発表論文

Impact of the 2002, southern hemisphere, stratospheric warming on the tropical cirrus clouds and convective activity
2002年9月の南半球突然昇温が熱帯の巻雲と対流活動に与える影響について
江口菜穂, 小寺邦彦

2002年9月に南極域で発生した成層圏突然昇温*1による熱帯の巻雲への影響について 、米国のTerra 衛星に搭載されているセンサMODIS*2 による雲データを用いて調べた。突然昇温によって熱帯の下部成層圏より下層の上昇流が強まり、上部対流圏は断熱的に冷却され巻雲が発生していた。また突然昇温による上昇流により積雲対流が発達し、上部対流圏への湿潤空気の供給と、対流加熱にともなう上部対流圏の冷却(ケルビン波応答)とによって、突然昇温消滅後約2週間、巻雲が維持されていたことが明らかになった。

*1 成層圏突然昇温:対流圏中高緯度で励起された波長の長い波(プラネタリー波、東西波数1-2)が成層圏に伝播し、砕波することでエネルギーを落し、それによって成層圏の風系が影響を受け極域が高温となる現象。(西風が弱まるもしくは東風になる。さらに成層圏の南北循環の熱帯から極向きの流れが強まることで、極域が下降(昇温)、熱帯域が上昇(低温)となる現象。)
 参考) http://kobam.hp.infoseek.co.jp/meteor/abrupt-warming.html
*2 MODIS : Moderate Resolution Imaging Spectroradiometer (中分解能撮像分光放射計)
  http://kuroshio.eorc.jaxa.jp/ADEOS/mod_nrt/index.html(JAXAホームページ)
  http://modis.gsfc.nasa.gov/

Eguchi, N., Kodera, K. (2007) Impact of the 2002, southern hemisphere, stratospheric warming on the tropical cirrus clouds and convective activity. Geophys. Res. Lett., 34, L05819, doi:10.1029/2006GL028744.