News Archives [20060818] 2006.08.18
サマー・サイエンスキャンプ2006開催報告
(2006年7月26〜28日開催)

 7月26日から28日の3日間、「富士北麓フラックス観測サイト」(山梨県富士吉田市)において、サマー・サイエンスキャンプ2006を実施しました。

 サマー・サイエンスキャンプは、全国の高校生、高専生を対象とした体験学習プログラムであり、科学技術への関心を高め、創造性豊かな青少年を育成することを目的とし、独立行政法人科学技術振興機構が主催しています。全国の公的試験研究機関等が受け入れ先となり、夏休み期間に毎年開催されています。

 国立環境研究所は1999年より受け入れ機関になっており、地球環境研究センターでは、所外フィールド観測施設における合宿形式により、このプログラムを実施してきました。今回は本年1月に観測を開始したばかりの「富士北麓フラックス観測サイト」で「森林の中で地球温暖化を考えよう」をテーマに開催しました。なお、つくばキャンパスでも「生物の力による環境浄化」をテーマに2つのキャンププログラムが実施されました。1999年に地球環境研究センターが先頭を切って実施したサイエンスキャンプは、今や研究所全体で対応するまでになりました。

 当観測サイトは、地球温暖化の原因となる二酸化炭素の収支をはじめとする森林生態系の様々な機能について総合観測研究を行う施設ですが、全国から集まった高校生8名が参加し、実際にどのようにして観測を行っているかを体験してもらいました。

 まず、森林の中にそびえ立つ高さ30メートルの観測タワーに登り、観測の目的と観測対象について説明を行いました。地球規模での二酸化炭素の動き(炭素循環)を理解するためには、森林生態系の役割を定量的に評価することが必要ですが、大気−森林−土壌間の二酸化炭素の収支を連続的に観測する必要性について理解を深めてくれたのではないかと思います。

 実習では「アルカリ吸収法による土壌呼吸の測定」と「半葉法による光合成の測定」を行いました。

 土壌呼吸速度の測定は、林床に二酸化炭素吸収剤が入った容器を設置し、箱(チャンバー)をかぶせた後、重量増加を測定する方法で行いました。測定値から土壌呼吸速度を算出する際は苦労していたようですが、最新の観測機器で測定した結果とほぼ同じ測定値を得ました。思うような結果が出なかったグループもなぜそうなったかについての考察を行い、実験を行う上で必要な目を養いました。

 植物の光合成速度の測定は、一定時間での葉の重さ(単位面積当たり重量)の増加量を測るという方法で行いました。実験器具は三角フラスコや針金等の比較的身近な物を組み合わせたもので、これに限らず研究者が普段調査する際に使用する機器についても、自分たちで工夫して作ったりすることに驚いていたようです。

 その他、リモートセンシングによる森林機能の計測や、国立環境研究所の重点研究の概要についての講義を行ったほか、隣接する環境省生物多様性センターを訪問し、生物多様性の保全についての説明を受けました。

 私たちにとっても非常に有意義だったのは、キャンプ参加者から寄せられた疑問、意見が新鮮かつ鋭い視点を含んでいたということです。結論の出ない議論もありましたが、今回のサイエンスキャンプで学んだ知識や自分とは違う考え方に出会い、その場にいた全員が「環境」について再考できたのではないかと思います。

 参加者の皆さんが、単に知識を持ち帰っただけでなく、環境問題を見る目、考える力を養って帰ってくれたと期待しています。

 今回のキャンプは2日間にわたり読売新聞科学部の取材を受け、8月10日朝刊(全国版)に紹介されました。研究所のアウトリーチ活動はますます重要になり、世の中の注目度も高まっています。特に将来を担う若い世代には、環境問題について関心を深めてもらうとともに、環境の研究の意義を理解していただかなければなりません。キャンプ参加者の意見も踏まえ、このプログラムがさらに充実したものとなるよう、私たちも努力していく必要があります。

参加者(敬称略)
岡崎 宏軌 (千葉・木更津工業高等専門学校) 木山加奈子 (東京・町田高等学校)
速見 友里 (神奈川・神奈川学園高等学校) 曽 弘博  (神奈川・開成高等学校)
両角 友喜 (長野・諏訪清陵高等学校) 

田中有紀子 (茨城・竹園高等学校)

佐伯 直也 (広島・西条農業高等学校)

松崎佐由理 (高知・安芸高等学校)

サイエンスキャンプ
サイエンスキャンプ風景
サイエンスキャンプ
サイエンスキャンプ
サイエンスキャンプ
サイエンスキャンプ参加者