発表論文

Ice-core record of methyl chloride over the last glacial-Holocene climate change
南極の氷床コアから得られた氷期ミ間氷期の塩化メチルの変動
斉藤拓也, 横内陽子, 青木周司, 中澤高清, 藤井理行, 渡辺興亜

大気中の塩化メチルは、オゾン破壊の原因となる塩素の成層圏へのキャリヤ-として寄与している。塩化メチルは自然発生源を主な起源とするため、フロンなどの人為起源オゾン破壊物質が大量に生産・排出される前にはオゾン破壊において主要な役割をになっていたと考えられているが、過去の塩化メチルに関する研究は非常に限られている。本論文では、南極の氷床コアに含まれる過去8万年間の空気の分析を行ない、塩化メチルが過去の気候変動に対してどのように変動してきたか調べた。その結果、現在へと続く過去1万年間の温暖な間氷期の間、塩化メチルは現在とほぼ同じ濃度レベルで存在していたことが初めて明らかとなった。また、寒冷な氷期においては、間氷期よりも高い濃度であったことが示唆された。

Saito, T., Yokouchi, Y., Aoki, S., Nakazawa, T., Fujii, Y., Watanabe, O. (2007) Ice-core record of methyl chloride over the last glacial-Holocene climate change. Geophys. Res. Lett., 34, L03801, doi:10.1029/2006GL028090.