国立環境研究所では、毎年6月の環境月間に合わせて、研究で得られた最新の知見を広く一般の方に知っていただくために、講演とポスターセッションで構成する「公開シンポジウム」を開催しています。今年は6月15日に神戸(神戸新聞松方ホール)、22日には東京(メルパルクホール)で、「水から考える環境のこれから」をテーマに開催しました。地球環境研究センターからは、塩竈秀夫主任研究員が「地球温暖化と『水』」と題する講演を行いました(講演概要は、後日地球環境研究センターニュースに掲載)。また、研究を紹介する3件のポスター発表を行いました。
講演開始前と終了後に設けられたポスターセッションでは、多くの方が研究者の説明を聞き、質問や議論をしてくださいました。
ポスターセッション会場の一角で、温室効果ガス観測技術衛星「いぶき(GOSAT)」が観測したデータをもとに推計した2009年6月から2015年10月までの世界の二酸化炭素濃度の推移を動画で紹介しました。これをご覧になった来場者から「人工衛星からどんな仕組みで二酸化炭素やメタン濃度を観測しているのか」「GOSATの観測の精度はどれくらいなのか」など、さまざまな質問をいただき、セミナー委員でもある野田響主任研究員が丁寧に説明しました。
また、民間航空機による大気観測プロジェクト「CONTRAIL」で、航空機に搭載している二酸化炭素濃度連続測定装置の実物を展示し、どのような仕組みで世界各地での大気観測を実現しているのかをわかりやすく説明しました。ここでも「観測装置のなかの標準ガスの濃度はどれくらいなのか」など、関心度の高い質問をたくさんいただきました。
昨年同様、交流推進係の制作物を紹介するコーナーも設けました。2016年11月に発効され地球温暖化対策の国際的枠組みである「パリ協定」の要点と今後の課題について、研究者が5分程度でわかりやすく解説した動画(http://www.cger.nies.go.jp/ja/cop21/)を紹介しました。現在6話まで公開しているこの解説動画は、9月頃に第7話を公開する予定です。「パリ協定」という言葉は聞いていても内容についてはあまりよく理解していないという来場者もいて、動画による解説は大変有用だと話されていました。また、1990年10月の地球環境研究センター設立当初から発行している「地球環境研究センターニュース」についても最近の内容とともに紹介しました。すでにニュースの読者だという来場者もいらっしゃいました。さらに多くの方に読んでいただけるよう、今後もより一層、記事の充実を図っていきたいと思いました。東京会場では、「ココが知りたい地球温暖化」の53のQ&Aのリーフレットも準備しました。このシリーズは地球環境研究センターのウェブサイト(http://www.cger.nies.go.jp/ja/library/qa/qa_index-j.html)でいまだに多くのアクセスを得ています。公開シンポジウムの参加者も興味のあるテーマのリーフレットを手に取っていました。
ポスターセッションや休憩時には多くの方が展示コーナーを訪れてくれました。GOSATやCONTRAILプロジェクトについては、専門的な質問もあり、来場者の地球環境問題への関心の高さ知ることができました。地球環境研究センターの広報を担当する私たちは、地球環境研究センターの事業内容についてさらに勉強するとともに、研究成果や制作物の効果的な展示方法や紹介の仕方を工夫していく必要があると感じました。
なお、公開シンポジウム2018の発表内容は、後日、国立環境研究所のビデオライブラリー(http://www.nies.go.jp/video_lib/index02.html)に掲載されます。