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中核研究プロジェクト2 衛星利用による二酸化炭素等の観測と全球炭素収支分布の推定

地球温暖化研究プログラムトップページ > 中核研究プロジェクト2トップページ > 平成19年度の成果の紹介

〔平成19年度の成果の紹介〕

 当研究プロジェクトでは3つの研究グループにより研究を実施し、その成果は国環研GOSATプロジェクトオフィス事業に反映しています。それぞれの平成19年度の主要な成果は下記の通りです。

衛星観測データの処理アルゴリズム開発・改良研究

 高層大気中に存在する薄い雲(巻雲)や大気中のエアロゾルにはさまざまな状態があることを踏まえ、プロジェクトで開発した二酸化炭素とメタンのカラム量推定手法でどの程度の精度で導出が可能であるかを見積もりました。その結果、黄砂などの高高度にエアロゾルが存在する場合と、粒径の大きいダスト粒子の場合に、誤差は大きくなりますが、ほとんどの観測条件で目標精度を満たすことが確認できました。

エアロゾルが無いと仮定して二酸化炭素カラム量を推定した時のカラム量誤差

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エアロゾルが無いと仮定して二酸化炭素カラム量を推定した時のカラム量誤差
〔出典〕
衛星からの晴天域の近赤外太陽散乱光観測による二酸化炭素気柱量推定手法の検討
− 誤差評価と鉛直気圧グリッドの最適化 −
太田芳文、吉田幸生、横田達也
日本リモートセンシング学会誌、28、152-160、2008.

地上観測・航空機等観測実験による温室効果ガス導出手法の実証的研究

 データ処理手法の検証の観点から、今後実験や観測により押さえるべきパラメータ(二酸化炭素やメタンのカラム量、エアロゾルの高さや光学的厚さなど)の優先度を整理しました。また、衛星打ち上げ後のデータプロダクトの検証に必要な実証手段を検討して、地上設置の高分解能フーリエ変換分光計によるカラム量導出の不確かさ(バイアスとばらつき)を評価するための、航空機等による直接測定の準備を行いました。

地上観測・航空機等観測実験による温室効果ガス導出手法の実証的研究

二酸化炭素とメタンのカラム量に対する検証観測は、これらの導出に影響するパラメータ(エアロゾルの高さや光学的厚さなど)の測定も含めて、さまざまな方法で実施されます。

 

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地上観測・航空機等観測実験による温室効果ガス導出手法の実証的研究

GOSATデータプロダクトの検証に利用を予定している地上設置の高分解能フーリエ変換分光計(国立環境研究所に設置のBruker社120HR)では、日々の気圧変化などを考慮した適切なデータ処理を施すことにより、上図に示すような精度でカラム量を導出することができます。解析に使用する先験情報(アプリオリ)を変えても同じような結果が得られるため、安定して解が得られる(先験値依存性が大きくない)ことがわかります。

全球炭素収支推定モデルの開発・利用研究

 地上観測データだけでなく、新たにGOSATの二酸化炭素カラム量の陸域観測データを用いることによって、インバースモデルによる年間の炭素収支(フラックス)推定誤差をどの程度低減させられるかを、シミュレーション計算により地域別に解析しました。GOSATは晴天域のみ測定できますので、この解析では晴天域の観測データを利用し、その二酸化炭素カラム量の導出誤差は5ppm程度であると仮定しました。解析の結果、もともと地上測定局の多い北米やヨーロッパにおける年間フラックス収支の推定誤差の低減率は10%程度ですが、地上の観測局の少ないアフリカや南アメリカ大陸で誤差の低減率が大きい(30〜50%程度ある)ことがわかりました。

地域別フラックス推定誤差の低減率
地域別フラックス推定誤差の低減率

国環研GOSATプロジェクトオフィス

GOSAT定常データ処理システムの構築
  国環研のGOSATプロジェクトでは、JAXAから送られてくる膨大なGOSATデータの処理を行う体制を整え、GOSAT定常データ処理システムを構築しています。ここでは解析に必要な参照データとともに処理を行いますが、膨大な計算時間が必要なため外部の計算機も利用しています。処理の結果として、炭酸ガスやメタンなどの温室効果ガスのカラム量やそれらのガスの吸収・排出量がプロダクトになります。処理されたプロダクトは、ディスク、テープなどに保存され、それらのプロダクトの保存量は、5年間の運用後には、300TB以上になります。検証作業が終わりプロダクトが一般に公開された後は、だれでも自由に検索したり、データの配布を要求したりすることができます。これらのデータ処理・保存・配布を行うシステムをGOSAT Data Handling Facility(GOSAT DHF)と呼び、平成20年度冬期の打ち上げへ向け、開発を行っています。

GOSAT定常データ処理システムの構築

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GOSAT定常データ処理システムの構築
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