京都議定書と京都メカニズム

  1997年12月に京都にて開催された国連気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)において、温室効果ガス(GHG)の排出量を削減するために、法的拘束力をもつ数値目標や先進国がとるべき政策措置について取り決めた京都議定書が採択されました。数値目標とは、第一約束期間(2008年~2012年)までに、附属書I国*1全体で1990年レベルのGHG排出量の約5%を削減することであり、EU、米国、日本はそれぞれ8%、7%、6%の削減を約束しました。

 この京都議定書では、国際的に協調して目標を達成するため、共同実施(Joint Implementation: JI、第6条)、クリーン開発メカニズム(Clean Development Mechanism: CDM、第12条)、排出量取引(Emission Trading: ET、第17条)、という3つのメカニズムを導入しています。

 JIは、附属書I国間においてGHG排出削減あるいは吸収強化のための事業を実施することにより生じる排出削減単位(Emissions Reduction Units, ERUs)を、関係国間で移転(または獲得)することを認める制度です。吸収源プロジェクトは、附属書I国が非附属書I国(主に開発途上国)において実施するGHG排出削減事業から生じたと認証された排出削減量(Certified Emission Reductions, CERs)を獲得することを認める制度であり、附属書I国にとっては獲得したCERsを自国の目標達成に利用できるというメリットがあります。また、途上国にとっても投資と技術移転の機会が得られるというメリットがあると考えられます。ETは、京都議定書の附属書B国*2間で排出枠(排出割当量)の一部を移転(あるいは獲得)することを認める制度です。いずれのメカニズムも、地球全体でのGHG排出削減(または吸収強化)の費用対効果を向上させることを目指しているということができます。

*1: 国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の附属書Iに示されている先進国及び経済移行国であり、以下の国々が含まれます。

オーストラリア、オーストリア、ベラルーシ*、ベルギー、ブルガリア*、カナダ、チェッコ・スロバキア*、デンマーク、欧州経済共同体、エストニア*、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー*、アイスランド、アイルランド、イタリア、日本国、ラトヴィア*、リトアニア*、ルクセンブルグ、オランダ、ニュー・ジーランド、ノールウェイ、ポーランド*、ポルトガル、ルーマニア*、ロシア連邦*、スペイン、スウェーデン、スイス、トルコ、ウクライナ*、グレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国、アメリカ合衆国
注)*印は市場経済への移行の過程にある国。太字は、附属書II国。
  UNFCCCの第4条第2項に「附属書Iに掲げる先進締約国その他の締約国(以下「附属書Iの締約国」とします。)は、特に次に定めるところに従って約束する。」とあり、(a)~(g)の7項目に関する約束をすることになっています。なお、附属書II国に関しては、第4条第3項~第5項において、開発途上締約国の義務履行に関する新規かつ追加的な資金供与、気候変動の悪影響を特に受けやすい開発途上締約国の適応の費用負担、及び技術移転等の約束が定められています。

*2: 京都議定書の附属書Bに示されている先進国及び経済移行国であり、以下の国々が含まれます。
オーストラリア(108)、オーストリア(92)、ベルギー(92)、ブルガリア*(92)、カナダ(94)、クロアチア*(95)、チェコ共和国*(92)、デンマーク(92)、エストニア*(92)、フィンランド(92)、フランス(92)、ドイツ(92)、ギリシャ(92)、ハンガリー*(94)、アイスランド(110)、アイルランド(92)、イタリア(92)、日本国(94)、ラトヴィア*(92)、リヒテンシュタイン(92)リトアニア*(92)、ルクセンブルグ(92)、モナコ(92)、オランダ(92)、ニュー・ジーランド(100)、ノールウェイ(101)、ポーランド*(94)、ポルトガル(92)、ルーマニア*(92)、ロシア連邦*(100)、スロバキア(92)、スロベニア*(92)、スペイン(92)、スウェーデン(92)、スイス(92)、ウクライナ*(100)、グレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国(92)、アメリカ合衆国(93)
注)*印は市場経済への移行の過程にある国。()内は、1990年の温室効果ガス排出量を100とした場合の約束期間(2008年~2012年)における温室効果ガス排出量の目標値。
Copyright(C) Center for Global Environmental Research.