2009年 年頭のご挨拶

地球環境研究センター長 笹野 泰弘

地球環境研究センター長
笹野 泰弘

皆様、あけましておめでとうございます。

昨年(2008年)を振り返ってみますと、まず京都議定書の第一約束期間に入りました。いよいよ、日本は温室効果ガス排出量を1990年比で6%削減することが求められます。7月に開催された洞爺湖G8サミットにおいては、2050年までに世界全体の排出量の少なくとも50%削減を達成する目標を、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)のすべての締約国と共有し、採択することを求めることが合意されました。また中期目標として、全ての先進国間で排出量の絶対的削減を達成するため、野心的な中期の国別総量目標を実施することで合意しました。しかしながら、昨年12月にポーランドで開催された締約国会議(COP14)では、こうした合意の具体的な動きは必ずしも十分なものではありませんでした。

今年(2009年)は、日本政府は温室効果ガス削減に関する中期目標を公表することとしています。また、京都議定書の第一約束期間が終わる2013年以降の国際的な制度に関して、12月に予定されているCOP15に向けての国際的な交渉・調整が進められます。今年は、日本の、そして世界の気候政策の進展にとって、特に重要な一年になるものと考えられます。

こうした気候政策の立案の基礎として、科学研究の役割は非常に大きいものがあります。地球環境研究センターでは、地球環境に関する各種のモニタリング事業、データベース事業を進めると同時に、地球温暖化研究プログラムとして、炭素循環に関する観測的研究、人工衛星を利用した炭素循環の観測プロジェクト、将来の気候変化と影響・リスク評価、ビジョン・シナリオ研究など、内外の多くの研究機関・研究者の協力を頂きながら、多様なプロジェクト研究を展開しています。また、地球温暖化観測推進事務局/環境省・気象庁、グローバルカーボンプロジェクトつくば国際オフィス、温室効果ガスインベントリオフィスなどの事業を通じて、国内外の温暖化研究の結節点としての役割を、引き続き果たします。そして、研究の成果は学術論文として科学コミュニティに積極的に発信すると同時に、政策担当者や国民の皆様に、科学の意味するところを分かりやすい形で伝えていくことも、私たちの重要な仕事のひとつであると考えています。

ところで、この1月に、環境省・宇宙航空研究開発機構との共同事業である人工衛星「いぶき」による二酸化炭素等の観測プロジェクト (GOSATプロジェクト)において、いよいよ衛星の打ち上げを迎えます。地球環境研究センターではこれまで、衛星で取得されるデータ処理運用システムの開発を手がけてきました。衛星打ち上げ後は、同システムの運用、データプロダクトの検証、データ配布を担当します。また、データを利用した研究を推進します。「いぶき」による観測データは、二酸化炭素などの温室効果ガスの全球的な分布やその季節的な変動を捉え、さらに、世界の地域毎の二酸化炭素の吸収排出(フラックス)の状況を推定するなど、衛星観測ならではの情報を提供してくれるものと期待されます。

私たちは、国民の皆様の期待に応えるべく使命の遂行に邁進します。どうぞ、ご支援下さい。