発表論文

気候変化が作物収量変化を通じて食料消費・経済に及ぼす影響のシナリオ分析

著者
長谷川知子, 藤森真一郎, 申龍熙, 高橋潔, 増井利彦
雑誌名
土木学会論文集G(環境), 68(5), I_227-I_236
DOI
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概要
本論文では気候変化による作物収量変化が、食料消費、飢餓、経済全体に対してどの程度影響するのかを分析した。将来の社会経済条件の違い、気候条件や適応策の取り方などの諸条件をシナリオとして与え、これらを比較することで気候変化によってもたらされる農業部門への影響を総合的に解析した。分析には世界経済モデルと作物モデルを用い、人口、GDP、作物収量(気候変化の影響と適応策の効果を考慮)をシナリオとして考慮した。結果は以下のことを示唆する。社会経済条件は栄養不足人口や食料消費にとって大きな因子である。気候影響は適応策を適切に実施する場合、栄養不足人口に対して軽微な影響であるが、適応策を適切に実施できない場合には大きな影響をもつ。また、作物収量変化によるGDP損失は比較的小さいことが明らかとなった。