ニュース

Global Carbon Budget 2019に関するセミナーを開催しました 研究者からの報告とパネルディスカッション

12月4日、グローバルカーボンプロジェクト(GCP)は、Global Carbon Budget (GCB)*1 2019から、2019年の世界の二酸化炭素(CO2)排出量について、前年比で約0.6%の増加となる見込みであることを発表しました(世界のCO2排出量は3年連続で増加するも、増加率は低下の見通し〜国際共同研究(グローバルカーボンプロジェクト)による評価〜。12月9日に、GCPつくば国際オフィスと国立環境研究所地球環境研究センターの主催により標記セミナーが開催され、報告書に携わった日本の研究者たちが報告書の内容およびそれぞれの研究について説明を行い、本報告書とその意義について学び、議論を行いました。

GCPつくば国際オフィスJittrapirom事務局長の挨拶のあと、山形与志樹代表からGCB 2019の3つの重要なポイントについて、以下のように説明がありました。

  • 2019年の世界全体のCO2排出量は前年より0.6%増加しているが、増加率は低下している
  • 石炭からの排出量は欧米で10%以上減少しているが、化石燃料利用による排出量は増え続けている
  • 2020年から世界全体の排出量減少を達成するには、対策強化による低炭素社会への転換が必要である

続いて、報告書に携わった4人の研究者から講演がありました。

国立環境研究所の中岡慎一郎主任研究員からは、地球環境モニタリング事業の一環として行っている太平洋域の洋上大気の温室効果ガスと海洋表層のCO2の観測について紹介がありました。太平洋域を運航している貨物船の協力により1995年から開始された観測は現在も継続しており、最新の高精度データをGCPに提供することで報告書に掲載された海洋のCO2吸収量評価に貢献していると説明しました。

エネルギー総合工学研究所の加藤悦史氏は、大気と陸域生態系の間のCO2収支の把握のためにGCB 2019が行っている検証方法の一つであるボトムアップ推計として、自身がかかわっている陸域生態系モデルを利用したボトムアップによる検討を紹介しました。

海洋研究開発機構のNaveen Chandra氏はMIROC-ACTM逆モデルによる陸上・海上の地域別フラックス推計値を提供することで、GCPに貢献していると解説しました。また、CONTRAILプロジェクト*2による観測で、東南アジア地域のCO2フラックスの年々変動の理解が進んだと述べました。

水産研究・教育機構の小埜恒夫氏は2011年から日本近海で行っている経常的なCO2モニタリング(2014年以降は環境省地球環境保全試験研究費の課題として、国立環境研と共同で観測を実施)の結果を紹介しました。

講演のあとファシリテーターにJittrapirom事務局長、山形代表と4人の講演者がパネリストとなり、パネルディスカッションと参加者との質疑応答か行われました。パネリストからはGCBへの貢献が研究のモチベーションになっているとの意見がありました。

左から:山形代表、中岡主任研究員、加藤氏、Chandra氏、小埜氏、Jittrapirom事務局長。