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中核研究プロジェクト1 温室効果ガスの長期的濃度変動メカニズムとその地域特性の解明 |
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〔平成18年度の成果の紹介〕 |
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大規模な大気観測網 |
当研究プロジェクトでは、航空機や船舶、または地上でのアジア太平洋地域の大気観測を開始しています。
図1は、日本-オセアニア、日本-カナダ間の太平洋を航行する貨物船舶の協力のもと、取られたCO2の緯度分布の長期観測結果です。北半球の陸の植物吸収による大きな季節変化とともに増加傾向が見られます。図2はCO2の増加速度の緯度分布と炭素、酸素の安定同位体比の変化の緯度分布です。これらのことから、CO2の増加の速度変動が陸の植物の吸収量の年変動に強く依存していることがわかってきます。今後の温暖化が植物のCO2吸収に悪い影響を与えるであろうことが予想されます。
新たに始まったJALを用いた大気観測では、世界各地の大きな国際空港近郊における、CO2の高度分布を測定しています。上空のCO2濃度と地上のCO2濃度を調べることによって、地域的な発生源や吸収源の情報が得られます。図3は成田付近のデータですが、日本では、地表付近に大きな発生源があることを示しています。
また、CO2の挙動を調べるために、酸素濃度の変化を調べています。ものが燃えることで酸素が消費される一方、植物は酸素を生産するので、大気中の酸素濃度を観測することによって、植物のCO2の取り込み速度や酸素の生産速度が予測できます。図4では波照間や落石モニタリングステーションでの大気の酸素濃度変化です。これによると、酸素は夏増加し、冬減少することを繰り返しながら全体的に減少しています。これは、化石燃料の燃焼により大気中の酸素が減少していることを示しています。しかし、その減少速度は、植物による酸素供給などによって、少し遅いことがわかりました。その推測から海洋へのCO2取り込み量が約2Pg炭素であることが確かめられてきました。
その他、CO2以外の主要温室効果ガスの観測がおこなわれていますが、これまであまり観測が進んでなかったオゾンの緯度分布観測も開始しています(図5)。また、温暖化係数が非常に高いフロン類の精密観測、そのモデル予測との比較なども行われています(図6、7)。 |
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図2.定期船舶観測による大気CO2の濃度、同位体変化率 |
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陸域吸収量の観測 |
陸域の二酸化炭素吸収量は、そこの植生や、土壌有機物の蓄積量などにより大きく変動します。ここでは、昼間同時に起こる光合成と呼吸を分離し測定する方法をCOSなどを用いて行う研究を開始しました。これにより、光や温度条件にそれぞれが独立してどのように影響を受けるのかなどを調べます。
土壌に蓄積された炭素分は、分解、呼吸などによって二酸化炭素として大気へ戻ります。ここでは、土壌蓄積の大きい寒冷地、特にチベット草原での炭素の吸収量変化などを観測し、温暖化の影響などを調べています。
また同時に、実験的に土壌を加熱し温暖化を人工的に引き起こした場合における、土壌有機物の分解速度の変化を、自然に近い状態で観測する野外実験が開始されています。 |
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図9.チベット草原における二酸化炭素吸収観測の様子 |
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観測とモデル計算によるシベリアの陸域吸収 |
シベリアにおける7箇所のタワーサイトでCO2の連続観測データを取得しつつ、これを用いてインバースモデルという手法で、地域のCO2吸収量の季節変化や年間吸収量を求める試みを行っています。
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・全体的にSim-CYCLEのFluxとインバースのFluxが同じレベル
・季節変動の形は良く一致している
・10月の不一致→・観測のFitting
・Simは10月に高い
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図11.シベリアタワー観測とインバースモデルによるCO2吸収推定との比較 |
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海洋の吸収量変動の観測 |
太平洋で海洋が地域的にどの程度二酸化炭素を吸収しているか、またその変動が長期的にあるのかなどを観測しています。 |
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図13.海洋のCO2吸収量の長期変化観測例(未検証) |
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