水二量体は、可視、紫外、熱赤外領域に連続吸収帯をもつので地球大気の放射収支において重要な役割を果たしている。本研究では、室温における水二量体の相互作用エネルギーを、圧力広がり測定からPermenter-Seaver関係式を用いて求めた。圧力広がり測定は、連続光レーザーキャビティリングダウン分光法*1を用いて、水蒸気のν1+ν3バンドについて、室温における様々な緩衝ガスに対して行った。
300Kにおける水二量体に対する相互作用エネルギーを評価するために、ab initio分子軌道計算を用いたMonte Carloシミュレーションを行った。その結果は、実験事実をよく説明していることが示された。
*1 連続光レーザーキャビティリングダウン分光法:測定試料の間に設置された高反射率ミラーを用いたキャビティの一方からレーザー光を入射させ、キャビティ内で多重反射され出射させた光(リングダウン光)を他方で検出する。キャビティによる多重反射のためにレーザー光の光路長は非常に長く(数km)なり、サンプルによる吸収が数千倍に増幅され、吸収法であるにもかかわらず非常に感度の高い測定を可能にする。