るモデルが存在し得ます。複数の異なるモデルを用いて同じ条件の計算を行った場合、結果はモデル間で一致せず、ある程度のばらつき(不確実性)が生じてしまいます。従って、モデル間で計算結果を比較することが重要となります。その役割を担うのがモデル間相互比較プロジェクト(Model Intercomparison Project)です。英語の名称を略してMIP(ミップ)とも呼ばれます。 MIPとは具体的に何をするものか、筆者が参加しているCFMIP(Cloud Feedback MIP)を例にとってご紹介します。CFMIPとは雲フィードバックモデル相互比較プロジェクトの略称で、その名の通り、雲フィードバックという量を気候モデル間で相互比較することを主な目的としています。雲フィードバックとは、地表気温の変化が雲の変化を引き起こし、それがまた地表気温の変化を促進または抑制する働きを指します。 なぜ、雲フィードバックをモデル間で相互比較することになったか、背景を説明します。複数の気候モデルを用いて将来予測シミュレーションを行うと、気温上昇が大きいモデルと小さいモデルに分かれます。モデル間の違いがどのようにして生じるのか調べたところ、各モデルのシミュレーションの中で雲フィードバックが生じており、その強さが気温上昇の大小に影響していることがわかってきました。つまり、雲フィードバックが正(負)に大きいモデルほど気温上昇が大きい(小さい)傾向が見られました。従って、将来予測の気温上昇の大きさがモデル間でばらつく原因を理解するには、雲フィードバックのモデル間のばらつきを把握することが鍵となります。 なお、将来予測シミュレーションにおいては現実をできるだけ忠実に模倣する必要があるため、シミュレーションの設定はかなり複雑になります。例えば、温室効果気体の濃度や大気汚染物質の排出量、さらに地表面の土地利用の状態が時間と共に変化する様子を設定として与えて、気候の変化をシミュレートします。このため、シミュレートされた気候の変化は様々な要因の影響を反映したものとなります。現実的ではありますが複雑でもあるため、結果を理解する際の難易度は高くなります。02モデル間相互比較プロジェクト(MIP)は何を目指すか
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