第26回AIM国際ワークショップの開催 -初のオンライン会合の試み
1. はじめに
2020年9月3-4日に、国立環境研究所において第26回AIM国際ワークショップを開催した。AIMとは、気候変動緩和策や影響、適応策を評価するために国立環境研究所が中心となって開発してきたAsia-Pacific Integrated Model(アジア太平洋統合モデル)の略称である。1995年の第1回国際ワークショップから、毎年、アジアの研究者を招へいして行っている。これまでの内容については、国立環境研究所が発行している『環境儀No.74』(http://www.nies.go.jp/kanko/kankyogi/74/02-03.html)やAIMのホームページ(https://www-iam.nies.go.jp/aim/index_j.html)を参照していただきたい。
2. 新型コロナウィルス感染症の影響
2020年は、新型コロナウィルス感染症により、様々な活動が大きな影響を受けている。11月に開催予定であったCOP26も翌年に延期となった。筆者も参加予定であったIPCC第6次評価報告書第3作業部会の第3回執筆者会合は、オンライン開催に変更となった。IPCCの執筆者会合がオンラインで開催されるのは初めてである。会合の期間は1日延長されたが、それでも世界中の研究者が同じ時間を共有できるのは数時間ということで、各章ごとに多くの個別の会合が開催された。また、2次ドラフトの締切などスケジュールも変更になっている。
ここ数年は、ワークショップ開催の日程調整に苦労をしてきた。今回も、2019年11月に行った第25回AIM国際ワークショップの終了後、主な参加者の2020年の日程を確認し、ワークショップ開催日を2020年1月には9月3~4日と決定した。しかしながら、新型コロナウィルス感染症による影響が世界的に拡大したために、規模を縮小しての通常開催、オンライン開催、中止の3つの選択肢を3月末の時点で設定し、7月に最終的に判断するとして準備を進めることにした。結局状況の改善が見込めず、5月には年内の終息は困難と判断し、オンライン開催を決定した。
3. ワークショップのスケジュール
ワークショップの内容は、日本との時差を考慮し、日本時間で13時からの開始、1日にセッションは2つ、各セッションの間は1時間の休憩をはさむ(国によっては昼休みとなるため)、という日程にして、一日の長さを通常の半分とした。一方、オンライン開催にしたことから、従来は招へいできなかった各国の若手研究者や学生も参加できるようになった。そこで、ポスターセッションを通常通り設定した。また、9月4日は、AIMの創始者の1人である故森田恒幸博士の命日(2013年9月4日逝去)である。そこで、森田先生の長女の森田香菜子 森林総合研究所 主任研究員に近況報告をしていただくことにした。
オンライン開催で最も心配したのは回線トラブルである。このため、今回は事前にプレゼンを録画して頂き、それを放映する方法をとった。録画が間に合わない場合や、作成した録画ファイルに問題がある場合は、ライブ発表を行ってもらうことにした。会場の地球温暖化研究棟交流会議室では、音声や通信のチェック、密にならないような座席の配置などに留意して準備を進めた。また、毎年撮影している集合写真も、Zoomの画面を利用して作成することにした。
セッション1はオープニングセッションで、国立環境研究所の亀山康子社会環境システム研究センター長の冒頭挨拶のあと、筆者が前回ワークショップからの進展について報告を行った。また、アーメダバード大学特別教授でIPCC第3作業部会共同議長のShukla教授と、米国パシフィックノースウェスト国立研究所(PNNL)のEdmonds博士による基調講演を行い、ポスターセッション参加者のショートスピーチ映像(45秒)を放映した。
セッション2では、アジアの緩和策について、各国からのモデル開発、シナリオ開発の進捗や取り組み状況について報告を受けた。セッション3は、気候変動影響、適応に関するセッションである。最後のセッション4では、アジアにおける研究協力について議論を行った。特に、アジア各国では、自国が決定する貢献(NDC)の見直しや長期戦略の策定などに向けて様々な取り組みが行われており、AIMチームに対して支援が求められている。こうした要望に応えるとともに、研究としても持続的に取り組むためのテーマ設定や方法について、議論を行った。
4. オンライン開催を終えて
大きなトラブルもなく、無事に第26回AIM国際ワークショップを閉幕することができた。これは、録画ファイルの作成マニュアルを準備し、原稿を集めてくれたDiego Silva Herran主任研究員、ポスター発表の作業を担当してくれた高倉潤也主任研究員、そのほか、社会環境システム研究センターのアシスタントスタッフや企画部広報室の方々のご尽力のおかげである。この場を借りて御礼申し上げます。
接続数は、最終的にスタッフを含めて130名以上となった。従来の方法では招へいできない方も参加できるというのはオンライン開催の大きな長所である。一方で、これまでは、コーヒーブレークやレセプションで、担当者と対面で話し合うことにより、今後の方針などが決まっていくことがあったが、そうした機会が失われてしまった。こうした点はオンライン会合の短所である。
第27回AIM国際ワークショップの開催準備はこれからであるが、現状でも通常開催に戻れるかは不透明である。しかしながら、今回の経験を活かして、オンライン開催の長所である、多くの人に幅広く参加してもらえるワークショップの可能性を追求していきたい。