 |
中核研究プロジェクト1 温室効果ガスの長期的濃度変動メカニズムとその地域特性の解明
|
地球温暖化研究プログラムトップページ > 中核研究プロジェクト1トップページ > 平成19年度の成果の紹介 |
 |
〔平成19年度の成果の紹介〕 |
|
研究サイト |
プロジェクトの研究を行っているサイトと地域的な特徴を以下に示した。 |
|
Figure 1: Observation sites and factors influencing variation in CO2 concentration |
|
 |
 |
CO2のグローバルな収支とその変動 |
人為起源のCO2排出量はここ数年大きな伸びを示しているが、これに合わせて、大気中のCO2濃度増加が大きくなっている。本プロジェクトでは、船舶などを用いて(図2)、グローバルなCO2の自然界の吸収量を酸素濃度(図3、4)や二酸化炭素同位体比を使って推定している。これによるとここ10年の平均としては、自然界に放出された化石燃料、セメント生産起源のCO2の内、海洋が3割、陸域生態系が1割の吸収を行っていると推定された(表1)。
この収支の年変動を炭素同位体比から推察すると、大きな変動要因は陸上の植物のCO2吸収量変化によっていると考えられた。これは、陸上の気温変動とも関係を持っており、一般的には温度が高いときに吸収量の減少がみられた。海洋は、変化が小さく2005年以降に吸収の増加がみられる(図5)。 |
 |
|
 |
(画像クリックで拡大表示) |
|
図3.CO2とO2の大気と陸上生物圏、海洋とのやり取り |
|
|
|
 |
|
|
 |
|
 |
|
 |
|
図5.同位体比を用いた陸上植物と海洋による吸収量変化推定例 |
|
 |
 |
CO2収支の変動要因の解明 |
本プロジェクトでは、CO2の収支の変動やトレンドの変化について、陸域、海洋吸収量の変動を地域的、プロセス的な解明を行っている。
(a)海洋吸収フラックスの変動の直接観測(図6~8)
北太平洋のCO2吸収フラックスの長期変動を、これまで11年の表層海水のCO2分圧観測から推計した。北太平洋における吸収量の変化は少なく、ほぼ0.5Gt-C の吸収が続いていることがわかった(図7)。98年のエルニーニョに対しては、吸収量の若干の増加、99年のラニーニャに関しては吸収量の減少がみられた。グローバルな吸収パターンとも同調的であった。この変動は時に30-40度の緯度帯が応答していた(図8)。現在、日本―オセアニア航路での観測も開始している。 |
 |
|
 |
(画像クリックで拡大表示) |
|
図7.北太平洋海域でのCO2吸収フラックスの経年変化 |
|
|
|
 |
|
|
 |
(b)陸域のCO2の吸収フラックスの変化に関する観測
ここでは、アジアにおける陸域フラックスの変動の地域性や年変動を解明することを目的としている。
現在のところ日本のカラマツ林や有機物蓄積量の多いチベット草原でのフラックス観測を継続している。
チベットの吸収量は、2002/3年に減少、2004年に増加していたが、日本での森林の観測はむしろ逆の傾向を示していた。応答の違いなどを今後、アジアのフラックス観測のネットワークによって解析する。
温暖化に応答すると考えられる土壌呼吸量の応答実験を国内5か所で開始している(図9)。つくば、北海道、広島などの現在までのデータによると土壌呼吸の温度応答は10度上昇に対して3倍に近いことがわかった(表2)。これはモデルに用いられている2倍よりも50%大きく、温度フィードバックとしての大きさは日本の森林で予想以上に大きいことがわかった。現在、全国から採取した土壌を用いてのインキュベーションによる実験室的な実験を開始した(図11)。 |
 |
表2.3サイトでの土壌呼吸速度の温度応答と温暖化による増加効果
|
|
 |
森林 |
対照区Q10
(a) |
温暖区
Q10
(a) |
観測された放出量増加効果 |
水分の影響 |
針広混交林
(北海道) |
3.0
(0.79) |
2.8
(1.0) |
19%/1℃ |
無 |
アカマツ林
(関東) |
2.9
(1.08) |
2.7
(1.08) |
3.5%/1℃ |
有(夏季) |
常緑カシ林
(中国) |
3.0
(0.70) |
2.9
(0.63) |
5%/1℃
|
有(夏季) |
|
|
 |
|
|
 |
|
 |
 |
アジアの人為起源発生量の変動と地域性の解明 |
アジアの人為起源の温室効果ガスの排出量は増加していると考えられている。波照間での観測によって二酸化炭素やフロンなどの発生量の近年の増加傾向が捉えられている。特に、HCFC-22,HFC-23などの冬季の寄与などが検出されてきている(図12)。HFC-23の排出量は世界の半分を超えるのではないかと推定されている。 |
 |
|
|
 |
航空機による世界空港の上空でのCO2濃度の鉛直分布を観測している。これを用いて、季節変動を場所ごとに調べている。高度別季節変化は大陸内部で大きく、陸域の吸収量の情報や成層圏の影響の情報を合わせ持っていることなどがわかった、ジャカルタ、バンコクの季節変化は上空と2km以下では異なり森林火災などの影響も考えられている。
|
 |
(画像クリックで拡大表示) |
|
図13.南・北ヨーロッパ、バンクーバー:YVR、仁川:ICN、成田:NRT、ホノルル:HNL、バンコック:BKK、ジャカルタ:CGKおよびシドニー:SYD上空におけるCO2濃度の平均的な季節変動 |
|
 |
 |
モデルによる解析 |
高分解能のデータをシミュレートするために、トラジェクトリー型のモデルと従来の拡散型輸送モデルを結合したモデルを開発している。図14は従来の拡散型輸送モデルと、結合モデルを比較したものである。観測値の細かな挙動は、結合モデルによってよりよく再現されていることがわかる。 |
 |
|
|
 |
 |
PJ1の全体のまとめ(H18~19) |
 |
1)広域の大気観測からわかってきたこと
・二酸化炭素の10年間の収支ー海洋が30%、陸域10%程度の吸収が続いている。
・航空機観測、各種GHG、トレーサーガスの最近までの変動観測の継続、14Cのデータの集積、大気モデルの改善や循環に関して知見が広がった。
・中国を含むアジアでの人為起源発生の寄与はCO2、CO、オゾン、ハロカーボンなどの地域分布や濃度変動に大きく寄与していることがわかった。
・シベリアの吸収地域の鉛直分布やタワーによるデータ蓄積が行なわれた。 |
2)海洋観測
・北太平洋域のCO2吸収量の長期変動がわかってきた。
・西太平洋での観測が開始され、これまでのデータセットの補完ができるようになった。
・海洋からの酸素やCO2の放出の年変動がありそうであることがわかった。海水温や生物生産の指標として使うことを検討。 |
3)陸域観測
・生態系のかく乱がある場合、CO2の吸収量は激減し、3年程度は吸収源とならない。
・温暖化により土壌炭素分解促進による吸収量の減少がどの程度か、実験を開始し、2度程度の上昇で、20-30%程度の促進があることが、初期的実験からわかった。
・チベット高原と日本でのフラックスの温度応答は短期的には逆であった。 |
4)モデル
・フォワードのシミュレーションモデルの進化があったが、観測データにより、さらに良いパラメタリゼーションが今後行えるだろう。 |
|
 |
 |