「お〜!」、小ビン内の海水が青から黄色に変わることに歓声を上げる北海道の子どもたち。この素直な反応に、周りの大人にも笑顔が浮かびました。
今年も北海道根室振興局・根室市の主催による小学生を対象にした環境学習会(エコスクール)が6月16日に開催されました。国立環境研究所地球環境研究センターは根室振興局の要請により、地元貢献の一環として1998年よりこの学習会に参画しています。おもな対象は落石および落石近傍地区の小学校5、6年生で、根室市立の落石小学校と、昆布盛小学校および海星小学校にて、交互に開催されてきました(昆布盛小学校は今年度から落石小学校に統合)。今回は、落石小学校の5、6年生10人が参加しました。
エコスクールは落石ステーションの見学から始まります。ステーションへは落石岬入り口のゲートから2kmほど歩かなくてはなりません。前日の準備の時には小雨のような濃霧で心配したのですが(写真1)、エコスクール当日は6月としては暖かく、天気にも恵まれたので、その行程も遠足気分で楽しめたのではないでしょうか。
ステーションに到着した子どもたちは、町田敏暢大気・海洋モニタリング推進室長より、国立環境研究所が (1) 人為的な影響を無視できる大気の高精度・自動無人観測を目指して、落石岬と波照間島(沖縄県)に観測ステーションを設置したこと、(2) 両地域が日本および世界の温室効果ガス観測の重要な地域であることが説明されました。その後ステーション内で観測機器に関する説明があり、子どもたちは、普段は見る機会もない観測装置や観測結果についてメモを取りながら熱心に話を聞いていました(写真2)。次に隣の倉庫に移動し、壁に張り出したグラフを用いて落石岬での20年間の二酸化炭素(CO2)観測結果の説明を私が行いました(写真3)。まず、子どもたちめいめいの誕生年月のCO2濃度を見せて、生まれた季節によって濃度が大きく変動していることを知ってもらいました。この季節変動は植物の光合成と呼吸によるものということを説明し、小学校5〜6年生の子どもたちが生まれてからのここ11〜12年も、こうした季節変動を繰り返しながら化石燃料の燃焼により濃度が増加していることをグラフから学んでもらいました。さらに、大気に放出されたCO2の一部が海に吸収されていることを説明した上で、体験学習として海水によるCO2吸収実験を行いました。これは小ビンに海水を入れ、指示薬のBTB溶液を滴下して弱アルカリ性の海水が青色を示したところで、小ビンに息を吹き込んだ後、蓋をして振ると海水にCO2が溶け込んで酸性になる(海水の色が変わる)ことを確かめる実験です。黄色になった酸性の海水に今度は新鮮な空気を入れて混ぜると、また元の青色に戻ります。初めに町田室長がお手本を示しました。子どもたちは興味津々で、色が変わる度に「お〜!」と素直な反応です。次に一人ひとりにビンを手渡して自らの手で実験をしてもらいました。色が変わるので分かりやすく、何度も実験を試みていました(写真4)。この実験から、目の前の海がCO2を吸収していることを認識してくれたと思います。
ステーション見学の後、落石小学校に移動し、自転車発電の体験学習を行いました。白熱電球(60W)とLED電球(10W)の消費電力の違いが、ペダルの重さの違いに明確に現れるため、電気を作ることがどれだけ大変なのか身をもって体験できます。この体験により子どもたちの節電への意識が強くなることを期待しています。最後は制限時間内での発電量の競争を行って、盛り上がりました(写真5)。楽しい思い出にもなったことでしょう。
エコスクールを通じて、国立環境研究所と地域の小学校、地球環境モニタリングスターション設置地域の交流が行われていることは、国立環境研究所の事業を理解いただくとともに、地域の多くの方々に環境問題に興味を持っていただく大変有意義な機会であると思います。