News Archives [20021206]
2002年CGERフラックスリサーチミーティング開催報告

ミーティング風景1  2002年11月14日から16日にかけて、北海道大学百年記念会館において2002年CGERフラックスリサーチミーティングを開催しました。本ミーティングは、地球環境研究 センターが2000年夏から観測を開始している苫小牧フラックスリサーチサイト(以下苫小牧サイト)の研究成果が徐々に蓄積されてきたことから、苫小牧サイトに関わ る研究者や関係者相互の情報交換や相互理解を深めることを目的とし、同時に国内のガスフラックス観測研究に係わる技術的側面の検討や最新動向等のレビューを通し て、広くフラックス観測研究に携わる研究者相互の情報交換を図ることを目的に開催されました。

 11月14日(1日目)午後、準備していた100脚の椅子は全て人で埋まり、立ち見もままならないほどの混雑ぶりの中、「フラックスの長期観測とデータ利用」というテー マで特別セッションを開始しました。講演者は、原薗芳信氏(アラスカ大)、宮田明氏(農環研)、渡辺力氏(森林総研)、岡田啓嗣氏(北大)、宮崎真氏(東大)、 小熊宏之氏(国環研)の計6名で、微気象観測・解析からリモートセンシングを用いたフラックス推定まで、幅広い講演が行われました。その後に行われた立食形式のポ スターセッションには、国内のガスフラックス観測関係者に幅広くアナウンスしたこともあり、計68課題のポスター発表が集まりました。発表内容は、微気象学的なガス フラックス観測研究が中心に、森林生態学、リモートセンシング等、広範囲なものでした。また、異なる観測拠点で観測研究を行っている、これだけ多くの研究者・関係 者が一堂に会して議論すること自体珍しく、情報交換や今後の研究連携など、直接研究内容に関わらないことを含めて様々なことが話されていました。

ミーティング風景2  11月15日(2日目)は、苫小牧サイトの観測研究成果の口頭発表が行われました。苫小牧サイトでは現在30の課題に50名以上の研究者や学生が関わって観測研究が進め られていますが、ほとんど全ての課題を、苫小牧サイト関係者以外の人と議論することは初めてで、様々な意見が飛び出しました。午前中前半は、主に森林生態学分野と 土壌中の炭素動態に関する課題の研究発表でした。苫小牧サイトは平成15年度の冬に定性間伐が予定されており、あと1年以内に間伐前の森林・土壌の状態把握が必要です。 議論は、調査手法も含め活発に行われました。 午前中後半は、二酸化炭素フラックスに関する研究発表でした。特に活発な議論の対象となったのは、観測の際の精度を どう評価維持するか、また解析の際に生じる欠測やノイズの問題をどう解決するかという問題でした。この研究分野はまだ発展途上であるため、精度の問題は常に議論の 的となり、地球環境研究センターに事務局を設置しているアジア地域のフラックス観測ネットワーク "AsiaFlux"でも、メーリングリストによる情報発信やマニュアル発行 などを通じて、精度管理に関する更なる意見交換が必要であると考えています。今後は、測定機器、観測手法、解析方法を一体として精度管理するための検討が必要です。 午後は、同位体測定や大気汚染物質、リモートセンシングなど、上記のカテゴリーに当てはまらない課題の研究発表が行われました。 苫小牧フラックスリサーチサイト見学風景1

 11月16日(3日目)は、苫小牧サイト見学が行われ、約20名の方が参加されました。苫小牧サイトは、周囲が非常に平坦である上に均一なカラマツ人工林 が広がっており、ガスフラックス観測をはじめとする物質・熱循環の評価を行うには絶好の条件です。また、毎年研究課題を国内に広く公募し、同じ現象を様々なアプローチによって 評価検討を行っています。見学者からは、前日までの発表に関する質問や来年の研究課題に関するアイデアが聞かれました。 苫小牧フラックスリサーチサイト見学風景2

 今回のミーティングでは、国内のガスフラックス研究者が参集して活発な意見交換が行われ、大成功でした。通常の学会などでは、各分野での議論は活発に行われますが、 今回のように広い分野の研究者が集まり、お互いの観測研究の進捗状況を把握、議論することはあまりありません。地球環境研究センターでは、ガスフラックス観測研究 を含む炭素循環について、今回のような有意義なミーティングを定期的に持ちたいと考えています。

 最後にはなりますが、会場準備等に御協力頂きました北海道大学大学院農学研究科の平野高司助教授をはじめ、ご協力、ご参加頂きました皆様に、この場をお借りして 厚く御礼を申し上げます。