Global Carbon Project Tsukuba International Office

オンラインイベント「日本の脱炭素化を考えるための世界の科学者からの、気候変動10の最新メッセージ」(2021年6月9日)

オンラインイベントのQ&A(参加者からの質問への回答)

Q1本日の録画は後日共有されますでしょうか?
以下のページで公開中です。
https://www.youtube.com/watch?v=y2aLWP87xVQ
Q2本日の講演資料は、共有いただけますでしょうか?
以下のページで公開中です。
https://www.cger.nies.go.jp/gcp/news/20210609.html
Q3私たちが使えるデータやグラフなど、提供していただける資料があると嬉しいです。
〇「気候変動について今伝えたい、10の重要なメッセージ」(フューチャー・アース)
原文:https://futureearth.org/publications/science-insights/
和訳:https://futureearth.org/wp-content/uploads/2021/05/10-New-Insights-in-Climate-Science-2020-JAPANESE-Ver2.pdf
紹介ビデオ(日本語):https://www.youtube.com/watch?v=lRb-n3bmBUA
〇「世界のCO2収支2020年版」(グローバル・カーボン・プロジェクト(GCP))
https://www.globalcarbonproject.org/carbonbudget/20/infographics.htm
Q4ソースとデータセットがあれば教えて下さい
Q3の回答をご参照下さい。
Q5GCPのグラフなどは、勉強会などで、自由に使用できるものですか?日本語版もありますか?ない場合は、自分で翻訳をつけて使用することは可能ですか?
データにより利用規約が多少異なりますが、引用元を示して頂ければご自由にお使い頂けるものが多いです。データ提供サイトに利用条件を示してあるのでご確認頂けますと幸いです(わからない場合は gcp@nies.go.jp までお問合せ下さい)。
Q6以下の文章以下の記述の根拠文献おしえていただけますか12-13ページ The amount of CO2 absorbed by the land has almost since 1960doubled since 1960, mainl because of a phenomenon known as CO2 fertilization.
例えば、下記の文献1)は1960年から2010年の間に地球上の年間炭素吸収量(海・陸含む)は倍増したと述べており、文献 2)は陸の吸収量増加の主な原因が施肥効果(fertilization)および森林の再生(regrowth)にあると報告しています。
1) Ballantyne et al. (2012) Nature, https://doi.org/10.1038/nature11299
2) Kondo et al. (2018) GRL, https://doi.org/10.1029/2018GL077633
Q7人工衛星いぶき (GOSAT) の二酸化炭素濃度データは実用に供されているでしょうか?
データはhttps://data2.gosat.nies.go.jp/index_ja.htmlから公開され、GOSATに関する研究論文も400編以上出版されています。さらにIPCCのインベントリ作成に関するガイドラインにもGOSATに関する記述が追加され(2019年)、まさにこれから実利用が加速することが期待されます。またインドは世界に先駆けて国連への報告でGOSATデータを使いました(https://unfccc.int/sites/default/files/resource/INDIA%20SECOND%20BUR%20High%20Res.pdf)。
Q8白井さんご紹介のスライド中のGHG排出・吸収の収支の年推移について、陸域の吸収が経年でかなり増減してギザギザの軌跡を描いている要因は、ある程度説明等が可能なのでしょうか。
〇大規模森林火災(特に熱帯域)、熱帯・亜熱帯での高温・旱ばつによる光合成低下や呼吸の増加、等のあった年は陸域の正味吸収が減少
〇気候が安定して世界の森林等での吸収が安定して継続した期間は陸域のCO2吸収がある程度大きい状態で継続するといった要因があります。
Q9白井さんのスライドのGHG吸収の海域部分は、気候変動が進むと減少していくものでしょうか。
今は大気中のCO2濃度が海洋表層のCO2分圧に比べて上昇しているため、海洋が大気から吸収するCO2は(長期的に見ると)過去に比べて増加しています。もし将来、大気中CO2濃度が安定化に向かいますと吸収量は徐々に弱まってくると予想されます。また、水温が高くなるとCO2の水に対する溶解度が低下しますので、温暖化により海洋表層の水温が上昇すれば、CO2は水に溶けにくく(吸収されにくく)なります。このほか、温暖化による海水中の生物活動(プランクトン等)による吸収(光合成)や、温暖化による海洋循環の変化が海洋のCO2吸収に影響を与えることも予想されますが、このようなプロセスについてはまだ数多くの研究が行われているところです。
Q102050年カーボンニュートラルについて、地方自治体の役割が大きいようです。その割に再エネ開発においてのゾーニングや、事前の開発行為規制に関する自治体の権限が弱いように思えるのですが、環境省さんや国環研さんはどのようにお考えでしょうか?
環境省としましては、自治体・地域における脱炭素の取り組みを促進するべく、改正温対法や地域脱炭素ロードマップを通じた取組みを行っていく予定です。
Q11地域脱炭素ロードマップの内容をあらゆる地域に実装するには、地方自治体、市区町村の負担が非常に重たいもののように思います。補助金などの予算措置以上の支援が求められると認識していますが、どのようなメニューをお考えでしょうか。
現在、政府内で検討中です。何らかお示しできるよう、検討を加速化していきたいと考えております。
Q12日本の環境ビジョンを聞きたい
中長期の計画・戦略である温対計画・長期戦略について、鋭意見直しを行っております。2050年カーボンニュートラルの達成に向けて取り組みを進めてまいります。
Q13今から11年前に民主党時代にもグリーン成長戦略が物の見事に経済循環もグリーン成長も進行しませんでした結果……中国の一人勝ちです。2050年に向けて国内サプライヤーが増えても海外比較すれば予算規模が2兆円レベルでは賦課金も国民一人あたりが雇用を生み出すシナリオは不確実ではないでしょうか?SUCCも難しいと聴いています。
政府全体で、脱炭素を通じた成長の在り方について引き続き議論を深めてまいります。
Q14社会的側面については、どの程度検討の中に組み込まれていますか。雇用の促進の中に、移行における労働者の再訓練や再教育などを含んでいますか。
長期戦略にて、公正な移行の項でも記載しているとおり、含まれうると考えております。今後の議論の中で検討を深めてまいります。
Q15日本政府からこの分野への研究資金補助は、増加傾向でしょうか?
脱炭素技術開発の研究資金は増えていますが、地球環境の現状を把握したり、気候変化の影響を長期的にモニタリングするような研究への資金補助は減少しています。
Q16経産省の水素・アンモニア戦略は、東南アジア・豪州でのCCSに安易に頼り過ぎているのように見えます。東南アジア・豪州でのCCS、特に貯留について、環境省さん、国環研さんはどのような見解をお持ちでしょうか?
環境省としては、なるだけCCSに頼らなくて済むように、排出削減をまずは進めていきたいと考えております。
Q17地球規模の環境問題に対処するために欧米や日本が取り組むことはもちろん必要ですが、中国やインドなどにも働きかける必要があると思います。(YouTubeでの質問)
※パネルディスカッション中に回答しました。
Q18CO2の排出量削減は国別ではなく、世界全体での強調が重要だと聞いたことがありますが、実際、削減の協力に参加してくれる国と参加してくれない国の間でどのような議論がされているのですか。
毎年、COPにおいてパリ協定を実効的に進める枠組みやルールの在り方について、議論が行われております。
Q19(和田氏が)「世界で競争が始まっている」という言葉をお使いでしたが、「競争」のニュアンスというか意味はどういう感じでしょうか?気候変動に対して世界が協働している、ではなく、なんとなく脱炭素から得られる利益を各国が我先に先取りしようとしている様に聞こえましたが、両方の意味があるのかもしれませんね。ご教示頂けると幸いです。
※パネルディスカッション中に回答しました。
Q20原発が安くカーボンニュートラルという政府の見解は、極めて疑わしいと思われます。まず価格計算は、発電時だけに限っていないでしょうか? それでも再生可能エネルギーに負けてきているはずです。原発は、平常時でも発電時のエネルギーを多く必要とし、送電ロスも膨大で、核廃棄物の最終処分には多大な費用やエネルギー(+CO2排出)を伴います。原子燃料リサイクルに伴う膨大な費用やエネルギーも膨大であると推察されます。
さらに我が国では、悲惨な事故が起きました。廃炉作業はほぼ半永久的に続き、その間膨大な福島原発では現在も日々数千人もの作業員たちが,過酷な環境で危険と隣り合わせに廃炉作業に立ち向かっています。デブリ調査は,高い放射線量に阻まれ全体像の把握も覚束ない状態です。事故処理費用は40年で35〜81兆円と試算されます。毎日約170トン増え続ける汚染水は行き場がなく,地元漁民の強い反発にも拘らず,海洋放出が決ま李ました。膨大な放射性廃棄物処理も,福島県では大熊町が苦渋の決断で中間処分地を受け入れ,毎日平均2400台の車両が多くのCO2を排出しながら除去土壌等を運送しています。近隣他県では中間処分地も決まらず,最終処分地は議論もはじまっていません。こうした膨大な作業が将来にわたり続く上で、どれほどCO2を出しているか計算されておられますでしょうか。
また、メンタルヘルスとありましたが、現在でも多くの避難者がおられるのに支援を断ち切られています。深刻なメンタルヘルスの問題を抱えている人も多くおられます。
原発をオプションで考えるなら、こうした全体的な費用や社会的影響、CO2排出もきちんと検証されなければならないのではないでしょうか。
発電コストについては、資源エネルギー庁の審議会である発電コスト検証WGの中で見解が示されると承知しております。ご質問のCO2の計算は環境省では特段行っておりません。
Q21再エネを可能な限り拡大することに対しては誰も異論を唱えないと思いますが、政策ペーパーのあちこちに「原発の利用(再稼働、50年を超える運転など)」が仕込まれています。パブコメではほぼ全員原子力にはNOです。原子力をどうするのかについては、政府から国民に問う必要があり、原発の利用を前提としないことを民意が求めるなら、考え直す必要があると思いますが、いかがでしょうか?
※パネルディスカッション中に回答しました。
Q22気候変動の視点からは原子力発電は有効かもしれないが、地球環境を考えると最終的にはゼロにすべきと考えるが皆様のご意見を伺いたい。
Q23(パネルディスカッション)の回答をご参照下さい。
Q23脱炭素化には有効である原子力の利用についてどのようなご意見をお持ちですか?
Q23(パネルディスカッション)の回答をご参照下さい。
Q24ゼロカーボン実現のためには、原発は必須なのでしょうか?
Q23(パネルディスカッション)の回答をご参照下さい。
Q2510の提言の一つに都市の電化がありましたが、熱を電気に変えるとエネルギー効率が大幅に落ちます。また現在我が国で主流のメガソーラーは、地方の生態系を破壊し大きな問題になっています。電化にするということは、安易な原子力回帰も招かないでしょうか。
1) 再エネの前に、省エネ(建物の断熱遮熱など)、費用対効果の高い施策の実現に、まず一番力を入れるべきでないでしょうか。
2) また、街中の緑化を図るなど、Nature-based solutionsを積極的に入れることで、ヒートアイランド現象の緩和、エネルギー使用の削減なども図れるなど、相乗効果のある施策は多々ありますが、現実には空き地や空き家屋はコンクリート貼りの駐車場に変わり、里山は、簡単に切り崩され住宅地や駐車場、メガソーラーに変わっています。こうしたことに気づいている地方のローカル団体や市民等の声は、政策形成に反映される場所もありません。こうした声を吸い上げ、イノベイティブな政策に結びつけるために、市民の声/ローカル知をどのように吸い上げることが可能と思われますか?
3) 電化の前に、熱エネルギーはそのまま利用することも検討すべきではないでしょうか。例えば太陽光だけでなく、太陽熱利用・発電のコジェネ、焼却熱や地中熱の活用、農業廃棄物や木質バイオマスの利用などが考えられます。運輸部門での利用もそうですが、欧米、中国における再生可能エネルギーの熱・運輸部門での利用は、本邦では大きく立ち遅れています。ローカル知の活用が必要です。
※パネルディスカッション中に回答しました。
Q26政府は木質バイオマスをカーボンニュートラルとしてバイオマス発電への補助金や、石炭への混焼も認めていますが、実際には燃焼によるGHG排出量が石炭より多いことがわかっています。2050年までのカーボンニュートラル達成のためには、吸収源でもある森林を伐採して燃やすのは合理的ではないと考えますが、いかがでしょうか。
バイオマスからのCO2排出は、2006年IPCCガイドラインに従い、我が国の温室効果ガス排出・吸収目録(インベントリ)において総排出量に含めていません。2050年カーボンニュートラルに向けては、①必要な間伐を着実に実施、かつ利用期を迎えた人工林を「伐って、使って、植える」という適切な循環利用により、成長が旺盛な若い木を増やし森林吸収量の向上を図るとともに、②木材の製品利用による炭素の貯蔵や、エネルギー利用による排出削減を進めることにより、森林分野での温暖化対策を進めてまいります。
Q27和田さんは、(CO2排出量が)現在すでに減っていると言われましたが、丹羽さんは減っていないと言っておられたように思います。何が違うのでしょうか?
減少傾向であるのは日本の排出量で、世界全体の排出量はいまだ増加傾向にあります。ただし、2019年はその増加が鈍り、2020年は新型コロナ感染症の世界的大流行によって減少したと言われています。このように排出量の増加速度の増減はあるものの、全体の排出量は海洋や陸域生態系の吸収量を上回っていますので、大気中の濃度は依然として増加し続けています。
Q28丹羽様のご説明に関連してご質問です。
シミュレーションの結果のみを見ると気温上昇やGHGの大気中への蓄積は極めて信用度が高いと思うのですが、シミュレーションの過程や手法にはまだ改善の余地があるということでしょうか。
IPCCのAR5や1.5℃特別報告書等でもシミュレーションが多くの主張の根拠になっていると思いますが、未だに懐疑論を主張する方がいる中で説明できるように理解したく、ご教示いただけますと幸いです。
※パネルディスカッション中に回答しました。
Q29観測地点の数を増やすことは難しいのでしょうか?
気象要素(温度や風向、風速など)と比べると、温室効果ガスの濃度を測ることは容易ではありません。CO2であれば、年間2−3ppm程度で増加していますが、ppmは0.0001%に相当しますので、非常に小さな差を検知する必要があります。また、標準ガスと呼ばれる濃度測定に必要な「物差し」を各機関で維持する必要があり、そのための技術も必要となってくるのが温室効果ガス観測の特徴です。一方、衛星観測は地球全体を観測することが可能ですが、雲がある場所ではデータが取れませんし、観測精度も現地観測と比較すると落ちてしまいますので、衛星観測と現地観測をうまく組み合わせて、効率的に観測データを増やす努力が必要となっています。
Q30水蒸気量の地域分布や、雲の高さ方向の分布についても、観測網をもっと充実してほしいと思っております。そういう観測や、モデル計算との「診断」、という種類の研究活動の動きはありますか?
自問自答ですが、多分、まだそこまでは計算できてないと思いますので、診断は無理だと理解してます。しかし、観測は重要だと思います。今後、水蒸気や雲データ測定を充実する方向はありますか?
水蒸気量や雲の観測も防災や気象・気候モデルの検証にとって重要で、実際、様々な研究活動や観測の展開がされています。
Q31このまま温暖化が進行していくと永久凍土はいつ溶ける想定なのでしょうか
永久凍土に関しては、2019年に発表されたIPCC「海洋・雪氷圏特別報告書」によれば(※)、
「2007年から2016年の間に、北極域及び南極域の連続帯永久凍土の温度は、それぞれ0.39±0.15ºC及び0.37±0.10ºC上昇した。」
とのことなので、温度の上がったところから少しずつ融けていると思われますが、 「北半球の永久凍土地域が、現在融解によって追加的なメタン及びCO2を正味で放出していることについては、証拠が中程度で見解一致度が低い。」とのことなので、どのくらいのメタン及びCO2が現在正味で放出されているか、今後どのくらい放出されると予想されるかについては、いろいろな研究があるけれども正確にはまだよくわからない、ということのようです。
※環境省(2020)IPCC 「海洋・雪氷圏特別報告書」の概要(和文)
http://www.env.go.jp/earth/ipcc/special_reports/srocc_overview.pdf
Q32永久凍土などからのメタン放出量は、この収支の外輪の数値でしょうか?今はどのくらいと見積もられているのでしょうか?
2020年のGCP-CH4の論文では、2000-2009年の間で年間平均0-1 Tg(テラ(10の12乗)グラム)と見積もられていますが、最近の期間については記載されていません。一方、大気濃度観測からは、永久凍土と限定して排出量を推定することは不可能ですが、北極地域全体の排出量は近年まで(2017年まで)大きく増加されていないと推定されています。
Q33新型コロナウィルスの二酸化炭素削減に与える影響は?
※丹羽氏の講演をご参照ください。
Q34コロナで排出を7%減らしたのに、全球のCO2濃度が、自然変動のフラクチュエーションの中に収まってしまう、というのが不思議です。海洋での吸収が減ったから、と理解して良いですか?
化石燃料起源の排出量は年間でおよそ10Tg(炭素換算)ですが、陸域や海洋の吸収量は合計で年間およそ6 Tgになります。また、その吸収量は年々で2 Tg程度の変動をしますので、化石燃料起源の排出量が7%減少しても、自然変動の中に収まってしまうことになります。
Q35人工衛星「いぶき」の全⼤気中の⽉別⼆酸化炭素濃度の観測データも、2020年はまるで何事もなかったように上昇トレンドが継続しているように見えます。
「10 New Insights 2020」によると、2020年前半のCO2放出は、2019年に比べて約9%低下、行動規制がピークの時には最大17%減少したとのことです。しかし、1年間を通してみると、地球全体の大気の平均的なCO2濃度を(パリ協定の長期目標の達成に向けて期待を持てるほどに)下げる状況ではありませんでした。
(なお、強いロックダウンが行われた地域とその周辺に限って言えば、大気中の各種物質の時間変化に検出可能な変化はみられました。)
Q36大気中のCO2濃度を低下させ、気候を安定化させるのが脱炭素の大きな目的だと思います。しかし、安定化させるのは可能なのでしょうか。例えば、増加中のCO2は脱炭素後、減らすことができたとしても、一定の濃度で安定するものなのでしょうか。自然の炭素循環も考慮していろいろな方策を考えないといけないと思いますが、それは可能でしょうか。
人間活動によるCO2排出を実質ゼロにすることができれば、自然の(陸上生態系と海の)吸収がしばらく続くため、大気中CO2濃度はゆるやかに減少すると考えられています。
Q37気候工学といった人為的な気候介入の是非について、登壇者の皆様はどうお考えでしょうか。
気候工学と言われるものの中でも「CO2除去」は、かなり実施が前提で研究されているように思います。一方、成層圏エアロゾル散布などの「太陽放射改変」は、研究は行うべきという意見が増えてきましたが、研究も行うべきでないという意見もあります。研究を進めるにしても、ガバナンスや倫理の問題にしっかり注目すべきと思います。個人的な意見です。
Q38CO2の循環を定量的に把握する上で、使う単位を揃えてもらいたいところです。私としては炭素換算で年間70億トン排出、海洋に毎年40億トン吸収、残りが大気中に毎年蓄積している、というのが分かりやすいです。
ご発表では、CO2換算での年間Gトン、だったり、ペタグラムだったりで、非常に分かりにくいです。
数字の単位は、出来るだけ、揃えていただけるとありがたいです。
単位が揃っておらず、申し訳ありません。今後、できるだけ揃えるよう心がけたいと思います。なお、研究論文などでは一般的にCO2換算ではなく、炭素換算が使われていますが、これは、CO2が海洋や陸域ではCO2ではない異なる形で貯蔵されており、CO2の循環というよりは炭素の循環として捉えるためです。また、昔はギガトンで表記されるのが普通だったのですが、最近ではペタグラムと表記される場合も多く、引用を拾ってくる際に、単位が混在してしまうことがあります。
Q39「満足度」はどのような指標で計測・評価されておりますでしょうか。
※パネルディスカッション中に回答しました。
Q40リチウム精錬での大量の水使用にも気になっています。
私の専門外ですが,気になったらどんな問題があるのか,解決策はあるのかなど徹底してウェブで調べ,何かできることがあるのか(他の人にできることであっても良い)まで考えてみるとよいと思います.例えば技術的な改善,投資による解決,あるいはLi消費を減らす,など.
Q41水問題について、ウォーターフットプリントや水による紛争などについても検討に含まれていますか。
当然含まれます."10 insights" の要約では水の危機の不平等という問題に言及しています.フットプリントは”隠れた問題”の所在を知るのにも重要なデータですね.
Q42日本は、気候変動難民には言及していませんが、(渡辺氏の)ご発表では水と移住に言及されていることから、どのようにお考えでしょうか。
移住の問題は10 insights の”水”で言及されているので紹介しましたが,環境問題による移住・移民について,それを”気候変動適応戦略”の中で捉えていくという考え方になってきているところが重要な変化かと思います.日本は,難民政策一般について人権との関係をまず整理しないとならないでしょう.
Q43渡辺先生、日本は特にメンタルヘルスへのスティグマが大きく、医療や相談機関へのアクセスへも壁が大きいようですが、医療関係者として、どのように改善していくことができると思われますか。
自身が医師ではなく,専門的見地からは別の意見があるものと思いますが,メンタルヘルスについては精神科医に限らず,家族やコミュニティを巻き込む様々なアプローチが試みられています.結局は(他の疾病でも同じだが,それ以上に)職場を含めた”周囲”の理解の部分が大きく,これもメンタルヘルスの問題を”自分ごと”と捉えることがポイントと思います.
Q44エーリッヒ・フロムを読むと、個々の不安が増強すればナショナリズムや差別的指向がますます台頭してしまいそう。
フロムは半世紀ほど前にちょっと読んだのですが,不安への対処の仕方が重要だったように記憶しています.科学が単に不安を煽るのではなく,どういう解決があり得るのかを示すのも重要ですね.
Q45気候変動とメンタルヘルスに関する知見についての最新知見や概観が日本語でまとめられている資料やウェブサイトなどはありますでしょうか。
日本語でまとめられているサイトは,新聞記事を除けば見当たりませんでした .英語では例えば,以下のようなサイトが多数あるようですが・・・.https://www.psychiatry.org/patients-families/climate-change-and-mental-health-connections/affects-on-mental-health
Q46脆弱層への(個々の特徴による)影響は、どのように測定していますか。(複数の脆弱性の組み合わせにより、一層の不利益が生じるかと思いますが)。将来世代について、予測ができない中で、どのように超長期的な公平性を担保できるとお考えでしょうか。
データが揃っていれば,複数の特徴の中から脆弱性につながる特徴を統計的に示すことはある程度可能です.超長期的な公平性については,可能な限りの範囲で担保をめざすとしかいいようがないと思います.現状維持で進み続ければ,将来世代が自然の恩恵を受けることができなくなる,という意味での著しい不公平性が生ずる可能性が高い.それを避けることが少しでも”公平性”に近づくことになります.
Q47渡辺さんのPlanetary Healthの考え方の中で、将来世代の健康や福利への悪影響をできるだけ抑える必要があることは理解できますが、現世代が将来世代の健康や福利、理想等を適切に想像や探索・理解できるのか、懸念があります。BAUの延長上にある悲惨な将来状況下での将来世代の生活や価値観等を想像するのも必要かと思いますが、少し暗い不健全な考えに陥ってしまう可能性もあるように思います。かといって、全ての理想が実現された楽観的な将来状況下での将来世代の生活や価値観も想像が難しいではないかと。どのようにバランスを取っていけばよいか、社会の様々な主体や世代も横断的な対話が必要に思いました。
我々の2世代前の人は我々の世代の”価値観”を正確に想像できてはいなかったでしょう.そういう意味では,将来世代の価値観を予測することは極めて難しい.一方で,いわゆるベーシック・ヒューマン・ニーズ(BHN)の全てが数世代の間に大きな変化を見せることはないだろうという仮定は,まあまあ間違いないものと思います.現在,危惧されているのは,我々がBAUで進み続けると,将来世代はBHNを満たすのも難しくなるだろう,ということです.言い換えれば,将来世代が(BHNは満たされた上で)様々な価値観を選ぶゆとりを我々が奪い取らないように行動しなければならない,ということとも言えます.
Q48気候変動による影響が均一でないとすると、考えたシナリオに当てはまらない部分が出てきたりもする可能性があるのでしょうか?
※パネルディスカッション中に回答しました。
Q49大気汚染の深刻な場所でのコロナの感染の多さというのは、どのように関係するのですか?
※パネルディスカッション中に回答しました。
Q50大気汚染で亡くなる人を減らすのは、それはそれで別の問題ではないでしょうか?
今回は、コロナ禍で亡くなる人と大気汚染との正の関連に言及したものです。もちろん、コロナ禍とは別に、大気汚染対策を講じていくことは必要ですし、現にそのように展開してきました。ここでは、それに加えて、コロナ禍と大気汚染のような相互の関連に注目し、より広い視野からより効果的な対策を講じていくことも重要だと指摘したものです。
Q51エリノア·オストロムのpolycentric governanceの考えには、地域間の格差拡大やローカルな規範や働きについては脆弱な層についての配慮について疑問もあるのですが、グローバルガバナンスと絡めて、どのようにすればうまく機能すると思われますか。
エリノア・オストロムは、共有財は、コミュニティなどの 社会的な主体により、持続的に管理されうることを示しました。気候は、地球規模の共有財であり 、その変動に関しては、都市や若者、科学者などの主体による活動が大きな役割を果たしてきたので、オストロームのそのような考え方と通底するものがあると指摘したものです。
Q52気候危機は全ての危機の上位に位置する危機ですか? もしくは何が最も上位に位置する危機でしょうか?
これは難しい質問で、インパクトの評価基準(生命、経済など)や時間スケール(近い将来、遠い将来)、起こり得る確率、また社会の準備対応体制や人々の価値観によって、危機の大小の受け止め方は変わると思います。何を上位と考えるかは、さらに価値感の影響が強まると思います。ただ、リスクの認知に関する国際的調査がありますので、世界のビジネスリーダーに対する調査(World Economic Forum, 2020. Global Risk Report: 15th Edition)、世界の研究者に対する調査(Future Earth Risks Perceptions Report 2020, https://futureearth.org/initiatives/other-initiatives/grp/)をご参照ください。
Q53地球のリズムとしては、氷河期に向かう時期なのですか?
国立環境研究所のYouTube動画「20分でわかる!」温暖化解説シリーズをご参照ください。
https://www.youtube.com/channel/UCW0Lz8uDDaZ1aG30_ahULwA
Q54CO2のみが本当に温暖化に寄与しているのでしょうか?
国立環境研究所のYouTube動画「20分でわかる!」温暖化解説シリーズをご参照ください。
https://www.youtube.com/channel/UCW0Lz8uDDaZ1aG30_ahULwA
Q55温暖化は地球の定期的サイクルで、CO2が原因ではないとの意見がありますが、実際はどうなんでしょうか?
国立環境研究所のYouTube動画「20分でわかる!」温暖化解説シリーズをご参照ください。
https://www.youtube.com/channel/UCW0Lz8uDDaZ1aG30_ahULwA
Q56いわゆる「懐疑論」を唱える方々が、観測点のすくなさや偏りを論拠にされている場面や文章を時折見かけるのですが、そのような見解に対して、どのようなコミュニケーションをなされてますでしょうか。
https://www.ipcc.ch/site/assets/uploads/2018/02/WG1AR5_SPM_FINAL.pdf
の図SPM1.bを見て頂ければわかるように、気温上昇は海上を含めた世界中で観測されているので、たとえば都市化の影響を見ているのではないことを説明できると思います。
Q57日本では関心がなければ情報にアクセスする機会がなく、多くの人が気候危機の事実を正しく認識できていないと思います。マスコミの果たす役割が大きいと思いますが、今日のお話をマスコミ関係の方はお聞きになっているのでしょうか。今年は選挙もあるので、PRに注力していただき選挙の争点に気候危機対策が上がるようになってほしいです。
情報発信の重要性はご指摘の通りです。今回のイベントにはメディア関係者20人からご登録頂きました。より多くの方に情報をお伝えする努力を今後とも継続していく所存です。
Q58日本の脱炭素化に向けた障壁として、政策・制度または技術上の課題として皆様が考える最も大きいと思われる要素をお伺いできれば幸いです。
※パネルディスカッション中に回答しました。
Q59日本の脱炭素化推進への最大の壁は何でしょうか?
※パネルディスカッション中に回答しました。
Q60日本における一番の課題は何だと思われますか?
※パネルディスカッション中に回答しました。
Q61日本が脱炭素化へ円滑に移行していくために、科学的な視点で特に配慮すべき事項は何でしょうか。
※パネルディスカッション中に回答しました。
Q62科学による警告はとても大事だと思います。一方、社会とのコラボという意味では、地方では、洪水被害にあったり、あわなくても今までにない降水量や川の推移に驚いたり、さまざまな被害を肌で感じている人がいます。そうした声をぜひ吸い上げていただき、それが温暖化の被害で今後ひどくなると科学が明らかにしていると、専門家が背中を押していただけると、とても良いのではと思いました。
ご指摘のとおりです.研究者と社会との関係を考えるとき,研究者は,成果を社会に還元するとか得られた知見を社会啓発に使うといった発信方向には熱心でしたが,社会が科学に何を期待するかの声を聞く方向の努力は不足していたのではないかと思います.また,そういった声を効率的に吸い上げるしくみも十分にできていないのではないかと思います.そういう状況を変えていこうとする動きがあちらこちらで始まっているので,それを取り入れていきたいと個人的には思っています.
Q63科学者が頑張っていろいろなデータを示しても、都合の良いところだけ切り取られる恐れがあります。科学が真に尊重される社会にするために何が必要でしょうか?
人々の価値観は多様で(さらにSNSにより価値観の異なるグループが分断される傾向があり)、科学の参照のされ方も多様であるのが現実で、これを変えるのはなかなか難しいと思います。科学者の側から人々の関心や疑問に耳を傾けていくことが、相互信頼を得るために重要だと思っています。個人的な意見です。
Q64エビデンスはとても大切ですが、エビデンスが示されなくても、CO2の排出があったり、社会的被害、環境被害が甚大であったり、不確実性があったりする場合もあります。エビデンスだけを大切にすると、弱者の視点や、暗黙の知、重要な論点を見落とす危険もあると思いますが、いかがでしょうか?
必ずしも理系の研究によるデビデンスだけでなく、社会の分析によって得られるエビデンス、弱者や少数派の意見を丁寧に聞き取ることによってはじめて得られるエビデンスもあり、また暗黙の知やローカルコミュニティの中で伝承されている知を体系化しようという学問もあります。そういう多様な知の結集としてのエビデンスを重視してほしいという意味で発言しました。一方で、不確実性や分析手法の違いによって、同じ事象を見ても研究者によって異なる見解が生まれる場合もあります。仰るように、重要な論点を見落とさないよう、科学者にとっても謙虚な取り組みが必要と思います。
Q65研究者による科学的知見を、一人ひとりの行動に結びつけるのは、容易ではありません。結びつけるためのヒントのようなものを織り込んでいただくことが可能であればありがたいです。
※パネルディスカッション中に回答しました。
Q66気候変動の事実がなぜ人の意見を変えられないと考えておられますか?
人々の価値観は多様ですし、信じたいものを信じるバイアスがあります。しかし、気候変動の深刻さの認識は高まっていると思います。日本は遅れているかもしれませんが、世界的に認識が高まることで日本の認識も影響を受けています。
Q67気候変動(地球温暖化)はCOVID-19と同じくらい全人類に影響を及ぼす問題の1つだと言われているのをネットで調べて知ったのですが、どのようにすればもっと日本人は地球温暖化に対して注意を向けることが出来ると思いますか?私達の身近な例でレジ袋の有料化や脱プラの活動(紙ストローの導入など)が地球温暖化防止の取り組みとして挙げられると思うのですがそれによってどれほど軽減されているのか私自身も実際によく分かっていないので、効果を国民に発信することでもっと積極的に考えるようになるのではないかと私は思います。
※パネルディスカッション中に回答しました。
Q68地球温暖化に対して、市民一人ひとりが今すぐに行わなければならないことを教えてください。
※パネルディスカッション中に回答しました。
Q69気候・気象学を学ぶ学生達が、今後キャリアを積んでいく中で、どのような形で社会に貢献できるか。またそのためには学生時代に何をしておくことが大事か。
研究者として、ビジネスとして、行政として、教育者として、様々なかかわり方があると思います。脱炭素が社会で主流化して、多くの人が関わるようになりましたが、気候科学を本当に理解している人は社会の中に少ないです。気候に関して、本当はどうなの?と問われたときに、本質的で明快な説明ができる人が増えるとよいと思っています。個人的な意見です。
Q70気候変動に対応する研究についての日本国内のネットワークはどのようなものがあってどのような活動をしているのか知りたいです。
文部科学省や環境省の大型研究プロジェクト等への参加を通じて、多くの大学や研究所の研究者が協力して研究を行うようになってきています。その中から、「日本の気候変動」https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/ccj/index.htmlや「気候変動影響評価報告書」https://www.env.go.jp/press/108790.htmlのような総合的な知見が創出されています。
Q71ティッピングポイントに関する最新の情報・見解をおききしたいです。
最近の見解の一つとして、Johan Rockstrom氏のインタビューをご紹介しておきます。https://www.theguardian.com/environment/2021/may/29/johan-rockstrom-interview-breaking-boundaries-attenborough-biden包括的な評価は、8月に発表されるIPCC第1作業部会第6次評価報告書をお待ちください。
Q72IPCC報告書の政策決定者のための要約には報告書本体と異なり、要約執筆者の(悲観的?)バイアスがかかっているという指摘がありますが、どうお考えですか。
IPCC報告書の政策決定者向け要約は各国政府が一文一文承認しますので、報告書の最終的なトーンは要約執筆者がすべて決めるわけではありません。要約執筆者もそれぞれに異なる価値観を持ち、各国もそれぞれの立場がある中、ある意味でそれらのバランスで決まるといえるかと思います。
Q73IPCCの報告が近々出されると聞いていますが、どのような内容と予想されますでしょうか?
まだ言えません。8月に第一作業部会第6次評価報告書が出ますので、ぜひご注目ください。(回答は2021年6月のもの)
【事務局より】
2021年8月9日にIPCCの第1作業部会第6次評価報告書が発表されました。
https://www.ipcc.ch/report/sixth-assessment-report-working-group-i/(英語)
日本からも多くの貢献があり、本オンラインイベントの司会者の江守氏も第1章の執筆者(Lead Author)を務めました。
YouTubeで江守氏の解説(速報版)をご覧いただけます。
https://www.youtube.com/watch?v=dLgGSI0G2SA