CGERリポート

CGER'S SUPERCOMPUTER MONOGRAPH REPORT Vol.27 Numerical studies on the variety of climates of exoplanets using idealistic configurations 理想的設定を用いた系外惑星気候の多様性に関する数値的研究

CGER-I153-2021 coverPDF, 3.8 MB

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本モノグラフは執筆者の研究グループがこれまでにおこなってきた、太陽定数の値と入射太陽放射の水平分布を変更した場合に現れる気候の多様性に関する数値的研究をまとめたものである。その目的は海洋の消失など気候の質的な変化をもたらすメカニズムに関する考察を行なうことにあり、地球環境研究センター(CGER)のスーパーコンピュータを用いて以下に述べる2つの研究を行った。

1つめの研究は, 気候の太陽定数依存性の調査である。灰色放射スキーム、水惑星設定、表面アルベド一定、雲なしの仮定を用いた大気大循環モデル(GCM)によって数値実験を行った。その結果、惑星表面が球面である効果と大気循環を考慮した3次元系においても、鉛直1次元系と同様に、外向き長波放射(OLR)には上限値が存在することが示された。そのOLR上限値は、相対湿度を考慮した1次元放射対流平衡モデルで得られる射出限界に対応するものとなっていた(図1)。3次元系においては、入射放射フラックスの全球平均値がOLR上限値を超えると暴走温室状態が発生する。

図1 太陽定数変更実験の結果.表面温度(K)とOLR (W m-2)の関係を示す。曲線は1次元モデルの結果を、記号はGCMの結果を示す。白丸(〇)とバツ印(×)はそれぞれ、平衡状態が得られた場合の結果と暴走温室状態が発生した場合の結果を示す。GCM実験において暴走温室状態が発生する入射量閾値は60%の相対湿度を与えた1次元モデルで得られるOLR上限値に対応するものとなっている。詳しくは本モノグラフの3章に記載されている。

もう1つの研究は、同期回転惑星の気候の調査である。同期回転惑星は、固定された昼半球と夜半球という特異な入射太陽放射分布をもつ惑星である。灰色放射スキーム、水惑星設定、雲なしの仮定を用いた大気大循環モデル(GCM)によって、太陽定数を地球の値に固定して自転角速度を0から地球の値まで変更した数値実験を行った。すべての実験において統計的平衡状態が得られ、暴走温室状態が発生することはなかった。得られた循環パターンは以下の4つのタイプに分類される(図2)。

Type-I: 昼夜間の直接的な熱循環によって特徴づけられる。
Type-II: 東西波数1をもつ共鳴ロスビー波と赤道域の緯度幅の広い西風ジェットによって特徴づけられる。
Type-III: 長い時間スケールをもつ南北非対称的な変動によって特徴づけられる。
Type-IV: 南北半球の中緯度西風ジェットによって特徴づけられる。

循環パターンが異なるにもかかわらず、昼半球から夜半球へのエネルギー輸送量は自転角速度にほとんど依存しないこともわかった。その理由は, 昼半球の広い範囲において外向き長波放射は射出限界によって制限されるため、昼夜半球間の熱輸送量は入射放射量と射出限界の差によって決定されてしまうためである。

図2 同期回転惑星の気候に関する数値実験で得られた結果、4種の自転角速度で得られた表面温度分布を示す。Ω*は地球の値で規格化した自転角速度である。Ω*の値に応じて異なる4種の気候状態が得られた。詳しくは本モノグラフの4章に記載されている。

上記の2つの研究結果で共通するものは気候状態の決定に対するOLRの上限値の重要性である。非灰色放射スキームを用いたGCMによる予備実験においても、やはりOLR上限値が存在することが示されている。これらの研究によって, 気候の多様性を考察するための基礎概念の1つが得られたといえるだろう。