2016年10月号 [Vol.27 No.7] 通巻第310号 201610_310008
酒井広平講師による「検定試験問題を解いてみよう」シリーズ 32 CO2削減技術 —3R・低炭素社会検定より—
3R・低炭素社会検定は、持続可能な社会の実現のため、3Rや低炭素社会に関する知識を活かして、実践行動を行う人を育てることを目的としています。【3R・低炭素社会検定 低炭素社会分野試験問題解説集「はしがき」より】
検定試験問題から出題します。
問95次世代自動車に関して、最も不適切なものはどれか?
中級レベル
正答率 76%
- ①電気自動車の走行時のCO2排出量はゼロである
- ②電気自動車はモーターで走行し、電気の9割を走行に使用できるが、減速時のエネルギーを使うことはできない
- ③燃料電池自動車は水素と酸素から電気を作り、走行する自動車である
- ④非常時には、電気自動車や燃料電池自動車から電気を取り出して使うことが想定されている
- ヒント
- 電気自動車はブレーキをかけた際のエネルギーを電力として回収することができます。
- 答えと解説
-
答え: ②
電気自動車は、電気を蓄電池に蓄え、その電気でモーターを回して動きます。そのため、走行時のCO2排出量はゼロです(電気を作る際のCO2をカウントしない場合)。電気の9割を走行に使用でき、ブレーキをかけた際の制動時のエネルギーは動力を得たときとは逆にモーターを発電機として電気エネルギーに変換し、蓄電池に蓄える(回生機能)ことができます(したがって ② が不適切)。
蓄電池は、内燃機関に比べ、貯めることができるエネルギー密度が低く、そのため、電気自動車の走行距離は、ガソリン車よりも短めでした。しかし近年、エネルギー密度の高いリチウムイオンバッテリーを採用する車種が現れ、改善されてきました。
燃料電池自動車は水素と酸素から電気を作り、モーターを回して走行する自動車です。
また、電気自動車や燃料電池自動車は大容量の蓄電池を搭載していることから、東日本大震災以降、非常用電源としての側面も重要視されています。
- *正答率は第7回3R・低炭素社会検定受験者のものです
問96燃料電池の説明として、最も適切なものはどれか?
中級レベル
正答率 65%
- ①燃料電池は二次電池のうちのひとつであり、繰り返し充放電することができる
- ②燃料電池は水素と酸素の反応のため、反応後の生成物質は水(H2O)だけである
- ③燃料電池は現段階で実用化されている技術ではない
- ④燃料電池の技術は自動車で使われることはない
- ヒント
- 燃料電池は家庭用や産業用、自動車などで既に実用化されており、水素と酸素の反応により電気を発生する装置です。なお、二次電池とは異なります。
- 答えと解説
-
答え: ②
燃料電池は、水素を燃料として、空気中の酸素と反応させることで電気を発生する発電装置です。したがって、水素と酸素の反応のため、反応後の生成物質は水だけとなります(2H2 + O2 → 2H2O)。既に実用化されている技術であり、例えば、近年よく耳にする「エネファーム」とは家庭用燃料電池コジェネレーションシステムの商標です。また、自動車でも使われている技術で、既に実用化されています。なお、二次電池(蓄電池)の一種ではありません。
燃料となる水素は、風力発電などの電気を使って水の電気分解で取り出したり、天然ガス、灯油、メタノールなどを改質することで取り出します。家庭用・産業用の燃料電池は、排熱も活用できるためコジェネレーションとなります。
- *正答率は第7回3R・低炭素社会検定受験者のものです
問97CO2回収貯留技術(CCS)に関する記述として、最も不適切なものはどれか?
中級レベル
正答率 61%
- ①CCSとは、火力発電などで発生するCO2を分離・回収して地中や海洋に貯留・隔離する技術である
- ②CCSをバイオマス発電に導入することで、正味の排出量をマイナスにする(大気中のCO2を減らす)効果が期待されている
- ③CCSを導入することによりエネルギー効率が高まり、エネルギー消費量は減少する
- ④日本ではCCSの実証実験が行われている
- ヒント
- CCSはCO2を分離・回収して貯留・隔離する技術で、日本では現在実証実験が行われています。CCSの導入により、分離回収・貯留に使用されるエネルギー分は増加します。
- 答えと解説
-
答え: ③
CO2回収貯留(Carbon capture and storage、CCS)は、火力発電所や製鉄所など大規模排出源から排出されるCO2を分離・回収して地下や海底下に貯留する技術です。CCSをバイオマス発電に導入することで、正味の排出量をマイナスにする(大気中のCO2を減らす)効果が期待されています。
2003〜2005年に新潟県長岡市で地中の帯水層に貯留する実証試験が行われ、その後はモニタリングが続けられています。また、2016年以降に苫小牧沖(海底下貯留)で年間10万トン以上のCO2を圧入する大規模実証実験が計画されています。
なお、CCSはエネルギー効率を高めたりエネルギー消費量を減少させるものではありません。逆にCO2を分離・回収する際に大きなエネルギーを必要とするため、このエネルギー消費削減も重要な課題となります。
- *正答率は第7回3R・低炭素社会検定受験者のものです
- 出典:3R・低炭素社会検定(http://www.3r-teitanso.jp)低炭素社会分野試験問題解説集
CO2削減技術については、「温室効果ガス、どうやって減らしていきますか? 夏の大公開「低炭素社会を目指す」パネルディスカッション実施報告」でも紹介しています。