発表論文

パリ協定の短中期的排出目標と長期気候安定化目標における含意

著者
藤森真一郎, 長谷川知子, 高橋潔, 増井利彦, 滝見真穂
雑誌名
土木学会論文集G (環境)
DOI
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概要

世界各国はCOP21に先立って2030年までの短中期的な温室効果ガス(GHG)排出量目標を約束草案という形で宣言した。また同時に、全球平均気温上昇を2°C以下に抑えるという長期的な気候安定化目標が明記された。本研究は統合評価モデルAIM(Asia-Pacific Integrated Model)を用いてこの短中期的排出目標が長期的な気候緩和策に及ぼす影響とその含意を示した。各国が自国決定貢献(NDC)を達成したとしても、世界全体のGHG排出量は費用最小排出経路と比べて2030年において15GtCO2eq/年大きかった。この余分に排出したGHGを2030年以降で追加的に削減をすることで、平均気温上昇を2°C以下に抑えるという長期気候安定化目標は達成可能であった。しかし、2050 年までは急速な排出削減が必要となり、エネルギーシステムや社会経済システムの急激な変革が求められ、2050年以降では負のCO2排出量を実現するバイオマスと炭素隔離貯蔵を組み合わせた対策と植林といった土地利用をベースとした対策の大規模導入が必要となる。2020年に行われる各国のNDCの見直しでは、こういったことを踏まえ排出目標を検討することが求められる。