2014年1月号 [Vol.24 No.10] 通巻第278号 201401_278008

自転車発電から未来を担う子どもたちへ —つくばサイエンスコラボ2013報告—

地球環境研究センター 交流推進係

2013年11月9日(土)、10日(日)の2日間、つくばカピオで「つくば科学フェスティバル」「つくば環境フェスティバル」「つくば3Eフォーラム」の3イベントが同時に開催される「つくばサイエンスコラボ」が行われました。国立環境研究所は、「つくば科学フェスティバル」に、地球環境研究センターの「自転車DE発電」を出展しました。

自転車発電は、地球環境とエネルギーを考えてもらうためのアイテムとして、子どもから大人まで、どこでも大人気です。もともとは、電気エネルギーを作り出す「大変さ」を体験してもらい、少しでも節電や省エネに協力いただくことを願って始まりました。現在では、白熱電球と蛍光灯、LED電球など、最近の省エネ機器との消費電力量の違いについても体験してもらえるようになっています。

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自転車発電は、2日間とも行列が途絶えることがないくらいの盛況でした

「つくば科学フェスティバル」には、防災科学技術研究所や高エネルギー加速器研究機構、農業環境技術研究所、森林総合研究所など、つくばの代表的な研究機関が参加し、子どもにも大人にも楽しくて興味深い実験や展示を行っていました。また、つくば市内の小学校から大学など、多くの団体がそれぞれに工夫を凝らした出展をしていました。自転車DE発電のコーナーでは、小学生や中学生をはじめ、いつもより多くの子どもたちが、自転車発電にトライしてくれました。

身近な自転車をこいで明かりがついたり、扇風機が回ったりすると、大人も子どももなぜか一所懸命になります。特に子どもたちは、なんとかテレビをつけようと必死になります。実は、今の自転車発電で使っているテレビ(2010年式省エネ型32インチ液晶テレビ)は白熱電球よりも消費電力量が少ないので、子どもでもつけることができます。今回来てくれた子どもたちも、テレビ画面が立ち上がるまでの時間、すごいがんばりを見せてくれました。発電後に「このまま30分がんばれるかな?」ときくと、ほとんど「それは無理」と首を振ります。「じゃあ、電気は大切に使おうね」と問いかけると、素直にうなずいてくれます。やはり「体験」は大切なのです。

子どもたちのなかには、自転車発電にはまってしまい、リピーターとして戻ってくる子が必ず何人かいます。2回も3回も乗りたくなるのはなぜなのか、不思議な気がしますが、電気を自分で起こして明かりやテレビをつけたりできることが、単純にうれしいのかもしれません。電気は普通、私たち自身が「作り出す」ものではありません。スイッチを入れさえすれば電気は手に入ります。電気は目に見えません。実際には自分たちがかかわれないもの、つまり、どこか知らない場所で、知らない誰かによって準備されているものです。でも、一所懸命に自転車をこげば、自分も電気を作り出して明かりやテレビをつけることができるのです。子どもたちにとっては、運動エネルギーから電気エネルギーへの転換という基本的な科学的知見を体得し、同時にエネルギーを生産することが如何に大変か、身をもって知ることができたことが、特別な「体験」となったのではないでしょうか。

自分が自転車をこぐことで、世界を明るくしたり、テレビをつけたりできるということは、子どもたちにはうれしいことなのです。そして、そういうことを身をもって知った子どもたちならば、きっと、これからの「持続可能な」社会に必要となる、新たなエネルギー・システムについて、すばらしいアイデアと真摯な姿勢で取り組んでくれるに違いないと、なんだかとても頼もしく感じた一日でした。

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「つくばサイエンスコラボ2013」の会場。つくばの代表的な研究機関や、小学校から大学まで、さまざまな団体が、工夫を凝らした展示を行いました

目次:2014年1月号 [Vol.24 No.10] 通巻第278号

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