最新の気候モデルによる、二酸化炭素増加に対する平衡気候応答と過渡気候応答*1の比較を行った。前者は気候安定化などの長期的な気候変化を考えるうえで、後者は近い将来に起こりえる気候変化を考えるうえで重要であるが、これまで両者の違いについては十分に調べられてこなかった。論文では、平衡・過渡応答のそれぞれにおいて働く気候フィードバック*2が異なるメカニズムを明らかにした。また、気候モデルを用いて平衡気候応答を計算する際には通常、海洋の物理過程を簡略化するが、この取り扱いがもたらす問題点について検討した。
*1 二酸化炭素増加に対する平衡気候応答と過渡気候応答:二酸化炭素の増加に対して気候システムが新たな平衡状態に達したときの元の状態からの変化を平衡気候応答といい、平衡状態に達するまでの変化を過渡気候応答という。
*2 気候フィードバック:二酸化炭素濃度の増加によって温室効果により大気温度が上昇し、それに伴い雲による日射反射/赤外線吸収が変化し、さらに温暖化が促進/抑制される「雲フィードバック」や、温暖化に伴い高緯度域の氷が解け、地表の日射吸収量が増えることにより温暖化がさらに促進される「氷アルベドフィードバック」 など、さまざまなフィードバック過程が存在する。