発表論文

複数モデルアンサンブルおよび構造の異なる単一モデルアンサンブルの信頼性

Reliability of multi-model and structurally different single-model ensembles

著者
Yokohata T., Annan J. D., Collins M., Jackson C. S., Tobis M., Webb M. J., Hargreaves J. C.
雑誌名
Climate Dynamics, 39, 599-616
DOI
10.1007/s00382-011-1203-1
概要
将来気候予測などのために行う数多くの数値シミュレーションの集まり(気候モデルアンサンブル)に対して、新たな手法を用いて評価を行った。この手法は、複数のシミュレーションと観測値との関係を統計的に評価するものである。その結果、単一のモデルを利用して作成したアンサンブル[1]の信頼性は低いことが多いが、複数のモデルを利用した場合[2]の信頼性は高いことがわかった。近年の気候モデル研究の多くは、複数モデルアンサンブルのデータを利用しており、本研究の成果は、これらの研究の信頼性に根拠を与えるものである。
1.
単一モデルアンサンブル:気候モデルではさまざまな経験式が用いられており、その中の定数には不確実性がある。単一モデルアンサンブルでは、そのような定数を変化させることで複数のシミュレーションを行い、モデルの不確実性を評価する。「物理摂動アンサンブル」とも呼ばれる。
2.
複数モデルアンサンブル:IPCC第四次評価報告書に向けて、世界の気候研究機関が同一の境界条件を利用して過去の気候変化再現・将来気候予測実験を行った(結合モデル相互比較プロジェクト:CMIP3)。近年の多くの研究がCMIP3データにもとづき、過去の気候変化メカニズムの解明や、将来の気候変化予測を行っている。また、現在ではIPCC第五次評価報告書に向けた結合モデル相互比較プロジェクト:CMIP5 のデータが公開され、研究がすすめられている。