水資源は、飲用、農業生産のみならず発電にも使われ、現在、全世界の発電量の16%が水力発電でまかなわれている。将来の気候変化によって降水量が変われば、水力発電に使うことができる水資源量も変わる。そこで本研究では、将来の気候変化にともなう河川流量の変化が水力発電に与える影響を、2つの観点(理論包蔵水力、流況に基づく水力発電量)から調査した。前者は、年間に賦存される水資源量の重力エネルギーを損失なく電気エネルギーに変換したときの電力量を、後者は、河川流量の変化の影響を受けやすい流れ込み式による水力発電を想定したときの電力量を、それぞれ評価したものである。 理論包蔵水力は、将来の降水量変化を反映した変化傾向を示した。全球総和した理論包蔵水力は、最も温暖化が進行する高位参照シナリオ(RCP8.5)の下で、前世紀末に比べて今世紀末には4%ほど増加する。一方、流況に基づく水力発電量も全球総和としては増加傾向を示すものの、その増加率は包蔵水力の増加率より小さい。水力発電で用いられる2つの発電効率の将来変化をもとに、気候変化による水力発電への影響を4つに類型化し、その地域分布を示した。