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自転車発電に挑戦する! |
この後、子供たちは落石岬のゲートまでバスで移動し、そこから植物の自然観察会を行いながらモニタリングステーションまで歩いてやってきた。前日の雨のため、ぬかるみが多く長靴を履いてのハイキングとなったが、歩き慣れているせいか、あっという間に到着した。
今回の学習項目は、1)二酸化炭素とは何かということ、2)電気エネルギーについて考えよう、という項目である。
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DVDが何分見えるかな? |
小学生としては、二酸化炭素と言われてもその正体が分かっているわけではないので、もっと身近に実感してもらう必要がある。そこで、二酸化炭素の測定装置を少し動かし、ろうそくをビーカー内で燃やしてできたガスや自分の息などから二酸化炭素を測定した。測定すると、記録器のペンが大きく動くことで、それがわかるようになっている。炭酸飲料の泡や植物を入れて光を当てないガラス瓶の中の二酸化炭素濃度は高くなることが知られているけれども、海の水にも二酸化炭素が溶けていることは、普段あまり実感することができない。実は、海水100mlに気体の体積で約5mlの二酸化炭素が溶け込んでいるので、レモン水のような酸によって二酸化炭素を気体として追い出してあげると、測定装置で測定することができる。さらに、地球環境研究センターのもう一箇所の観測所である沖縄の波照間島にあるニシハマの砂に、同じようにレモンのような酸をかけるとどのようになるかを子供たちに見せた。ニシハマの砂は、そのほとんどが珊瑚のかけらや小さなプランクトンの貝殻であり、北海道の浜の砂とは異なっている。珊瑚のかけらは炭酸カルシウムというものでできており、酸をかけるとぶくぶくと二酸化炭素を出して溶けてしまう。二酸化炭素が増加していくと海洋も酸性化して、海の生物にも悪い影響が出ると予想されている。
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5,6年生の皆さんと先生方 |
次に学んでもらったのは、普段使っている電気エネルギーというものである。今回は、自転車で家庭用の100V の電気が発電できる装置を用いた。これはもともと研究所の一般公開の時、エネルギーの大きさを子供たちに身を持って感じてもらうために軽自動車の発電機を使って試作したもので、普段は地球環境研究センターの玄関ホールに置いてある。(今回、自転車は根室支庁の田森さんにお借りした。)人間が動いている時のエネルギーは平均すると100Wに相当する。自分自身が100Wの割には、それ以上のエネルギーを家庭において使っていることがわかる。平均すると日本では1世帯あたりの電気使用量が一日約10kW時で、これは400Wの電気製品を24時間つけたままであることに等しい。つまりこれは4人の人間を各家庭で一日中、休みなく働かせていると考えればよいかもしれない。
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また来てくれるかな? |
さて、この自転車発電機を使うとどれぐらいの電気製品を動かすことができ、それがどれくらい大変なのかを一人一人やってもらった。今回持参したのは、CDラジカセ、蛍光灯の電気スタンド、液晶テレビ、小さい扇風機、ブラウン管テレビである。一番大変な仕事となるのは、ブラウン管テレビをつけることであるが、実はこの観測所、あまり電波が届いていないらしく、アンテナをおかないとテレビが映らないことがわかったのでやめることにした(北海道は広い)。子供たちは、本当にラジカセから音が鳴るのか?と不思議そうであった。ラジカセの音は大きいが、実は5W位であり、子供でも簡単に作り出せるエネルギーである。電気スタンド約15Wも、多くの子供たちが簡単に点けることができた。一度できるとどんどん挑戦したくなるのが人の常である。液晶テレビは漫画(DVD)を映し出せるようにしてあったので、どのくらいの時間テレビをつけられるか、DVDを見ることができるかを測ることにした。子供たちは長靴を履いており結構漕ぎにくい。体の大きさも違ったり、自転車を普段乗り慣れているかということもあって、難しいのではないかと思ったが、それでも30秒間位までは液晶テレビ(30W)をつける子供もいたりして、なかなか健脚の持ち主が多かった。それぞれがエネルギーを作り出し、うまくテレビがつくと拍手が湧き起こり、励まし合いながら皆がんばってくれて、時間がある限り何回も挑戦してくれた。 |