CGER-I163-2023_計算で挑む環境研究
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※2 Ito, A. ほか (2017) Photosynthetic productivity and its efficiencies in ISIMIP2a biome models: benchmarking for impact assessment studies. Environmental Research Letters, 12, 085001. https://doi.org/10.1088/1748-9326/aa7a19※3 Ito, A., Nishina, K. and Noda, H.M. (2016) Evaluation of global warming impacts on the carbon budget of terrestrial ecosystems in monsoon Asia: a multi-model analysis. Ecological Research, 31, 459–474.響要因を考慮したシミュレーションを行ったところ、観測と整合するようなCO2吸収が再現されています。 モデルを使う利点の一つは、観測が少なかった過去にまで時間を逆戻りでき、吸収が起きていた場所や原因もある程度まで絞り込めるところです。例えば図2(左)は、生態系がCO2を固定するメカニズムである光合成が、地球のどの場所でどのくらい起こっているかをモデルで推定した例です。大気中のCO2濃度増加や気候変動によって、この光合成は徐々に増加しており、陸域へのCO2吸収の一因になっていると考えられています。図2:生態系モデルで推定された陸域における光合成の分布(左:Itoほか 2017※2より)とグローバル合計の予測シミュレーション例(右:Itoほか 2016※3より)。予測の幅は生態系のモデルや気候シナリオの違いによるもの。 もう一つの重要なモデルの役割は、将来を予測することです。もちろん何年も先をピタリと予測することは困難ですので、不確かさを踏まえた上で、おおよその傾向を把握することが目的です。例えば、地球の温度上昇がこのままのペースで続いた場合と、(パリ協定などの)温暖化対策を積極的に進めて温度上昇を抑えた場合で、生態系に生じる変化がどの程度ちがうか、など

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