2013年9月号 [Vol.24 No.6] 通巻第274号 201309_274010

オフィス活動紹介:国環研GOSATプロジェクトオフィス いよいよ観測5年目!となった温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」

2009年1月に打ち上げられた温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)に搭載された二つのセンサ、温室効果ガス観測センサ(Thermal And Near infrared Sensor for carbon Observation-Fourier Transform Spectrometer: TANSO-FTS)と雲・エアロソルセンサ(Thermal And Near infrared Sensor for carbon Observation-Cloud and Aerosol Imager: TANSO-CAI)は順調に稼働しており、海外局で受信された観測データは、宇宙航空研究開発機構(JAXA)で1次処理され、レベル1プロダクトとして国立環境研究所(NIES)に毎日配信されてきます。NIES では、配信されたレベル1プロダクトと気象庁など他機関から入手した参照データとを用いて、二酸化炭素とメタンのカラム量をあらわすレベル2プロダクトを作成し、その算出データを用いて全球における二酸化炭素の吸収・排出量と濃度の3次元分布の推定処理を行い、レベル4プロダクトを作成しています。GOSAT観測データの定常処理は、2009年6月以降の観測データについて実施されており、既に4年以上の観測データが蓄積されています。GOSATの設計寿命は5年!ですが、順調に安定した状態で運用されており、今後も継続して観測データを取得できる見込みです。

2013年5月中旬に実施されたJAXAによるレベル1処理バージョンアップの結果として、TANSO-FTSデータの更なる品質向上が期待されます。これに対応してNIESでも9月には、5月以降の新レベル1観測データについてレベル2プロダクトの処理・配布を開始します。過去の全観測データについてもJAXAにおいてレベル1再処理結果が提供され次第、レベル2プロダクトの再処理に着手します。

TANSO-FTSの観測データは、SWIR(Short Wavelength InfraRed、FTSのバンド1、2、3の総称)とTIR(Thermal InfraRed、FTSのバンド4の別称)の2種に分かれています。上記レベル2プロダクトは実はSWIR観測データであり、TIR観測データのレベル2プロダクト処理は未着手でしたが、この8月にJAXAから処理コードが提供されましたので、TIR関係プロダクトの作成と配布に向けた準備に着手しています。

さて、TANSO-CAIについても、最近のトピックスをご紹介します。TANSO-CAIは4バンドを有する画像センサで、FTSの視野を含む広い範囲での雲の有無の判定に利用しています。TANSO-CAIのバンド1から3は、分解能500mで観測幅1000km、バンド4が分解能1500mで観測幅750kmです。GOSATの回帰日数(同じ場所を観測する間隔)は3日ですので、同一場所を3日ごとにTANSO-CAI画像で撮影できます。

この春には北京のPM2.5による大気汚染や黄砂について報道されました。TANSO-CAIのバンド2(波長674nm):赤、バンド3(波長870nm):緑、バンド1(波長380nm):青でのカラー合成画像表示により、2013年3月に中国で発生した黄砂が北京周辺に分布している様子や黄砂が朝鮮半島南を通過し、西日本に到達した様子を可視化しました。(http://www.gosat.nies.go.jp/jp/related/2013/201303.htm

photo. 北京及び渤海湾周辺

図1TANSO-CAI画像の北京及び渤海湾周辺拡大図(2013/3/9)

また、6月下旬にシンガポールでの煙被害の状況がテレビ放映された直後には、TANSO-CAI画像でもインドネシアの森林火災や焼き畑による煙がシンガポール周辺に流れ込んでいる状況を確認できました。(http://www.gosat.nies.go.jp/jp/related/2013/201306.htm

photo. シンガポール付近

図2TANSO-CAI画像のシンガポール付近拡大図(2013/6/20)

7月19日には、国際宇宙ステーション(ISS)の宇宙飛行士によって撮影され、欧州宇宙機関(ESA)のspace in imagesに「Like a sweeping cloud, a sand storm reaches across the Red Sea」と題されて公開された画像で、紅海を渡ってサウジアラビア西岸にまで達した砂嵐の様子が紹介されました。GOSATオフィスで早速7月19日のTANSO-CAI画像を検索したところ、同日10:30(UT)の画像に砂嵐の様子を確認できました。ISSから撮影した画像(左)では海上に赤茶色の砂が写っています。TANSO-CAIブラウズ画像でも紅海の西側海岸線付近の地表と同じ黄色のダストが海上に見えます。(右)

photo. 砂嵐

図3紅海を渡りサウジアラビア西岸に達した砂嵐
[左] ISSから撮影した画像(出典:space in images, ESA) [右] TANSO-CAI画像(2013/7/19 10:30)

GOSATプロダクト提供サイト(GOSAT User Interface Gateway: GUIG)において簡単なユーザ登録操作をすることにより、どなたでも公開されているプロダクトを入手できます。(http://data.gosat.nies.go.jp/

また、GUIGのギャラリーには、TANSO-FTSのSWIR観測データから算出された二酸化炭素とメタンのカラム量レベル2プロダクトを月単位で平均した結果の図、大気輸送モデルを用いて推定した二酸化炭素の全球三次元濃度分布図(レベル4B)のアニメーション画像などのコンテンツを掲載しています。是非、GOSATプロジェクトのウェブサイト(http://www.gosat.nies.go.jp/)とGOSAT プロダクト提供サイトをご覧のうえ、それらに関するご意見をお寄せください(gosat-prj1@nies.go.jp)。

ご意見、ご感想をお待ちしています。メール、またはFAXでお送りください。

地球環境研究センター ニュース編集局
www-cger(at)nies(dot)go(dot)jp
FAX: 029-858-2645

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