CGERリポート

Data Analysis and Graphic Display System for Atmospheric Research Using PC

地球環境研究センターでは地球環境研究を担う所内外の多くの研究者と連携し長期のモニタリングや系統的なデータベースの整備、研究支援ツールの整備を実施してきている。

本システムは、研究支援ツール開発の一環として先に報告した「対流圏モニタリングデータ評価のための 支援システム(CGER-GMET)の開発」(CGER-M013-2002)を更に発展させたもので、1)研究者が自分のPCにインストールし、2)フリーの気象データなど入手しやすいデータセットを用いて、モニタリングデータ解析で不可欠の大気の流れの計算や風ベクトルの表示ができる、3)最近入手可能になった気象庁の予報格子点データ(GPV、日本付近は1度メッシュまであり)をPC用に変換して使える、4)3次元での大気の流れの表示が可能、という特徴を有し極めて汎用性が高い。

本レポート(英文)は、システムの詳細な解説とユーザーズマニュアル(印刷出版物)およびソースコード(pdfのみ)から構成されている。気象データをユーザー側で用意すればどなたにでも利用いただける。

システムの概要

本システムは(1)マイクロソフトWINDOWSR用の気象場の表示とトラジェクトリの算出(Meteorological Data Explorer for WINDOWS)、(2)気象庁で収集・作成され、(財)気象業務支援センターを通じて配信されている気象観測・予報データ(数値予報GPV)をWINDOWSRPC上での取り扱い容易とするための変換、 を骨子としている。特に(1)では従来GMETではできなかった、気象データセットの風速の垂直成分を用いたトラジェクトリ算出や、シグマ座標を用いた計算が可能になった上、個人のPCにインストールして気象データはデータサーバーからその都度読み込む方式をとっているため、ユーザーのPCへの負荷が少ないのが特徴である。

内容

1. 気象データエクスプローラCGER-METEX

トラジェクトリ

【計算方式】大気塊が等温位面に沿って移動すると仮定して算出する等温位法と、大気塊は周囲の風によってのみ移動するとして風速の水平・垂直両成分を使用して(GMETでは垂直成分は使用しない)移動経路を算出する3次元法を利用できる。数値解法としてPetterssen法を用い、積分のタイムステップは風速に連動させ、風速が大きい場合は短くとるよう自動的に調整している。また、地表面の地形が複雑な場合などはシグマ座標系でのトラジェクトリ算出も出来る。可能で現在利用可能な気象データセットは当地球センターで購入しているECMWF(ヨーロッパ中期天候予報センター)の1993.6以降のものである。ただし、購入条件から、所外者は国環研との共同研究の場合に限り利用可能である。

【気象値の補間】トラジェクトリ算出に必要な任意の場所・時刻での気象値は時間及び距離の線形補間で算出する。また、等温位法の場合はGMETと異なり気象値を算出しようとする地点を含む格子についてまず温位面を求める。

【計算結果の表示】計算結果は図2に示すように水平方向の移動経路は球面投影図(上)で、高さ方向の変化はタイムステップごとに通過している陸地の高さ情報とともに表示(下)される。極近傍では水平方向の移動経路を極座標で表示する。部分的な拡大縮小も勿論可能である。

【従来法との比較】GMET及び国環研にあるもう一つのトラジェクトリ計算システム、STRAS(UNIXベース)と比較すると補間方法による算出結果への影響が認められ、どの方式で計算するか、補間方法をよく吟味して選択すべきであろう。

図2 トラジェクトリ算出結果

気象場の表示

図3の上段左に気圧のコンター図、右に風ベクトルと風速のコンター図を示す。また左下には温位を算出してコンター図として表示させたものを、右下には風の垂直成分だけを取り出だしてコンター図として表示した例を示す。

図3 METEXによる気象場の表示
左上ー気圧のコンター図 右上ー風向と風速のコンター図左下ー温位のコンター図 右下ー風の垂直成分のコンター図(いずれも800m)

2. GPV気象予報データ利用のためのツール

(財)気象業務支援センターからオンラインで配信されるGPVデータをデータ取り扱い習熟度の低い一般ユーザーがPC上で利用できることを目的に、全球モデル(GSM)データ、メソ数値予報モデル(MSM)データ及び領域数値予報モデル(RSM)データそれぞれからWINDOWSRーPCで利用できるようデータを抽出し、かつ気象場等の表示を行えるソフトについて、コンセプト及び実施例を紹介。C言語で記述されており当センターホームページからpdfファイルによりソースコードをダウンロード可能。図4にユーザーインターフェースを風ベクトル表示例と共に示す。

図4 GPVデータ表示用インターフェース(表示例は同ベクトル)

【入手方法】

  • ソースコード:METEXおよびGPV利用ツールのソースコードテキストZIP圧縮ファイルとしてダウンロード出来ます。印刷体には含まれていないのでご注意ください。