをご紹介していきます。

PICOとはPresentation with Interactive Contentsの略で、口頭・ポスターに次ぐ第3の発表形式であり、筆者は今回が初めて使用する発表の方法であった。最大の特徴は、専用の会場に設置された数十台のタッチパネルディスプレイを用いて、ムービーやアニメーションを駆使したプレセンテーションが可能なことである(写真参照)。ポスター会場に併設された10ヶ所ほどのPICOブースでは、まず各講演者が聴衆の前で大画面スクリーンを使った2分間の口頭プレゼン(2 min madnessと呼ばれていた。確かにハイテンションになる)を行う。招待講演者はやや長めの時間を割り当てられることもある。その後、講演者は各々タッチパネルディスプレイの前に移動して、訪れた聴衆に詳しいプレゼンと質疑応答を行う(だいたい1時間半ほど)。そのため、アピール点をまとめた2分間用のスライドと、詳しいプレゼンの2つを準備する必要がある。タッチパネルを用いたインタラクティブなプレゼンが可能なのは大きな利点だが、実際にやってみると最前列の聴衆と1対1になりがちで難しさも感じた。ポスターの場合、質疑中も他の人々はポスターを眺めることが可能だが、PICOの場合、質疑中にスライドをあちこち前後させるので、なかなか2列目以降の人には内容を伝えにくかった。また、基本的に2時間のセッション中しかディスプレイに表示されないので、ポスターのように1日展示することができないことにも留意すべきである。PICOは、テクノロジーを活用するという意味だけではなく、本文に書いたような口頭発表のキャパ不足対策という意味もあるようなので(2019年大会では1287件がPICO発表)、今後はさらに割合が増えることも予想される。

写真PICOブースの概観。左の大スクリーンで2分間の口頭プレゼンを行った後、奥 + 右側のタッチパネルディスプレイで各講演者が説明と質疑を行う

ご意見、ご感想をお待ちしています。メール、またはFAXでお送りください。

地球環境研究センター ニュース編集局
www-cger(at)nies(dot)go(dot)jp
FAX: 029-858-2645

個人情報の取り扱いについては 国立環境研究所のプライバシーポリシー に従います。

TOP