IGES/NIES による、グローバルストックテイクに関する勉強会・意見交換会
下記のプログラムから各講演の講演資料をダウンロードできます。
GCPつくば国際オフィスは、地球環境戦略研究機関(IGES)から専門家をお招きして、国立環境研究所(NIES)とIGESの有志によるグローバルストックテイク(GST)に関するセミナーをオンラインで開催しました。
「グローバルストックテイク(GST)」とは、パリ協定の長期目標達成に向けて、GHG排出削減をはじめとする世界全体の気候変動対策の進捗を5年ごとに評価する仕組みで、パリ協定第14条に規定されています。第1回GSTは2023年に評価結果が取りまとめられる予定で、各国政府はそれを基にNDC(国が決定する貢献)をより野心的に強化することが求められています。GSTは国際的にも初めての試みなので、その重要性にもかかわらず、認知度もまだ低く、参加者自身も手探りで進めている面もあります。
本セミナーでは、GSTとは具体的に何かを理解するために、IGESの専門家からGSTの仕組みや動向についてご紹介いただくとともに、NIESからも第1回GSTに提出したGHG監視等への取り組みについて紹介しました。後半では、立場や専門分野の異なる参加者同士で自由に意見交換を行うことで、GSTおよびその周辺の動きについて理解を深め、今後の活動の方向性や相互協力の可能性を確認することができました。GCPつくば国際オフィスでは今後もGSTにかかわる活動をサポートしていく予定です。
- 日時:2022年8月5日(金)15:00-16:00
- 開催形態:オンライン
- 主催:グローバル・カーボン・プロジェクト(GCP)つくば国際オフィス
プログラム
パリ協定・第1回グローバル・ストックテイク(GST)の展望:GSTは今後各国の目標の更新・強化に影響を及ぼせるか?
講演者:
梅宮知佐(IGES 気候変動とエネルギー/生物多様性と森林領域 主任研究員)
津久井あきび(IGES 気候変動とエネルギー領域 主任研究員)
要旨:
GSTの目的は、世界全体の進捗を5年ごとにストックテイクすることによって、次に各国が定める目標(NDC)の更新・強化に必要な情報を提供することである。本発表では、最新のGSTに関する国際動向を踏まえ、今後GSTがこの目的を達成するにはどうすれば良いか?について議論を深めたい。
IGESでは、UNFCCCの下、第1回GSTの国際プロセスに継続して参画すると共に、2022年からは海外機関と連携して東南アジア地域の非政府アクターのGSTへの参画を促す地域ハブ「the Independent Global Stocktake (iGST) Southeast Asia Hub」を運営する。
統合的研究による温室効果ガス収支の監視
講演者:
伊藤昭彦(NIES 地球システム領域 物質循環モデリング・解析研究室長)
温室効果ガス(GHG)濃度の上昇は、ここ数十年における地球の表面気温(SAT)の加速度的な上昇の要因となっています。大気中のGHGの蓄積を削減するために、国が決定する貢献(Nationally determined Contribution (NDC)) がUNFCCCに提出されるなど、さまざまな取り組みが行われています。大気中のGHG濃度を観測ネットワークや衛星リモートセンシングにより観測することで、化学輸送モデルを用いて(トップダウンアプローチで)国や地域の排出量を推定することができます。トップダウンの排出量推定は、初期値として利用するインベントリや生物地球化学モデル(ボトムアップアプローチ)に依存します。本講演では、二酸化炭素(CO2)、メタン(CH4)、一酸化二窒素(N2O)の地域別排出量の動向と、NDCやパリ協定で設定されたSATの上昇を2℃以内に抑えるための世界の排出削減目標の達成への影響について解説します。
要旨:
グローバルストックテイクでは最良の科学に基づいて世界の温室効果ガス排出量を評価することが求められる。本発表では、観測とモデル解析に基づく統合的手法による温室効果ガス収支の監視について、世界の動向とともに、環境研究総合推進費SII-8を中心とする日本の研究状況について紹介する。2023年の第1回グローバルストックテイクへの情報提供について説明し、今後の技術的対話や第2回への取り組みについて議論したい。
パネリスト:
- [IGES]
-
梅宮知佐(気候変動とエネルギー/生物多様性と森林領域 主任研究員)
津久井あきび(気候変動とエネルギー領域 主任研究員)
田辺清人(IPCC インベントリータスクフォース(TFI)共同議長 / IGES 上席研究員)
田村堅太郎(気候変動とエネルギー領域 プログラムダイレクター/上席研究員)
- [NIES]
-
三枝信子(地球システム領域長)
伊藤昭彦(地球システム領域 物質循環モデリング・解析研究室長)
増井利彦(社会システム領域長)
亀山康子(社会システム領域 上級主席研究員)
吉川圭子(気候変動適応センター 副センター長)
増冨祐司(気候変動適応センター アジア太平洋気候変動適応研究室長)
モデレーター:
- 白井知子(NIES 地球環境データ統合解析推進室長・GCPつくば国際オフィス代表)
講演資料のライセンスについて
本講演資料の一部はクリエイティブコモンズ表示4.0国際(CC BY 4.0ライセンス)を付与して公開しています。
引用される際は以下の通りクレジット表示をお願いします。
講演者名(2021)、講演タイトル、講演資料のURL.
改変された場合、
講演者名(2021)、講演タイトル、講演資料のURL (を元に改変).
問合せ先
国立研究開発法人国立環境研究所
地球システム領域 地球環境研究センター
GCPつくば国際オフィス
Email: gcp{at}nies.go.jp