2015年4月号 [Vol.26 No.1] 通巻第293号 201504_293005
観測現場発季節のたより 6 真冬の北海道で雨が降る
地球環境研究センターでは北海道大学との共同研究として、北海道・苫小牧の国有林に10mのタワーを設置し、森林の二酸化炭素(CO2)の吸収・放出量の観測を行っています。これまで冬期は電源を止め、観測を中止していたのですが、今年から冬も含めた通年観測を始めました。そのため、冬期においてもタワーに登り、観測機器のメンテナンスを行う必要が出てきました。通常であれば、冬の北海道は雪が降り、タワーの上はとても寒いものです。しかし、今年はいつもの年と様子が違いました。この日はタワーの上で作業をしていると雪の代わりに雨が降ってきたのです。
今年の北海道は冬の平均気温が平年を1.3度上回り、1946年の統計開始以来、5番目に高い暖冬だったそうです。2月にもかかわらず、最高気温がプラスになる日が道内のあちこちで見られ、人々の生活、農作物に影響を与えています。例えば、春物のコートや靴の売り上げが通常年より多いそうです。また、通常は雪の下で貯蔵されているキャベツが、暖冬で積雪が少ないため、夜間に葉が凍害にあったりしているそうです。この暖冬が地球温暖化によるものとは断定できませんが、冬から春にかけての高温は植物の展葉を早め、二酸化炭素の吸収・放出量にも大きな影響を与えると考えられます。この暖冬が平年とどのように異なる影響を生態系に及ぼしているのかを科学的に調査するためにも地道な連続観測が必要なのです。

苫小牧フラックスリサーチサイトのタワー上での作業風景