2016年1月号 [Vol.26 No.10] 通巻第302号 201601_302006
酒井広平講師による「検定試験問題を解いてみよう」シリーズ 25 運輸部門の温暖化対策 —3R・低炭素社会検定より—
3R・低炭素社会検定は、持続可能な社会の実現のため、3Rや低炭素社会に関する知識を活かして、実践行動を行う人を育てることを目的としています。【3R・低炭素社会検定 低炭素社会分野試験問題解説集「はしがき」より】
検定試験問題から出題します。
問73エコドライブの工夫として、最も不適切なものはどれか?
初級レベル
正答率 98%
- ①不必要なアイドリングをひかえる
- ②荷物をできる限り積み込んで走行する
- ③早めにアクセルオフする
- ④タイヤの空気圧はこまめにチェックする
- ヒント
- タイヤの空気圧や積荷の重量も燃費に影響を与えます。
- 答えと解説
-
答え: ②
警察庁、経済産業省、国土交通省、環境省で構成するエコドライブ普及連絡会の「エコドライブ10のすすめ」では車の運転に関する10の項目を定めており、実行することを推奨しています。
② 自動車の重量が重たくなればなるほど燃費は悪くなります。エコドライブを実行するには「不要な荷物は積まずに走行」する必要があります。
① 停止時のアイドリング中もエンジンは動いているため、ガソリンや軽油を消費します。車を一定時間停止する場合にはエンジンを止めましょう。
④ 「タイヤの空気圧はこまめにチェックする」に関して、タイヤの空気圧が低下すると、推進に大きなエネルギーが必要となり、燃費が悪くなります。自転車の空気が少ない時に自転車をこぐことが大変になるといったことを想像してみるとわかりやすいと思います。
なお、2012年秋に「エコドライブ10のすすめ」の項目や内容が若干改訂され、「暖気運転は適切に」と「アイドリングストップ」といった項目が「ムダなアイドリングはやめよう」といった項目にまとめられ、新たに「自分の燃費を把握しよう」という項目が加わりました。
- *正答率は第5回3R・低炭素社会検定受験者のものです
問74環境負荷が低減されるモーダルシフトとして、最も不適切なものはどれか?
初級レベル
正答率 90%
- ①自家用車の使用から公共交通機関バスの使用にかえる
- ②自家用車の使用から電車の使用にかえる
- ③貨物輸送をトラック輸送から鉄道・船舶などの大量輸送機関に転換する
- ④電動自転車移動から自家用車移動に切り替える
- ヒント
- CO2排出量が増加する選択肢を選びましょう。
- 答えと解説
-
答え: ④
モーダルシフトは交通手段の切り替えを指しますが、近年では環境負荷の少ない(エネルギー消費が少なく、CO2排出の少ない)交通手段へ切り替えることを指すことが多くなっています。
環境負荷が低減される(CO2を削減する)モーダルシフトは、貨物輸送時のトラック輸送から鉄道・船舶輸送へ切り替えたり、自家用乗用車からバスや電車などの公共交通機関へ切り替えることが該当します。
国土交通省は特に自動車(トラック)から貨物鉄道・船舶輸送への転換によるモーダルシフトの推進を図っています。例えば、製品物流において、鉄道貨物輸送を利用している商品・企業に対して「エコレールマーク」を認定しています。
- *正答率は第5回3R・低炭素社会検定受験者のものです
問75図で示すように、富山市などで導入されているLRTという乗り物について、最も適切なものはどれか?
中級レベル
正答率 77%
- ①低床式車両や停留所のバリアフリー化を施した次世代型路面電車
- ②ガイドウェイバスを用いたバス交通システム
- ③道路と鉄道軌道の両方を走行することができる車両
- ④道路上に張られた架線から取った電気を動力として走るバス

- ヒント
- LRTはライト・レール・トランジットの略で鉄道の一種です。国内では、広島、鹿児島などでも導入されています。
- 答えと解説
-
答え: ①
LRTはLight Rail Transit(ライトレールトランジット)の略で、低床式車両や停留所のバリアフリー化を施した次世代型路面電車を指します。富山市のほか、広島市、熊本市、鹿児島市などでも導入されています。LRTを含む路面電車は電気を動力源として利用するため、走行中には直接CO2を発生しない公共交通機関です。
② のガイドウェイバスは専用走行路で側壁のガイドウェイを用いて走行するバスです。国内では名古屋市で導入されています。
③ の道路と鉄道軌道の両方を走行することができる車両はデュアル・モード・ビークル(DMV、Dual Mode Vehicle)と呼ばれる車両です。鉄道の赤字ローカル線など地方での運用が検討されています。
④ 道路上に張られた架線から取った電気を動力として走るバスはトロリーバスで、電車同様、電気を動力源として利用するため、走行中には直接CO2を発生しません。かつて国内でも東京などの大都市でみられましたが、現在では立山黒部アルペンルートのトンネル内に残るのみとなっています。海外ではスイス、イタリア、中国、ロシアといった国の多くの都市で運用されています。
- *正答率は第5回3R・低炭素社会検定受験者のものです
問76電気自動車の特徴として、最も不適切なものはどれか?
初級レベル
正答率 96%
- ①電気自動車の走行時のCO2排出量がゼロである
- ②普及のためには、充電ステーションの整備が必要である
- ③走行音が、ガソリンエンジン車に比べて大きい
- ④リチウムイオンバッテリーを採用した車種もある
- ヒント
- エンジンを使用しない電気自動車はとても静かです。
- 答えと解説
-
答え: ③
電気自動車は、電気を蓄電池に蓄え、その電気でモーターを回して動きます。そのため、走行時のCO2排出量はゼロになります(電気を作る際のCO2をカウントしない場合)。また、モーターで動くので、音は静かで、トルクがあるため、快適な走行になります(よって、③ が不適切)。ブレーキをかけた際の制動時のエネルギーはモーターを発電機として電気エネルギーに変換し、蓄電池に蓄える(回生機能)ため燃費が向上します。蓄電池は、内燃機関に比べ、貯めることができるエネルギー密度が低く、そのため、電気自動車の走行距離は、ガソリン車よりも短めでした。しかし近年、エネルギー密度の高いリチウムイオンバッテリーを採用する車種が現れ、改善されてきました。また、電気自動車は大容量の蓄電池を搭載していることから、東日本大震災以降、非常用電源としての側面も重要視されています。
そして、普及のためには近年各地でみられるようになってきた充電ステーションの整備が必要です。
- *正答率は第6回3R・低炭素社会検定受験者のものです
- 出典:3R・低炭素社会検定(http://www.3r-teitanso.jp)低炭素社会分野試験問題解説集