今年の観測ステーションでの出し物は、身近な二酸化炭素を測定しようというものである。一般に二酸化炭素といっても見えるわけではないので、どうも実感がわかないため、二酸化炭素測定器を持ち込んで実験を行った。身の回りの二酸化炭素発生源はどういうものがあるかと言う質問をしたところ、“息”や“車”などの答えが返ってきた。物が燃えて二酸化炭素が出ることについて、蓋をしたビーカーの中でろうそくを燃やし、その空気を測定して示した。次に自分の息で二酸化炭素が出ていることを実感してもらうため、一人一人にビニール袋を渡して息を吹き込んでもらった。このビニールの中の空気を測定器にかけると、皆の息もろうそくと同じ様に測定器の針が振れ、呼吸によって二酸化炭素が出ていることがわかった。下の図がその11人の記録である。さて、人間の呼吸の二酸化炭素は悪くないのに、ろうそくの二酸化炭素はなぜ悪いのだろうかという質問がこの実験から派生してくることになる。この問いは実に人間の存在意義すら危うくする哲学的な問いであり、その答えをすっきりと説明することはかなり難しい。皮相的に言えることは、人間は食物連鎖の頂点?にいて、もともと光合成で生産された食料、つまり光合成によって一度大気から集めた二酸化炭素が元になっているということであり、それを大気に戻しても、差し引きはゼロになるという説明である(しかし実際は、食料を作るために余計なエネルギーを使うため、それほど簡単ではない)。
大気の二酸化炭素は植物が吸収する以外に、他に何が吸収するかという問題をだしてみた時、5年生の一人が「海」と答えたのにはびっくりした。漁をやっている家庭が多いので、生活の中で海に親しんでいるためだろうと思われる。そこで実験では海水が二酸化炭素を溶かしていることを、酸を加えて二酸化炭素を追い出して測定してみた。さらに、呼気中の二酸化炭素を海水に溶け込ませて、そのpHが変化することを指示薬で見せた。大気中の二酸化炭素の増加に伴って、海水中の二酸化炭素濃度が上昇し、その結果海水のpHが下がることは予想されており、それによる海洋生物に対する影響も心配である。
光をあてた植物で二酸化炭素を測定すると、唯一測定器の針が逆側に動くことが見られ、二酸化炭素が吸収されていると実感される。このほか、身近にある物で、二酸化炭素を出しそうなものをいくつか用意し、クイズ形式で実験をした(この風景はさながら何かの実演販売みたいである)。