研究を行動へとつなげるために —エコライフ・フェア2019に参加しました—
エコライフ・フェア2019が2019年6月1日(土)と2日(日)に東京・代々木公園で開催され、国立環境研究所(以下、国環研)からは、気候変動適応センターと地球環境研究センターが参加しました。今年はメインステージでの催しやワークショップのほかに、環境省や関係機関、企業、NGOなど約60の出展がありました。2日間で35,618人もの来場者があったそうです(エコライフ・フェア運営事務局発表)。国環研の催しを中心に、その様子をご紹介します。
今年のテーマは「「気づき」から「行動へ」〜地球の未来のために」
エコライフ・フェア2019のテーマは「「気づき」から「行動へ」」。気候変動適応センターは気候変動の影響によって生じる新たな被害や災害に備えるための具体的な「適応」策を紹介し、地球環境研究センターは、パリ協定やIPCCの1.5°C特別報告書に基づき、気候変動に対するより踏み込んだ対策を求める学生たちの運動を取り上げました。

まず「適応」について知ってもらうところから
今まで気候変動への対策は、温室効果ガスを削減するための「緩和策」が主でした。しかし、具体的な影響が顕在化しつつある状況では、「緩和策」のみならず、たとえば水害や旱魃のように、気候変動の影響によって生じる被害や災害に備える「適応策」も重要です。気候変動適応センターは、具体的な適応策の例を紹介しながら来場者アンケートを行い、さらに身近な適応を紹介した「オリジナルミニ絵巻」を作ってもらうワークショップを実施しました。このアンケートに答えてくれた方には、エコバッグを差し上げました。



気候変動とたたかう若者たち
地球環境研究センターは、いまや世界的規模で広まりつつある、気候変動に対するスクールストライキを取り上げました。2018年8月、一人のスウェーデンの学生が始めた国会前での抗議運動(スクールストライキ)は、またたくうちに全世界へと広がりました。彼らは、将来世代である自分たちが気候変動に取り組む年齢となるまでに取り返しが付かない状況にならないよう、より効果的な対策を迅速に打つこと、そして、パリ協定の1.5°C目標が守られることを、強く訴えています。エコライフ・フェア2019直前の5月24日に行われたグローバルストライキでは、全世界で125カ国、180万人以上の学生たちがストライキに参加したといわれています。地球環境研究センターはこの活動を取り上げ、温暖化の具体的な影響、必要な温室効果ガスの削減量、そして削減の可能性などについて、ポスター展示を行いました。また、2日の10:40〜11:40には、日本でスクールストライキを主導している大学生3人と江守正多副センター長との対話イベント「地球温暖化とたたかう若者たち—スクールストライキを知っていますか」も実施しました。


対話イベントで将来世代の率直な意見を聞く
対話イベント「地球温暖化とたたかう若者たち—スクールストライキを知っていますか」では、東京でのストライキにこれまで参加してきた3人が、行動を起こすに至った思いや、運動を通じて訴えたいことについて率直に語りました。参加するきっかけは、もともと環境問題に強い関心を持っていた人から、ストライキの事を知って興味をひかれた人まで三人三様ですが、気候変動に対して強い危機感を持っているというのはみな同じ。ただ、気持ちを押し付けても周りの人を逆に遠ざけてしまうと、危機を訴えることの難しさも感じているようでした。イベント終盤、聴講していた若者の一人が、「環境に興味のない若者が大多数だが、どう(行動への)きっかけを与えられるか」と質問しました。これに対して、彼らから発せられたキーワードの一つは “楽しい” でした。デモやストライキへのアレルギーが強い日本では、参加しようとする若者の数は決して多くありません。しかし、行動へ一歩踏み出してみると「色々な人と出会え、人生が豊かになり、自分を高められる」とその楽しさを語り、気軽な気持ちで参加してほしいと同世代に呼び掛けていました。


最後に
エコライフ・フェア2019は曇りがちながらまずますのお天気で、多くの来場者に研究所の活動を知っていただくよい機会となったのではないかと思います。今回作ったポスターは、さまざまな情報がうまくまとまっていたためか、スマホで撮影していく来場者もいました。また、テントの内外で、第一線の研究者が来場者と熱心に語りあう姿が何度も見られました。今はさまざまなメディアを通じて、多種多様な情報があふれている時代ですが、そのなかで、より多くの方々に研究成果を広く理解していただき、今後の社会形成へと活かすためには、どのようなコミュニケーションが、より効果的なのか、常に考えながら行動していければと考えております。

