一方、雲フィードバックについて理解を深めたい場合は、より簡便な設定のシミュレーションが適しています。例えば、大気中のCO2濃度を瞬間的に4倍に増加させた後、濃度を一定のまま150年のあいだ維持する設定でシミュレーションを実施します。すると、CO2濃度の増加により温室効果が強まり、気候が温暖化する様子がシミュレートされます。温暖化は雲の変化を引き起こし、雲フィードバックを発生させます。具体的には、雲の変化により地球から宇宙へ正味で出て行くエネルギー量が変化します。 雲は、太陽から地球へ入射する短波放射を反射したり、地表からの上向き長波放射を吸収して雲の温度に応じた長波放射を射出したりする働きがあります。このため、雲が変化すれば宇宙へ出て行くエネルギー量(放射量)が影響を受ける訳です。出て行くエネルギー量が仮に多くなれば、地球を冷やす効果が強まるため気温上昇は抑制されますし、逆に少なくなれば気温上昇は促進されます。 このようなエネルギー量の変化がどれほどの大きさかを算出し、雲フィードバックの値とします。雲フィードバックの算出を複数のモデルについて行い、その結果がモデル間でばらつく幅を測れば、雲フィードバックの不確実性を定量化したことになります。これが、CFMIPの目指す目標の第1段階といえます。 雲フィードバックの不確実性を定量化した後、次に課題となるのは、その不確実性がどのような仕組みで生じているのか理解することです。そのために必要な情報も、MIPから得ることができます。 まず、CO2濃度を4倍に増加させるシミュレーションの結果からは雲フィードバックの値だけでなく、それを生じさせる雲の分布や性質についても情報が得られます。雲には様々な種類があり、分布する高さや雲を構成する水/氷の質量、粒子の大きさなどにより性質が異なります。そして、どの種類の雲がどのように変化するかによって雲フィードバックは大きく変わるのです。例えば、下層雲の面積が変化しているのであれば、雲が短波放射の反射を通して地表を冷やす効果が大きく変わり、上層雲の高さが変化しているのであれば、雲が長波放射の吸収・射出を通して地表を暖める効果が大きく変わります。 さらに、シミュレーションの結果からは、雲の分布や性質に影響を及ぼす
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