センター長挨拶「第3期中期計画期間のはじめにあたって」

地球環境研究センター長 笹野泰弘

地球環境研究センター長 笹野 泰弘

2011年4月1日

国立環境研究所は、独立行政法人として2001年4月に再編されて以来10年間(2度の中期計画期間)を経過し、この4月(2011年)に第3期(5年間)の中期計画期間の開始を迎えることとなりました。

第2期中期計画の地球環境研究センター研究内容

第2期(2006年〜2010年度)中期計画において、地球環境研究センターでは、地球環境の戦略的なモニタリング(大気・海洋、陸域)、地球環境データベースの構築、地球環境研究の総合化・支援の業務を行うと同時に、研究所の4つの重点研究プログラムの一つである「地球温暖化研究プログラム」を主として担い、さらに基盤的な調査・研究として多くの課題について研究を進めてきました。

また、環境省、宇宙航空研究開発機構との共同事業である温室効果ガス観測技術衛星(GOSAT)プロジェクトに科学的側面から支援を行うとともに、「国環研GOSATプロジェクトオフィス」を設置し、取得されるデータの高次プロダクト作成のためのデータ処理運用システムの開発・構築・運用、プロダクトの検証、データ・プロダクトの提供などを行ってきました。

このほか、「グローバルカーボンプロジェクトつくば国際オフィス」、「地球温暖化観測推進事務局(環境省/気象庁)」、「温室効果ガスインベントリオフィス」の運営など、国内外の研究活動の基盤となる事業についても力を注いできました。さらに、温暖化問題に関するさまざまな質問・疑問に研究者が答えるシリーズ「ココが知りたい温暖化」を「地球環境研究センターニュース」に設け、全部で54のQ&A集を作成しました。これは、地球環境研究センターのウェブサイトにも掲載され、単行本としても市販されました。

第3期中期計画に向けた国立環境研究所の組織再編と地球環境研究センター新体制

第3期中期計画期間を迎えるに当たり、国立環境研究所は、研究部門を、環境研究の柱となる8つの分野(地球環境研究、資源・廃棄物研究、環境リスク研究、地域環境研究、生物・生態系環境研究、環境健康研究、社会環境システム研究、環境計測研究)に対応させた8研究センターに再編しました。これにより、地球環境研究センターからは、社会環境システム研究と深く関わる研究者が社会環境システム研究センターに、環境計測に関わる研究者の一部は環境計測研究センターに異動し、一方で大気環境研究領域、社会環境システム研究領域やアジア自然共生研究グループに所属していた研究者の一部を新たなメンバーとして迎えました。

地球環境研究センターの組織構成は、センター長、副センター長、上級主席研究員1名、6研究室、3推進室、主席研究員2名の体制となりました。また、行政系の係名が一部変更され、主幹、観測第1係、観測第2係、交流推進係、研究支援係という体制となりました。

地球環境研究センターの第3期中期計画における活動計画

地球環境研究センターが担う地球環境研究分野は、第3期中期目標・中期計画においては「地球環境の現況の把握とその変動要因の解明、それに基づく地球環境変動の将来予測及び地球環境変動に伴う影響リスクの評価、並びに地球環境保全のための対策に関する調査・研究を実施する」こととされています。また、「基礎研究から課題対応型研究まで一体的に推進するとともに、分野間の連携も図りつつ実施し、目標の達成を図る」とされていることから、モニタリングや観測研究等では他センター所属の研究員の協力を得つつ、引き続きこれを実施します、また、前期に続き重点研究プログラムとされた「地球温暖化研究プログラム」に特に力を注ぎ研究を進めることとしています。このうち、影響評価や適応策・緩和策、低炭素社会づくりなどに関しては、社会環境システム研究センターとの連携が不可欠であり、プログラムのメンバーとして多数入って頂いています。

地球環境モニタリグに関しては、成層圏オゾン層モニタリングを縮小する一方で、温暖化影響に関する2件のモニタリング(ディジタルカメラ画像解析による高山帯植生の生物季節[フェノロジー]に関するモニタリング、分布北限域にあたる造礁サンゴ分布とそれに共生する褐虫藻の変化の長期モニタリング)を本格的に開始します。

3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震による施設・機器類の被害、原子力発電所事故に伴う電力事情の悪化の中で、研究やモニタリングの実施に関して一時的に進捗が停滞することがあるかも知れませんが、できるだけ速やかに通常の研究態勢に戻るよう努力したいと考えております。

大地震・大津波で甚大な被害を蒙った地域の住民の皆様には心からお見舞いを申し上げるとともに、私たち研究機関に働くものは、中期計画に定められた研究・業務内容に留まらず、研究所の有する専門的知見と研究力を注いで、このたびの大災害からの復旧・復興に対して貢献していくことが重要だと考えています。

今後とも、国立環境研究所ならびに地球環境研究センターの研究活動につきまして、ご理解とご支援を賜りたく、よろしくお願い申し上げます。