そして、研究現場である隠岐島を離れ、研究所に戻ってまいります。
さて、戻ってきましたが、いったいその試料庫とやらはどこにあるんですか?
大山記念ホールの下に、試料庫というものがあります。これは、環境試料バンキングという考えの元、環境の過去の試料を取っておけるように考えた−20°Cの大きな冷蔵施設です。その中に、ステンレスの箱を作って、保管してあります。ちょっと行ってみましょう。
寒ーいですね。−20°Cって大丈夫なんですか?
それほど大丈夫じゃありません。防寒着を着ないと、耐えられませんね。ここです。この中に毎月送られてくるフィルターを保存しています。有機物など、壊れやすいものがあるため、低温で保存します。保存実験というものを、過去にやっていて、ベンツピレンという発がん性があると言われているものが、フィルター上で保存するのかということを調べましたら、−20°Cで10年以上保存が確認できましたので、−20°Cで冷やしています。
これは、大変ですね。これらはいつか分析するんですね。
そうです。時期が来ると分析するつもりです。それから、タイムカプセル棟に、この半分ぐらいが、−50°Cぐらいで保管されているんですが、そこは寒すぎて、とりあえず分析するまでは氷漬けにしておくつもりです。
息の長い、サンプリングですね。非常に貴重なサンプルですね。
そうです。かなり前までは、環境省でも同様のサンプリングを行っていたのですが、現在ではもうやっていませんので、これだけ長いサンプルの時系列、つまり33年分を持っているのは、非常にまれだと思います。今後なるべく早く分析を進めるつもりですが、ぜひ若い方の力をお借りして、継続しつつ解析を行いたいと思っています。アジア、特に中国の発展は北京オリンピックころから、目覚ましいのですが、環境への配慮も徐々に進んできています。そういった、過去の記録が個々の試料庫に眠っているはずですので、これを今後掘り起こしていこうと考えています。
そうですか、向井さんが研究所に入った当時に始めたものが、ついにここに完成するのも間近ですかね?
そうですね。ぜひそのようにして、お世話になった方々への恩返しがしたいと思っています。