「2026年夏のすぎなみ科学展―あつまれ!すぎなみの森、木のおもちゃ展―」参加報告
みなさん、「高円寺」というと何をイメージしますか?阿波踊り、サブカルチャー、人情味あふれる商店街や飲食店、演劇やお笑いを志す若者、古着屋さん、ラーメン激戦区、お洒落なカフェ、日本のインド、あげればきりがないほど個性豊かな文化の街です。この夏、そんな高円寺に「森」が出現しました!
2026年8月14日~23日までセシオン杉並において「木」をテーマにした体験型科学展が開催されました。杉並区の名前の由来は、江戸時代に領地の境界のしるしとして青梅街道沿いに植えられた杉並木にあるそうです1。そんな木と縁がある杉並区高円寺に出現した「森」で国立環境研究所(以下、NIES)はリャンバーを使った子どもたち向けの地球温暖化ワークショップを開催しました。
リャンバーとは、NIESの梁乃申(リャンナイシン)博士が独自に開発をした温室効果ガスを観測するための密閉された容器(チャンバー)のことです3。研究者の間では梁博士の名前にちなんで敬意をこめて、リャンバーと呼んだりしているそうです。梁博士は、このリャンバーを使って「森林の土壌呼吸が地球温暖化に及ぼす影響」について、日本はもとより、東南アジアなど海外の多様な地域で、長年研究を続けています4。リャンバーってなんだかすごそうですが、ちょっと難しいですよね?そこでまずは、NIES広報担当の広兼さんから梁博士の研究についてわかりやすく説明をしてもらいました。
広兼さんは『空気を変える?森の働きを知ろう!-森林や植物と二酸化炭素(CO2)のおはなし―』と題して、森林と土壌とCO2の関係を説明しました。木などの植物は、光合成によってCO2を吸収しながら成長します。また、土壌中には植物の成長と共に根が張り巡らされ、落ち葉や枯れ枝等も堆積してゆきます。そのため、森林とその土壌は地球上のCO2を蓄える大切な役割を果たしています。一方、木も人間や他の生物と同じように呼吸をしており、葉や幹、根からCO2を放出しています。また、土壌中の微生物は落ち葉等の植物起源の有機物を分解してCO2を放出しています(これを「微生物呼吸」と呼びます)。実は、地球の温暖化が進むと微生物の活動が活発になり、土壌から大気に放出されるCO2が増えて地球温暖化をさらに加速してしまうのではないかと心配されています。
では、実際に梁博士のチャンバーを使って実験しながら土壌や植物の呼吸の不思議を体感してみましょう!
この写真のように、2つの小型のチャンバーに、植物(コキア)の鉢と、土だけの鉢を入れたものを用意しました。
写真7(右):植物(コキア)を入れたチャンバー
まずは、土だけの鉢のチャンバーの蓋を開閉しながら、土壌から発生したCO2がチャンバーの中にたまっていく様子を観察します。モニターに映し出されたCO2の濃度変化(チャンバー内のCO2濃度が上がっていく)を参加者に見てもらいました。次に、日光のあたるところに置いた植物に被せたチャンバー内で、植物の光合成によってCO2濃度が下がっていく様子を見てもらいました。
そして梁博士から、私たちも自然のCO2循環の中に組み込まれているというお話を伺いました。私たちは、お米や小麦(パンやパスタの原料)等の炭水化物を食べて生きるためのエネルギーを得ています。お米や小麦に含まれる炭水化物は、植物が光合成によって光のエネルギーを使ってCO2から作りだされたものです。そして、私たちは炭水化物を最終的にCO2に分解する過程でエネルギーを取り出しているのです。では、そのCO2はどこに行くのでしょう?そうです!多くは呼吸を介して空気中に排出されるのです!では、実際にチャンバーに息を入れて自分の吐き出すCO2を測定してみましょう!
参加者にチャンバーのなかに息を入れてもらい、CO2の濃度変化を観察すると、モニターの数字やグラフがみるみる上昇していきます。目に見えないCO2の量を体感できる瞬間です。植物も土壌も私たちも炭素(CO2という形で)を循環させて生きています。
「ちょっと待ってください、CO2が循環しているのなら、地球の大気にCO2が増えたりしないのでは?」・・・いい質問ですね。今回は時間がなかったので詳しく説明できなかったのですが、大気中のCO2濃度を押し上げているのは、自然の循環の外から大気に加えられているCO2、具体的に言うと「化石燃料を燃やして排出されたCO2」なのです。今回はCO2の自然循環について理解してもらったのですが、化石燃料使用によるCO2の話については、よろしければこちらをご参照ください。
・Q1:呼吸で大気中の二酸化炭素が増加する?「ここが知りたい地球温暖化 温暖化の科学」地球環境研究センターHP
https://cger.nies.go.jp/ja/library/qa/26/26-1/qa_26-1-j.html
最初の概要説明も含めて約30分のイベントの中で、参加者の方に熱心にお話を聞いていただき、研究機器に触れる体験もしていただきました。終了後には梁博士と記念撮影などの交流もあり心がきゅんとする瞬間がありました。参加者の皆様、杉並区立社会教育センター、株式会社コングレに心より感謝申し上げます。
