灌漑は、乾燥地や乾季での作物栽培や多毛作化を可能にした。温暖化により農地からの蒸発散量が増えると、農地の土壌水分を保つためには現在よりも多くの灌漑水量が必要となる。しかし、多毛作栽培や灌漑栽培が水資源をどの程度圧迫しているかを検討するための情報が不足している。そこで、現存の多毛作栽培や灌漑農地を将来にわたって維持する場合、作物生育に必要な水量を、生育期間中の蒸発散量に着目して水源(降水・河川から取水する灌漑水・河川以外から取水する灌漑水[注])別・農地利用(二毛作灌漑地・一毛作灌漑地・天水農地)別に評価し、それぞれの将来変化を調べた。
結果として、地球全体でみると、将来、農地からの蒸発散量の増加が予測されるが、この蒸発散量のうち、降水や河川から取水した灌漑水を起源とする量は、現在と大きく変わらない。これは、地域による違いはあるものの、農地利用ごとに地球全体で平均した降水量や河川流量が、現在と大きく変わらないためである。将来の蒸発散量の増加に応じて、河川以外から取水する灌漑水量を増やさなければならない。特に、灌漑により乾燥地や乾季での作物栽培が可能になった地域(インドなど)では、この傾向が顕著である。