著者らのグループが開発した全球気候モデルには、空間解像度が異なる高解像度版(~100km)と中解像度版(~300km)がある。両者のCO2倍増平衡気候感度*1は同程度であるにもかかわらず、前者のCO2漸増過渡気候応答*2は後者のそれより大きく、IPCC 第四次評価報告書に提出された気候モデルの中で最も大きい。本研究では著者らが開発した手法を用いて気候フィードバック過程*3について調べ、高・中解像度版で気候応答が異なる主な原因が、氷アルベドフィードバック*3と海洋による熱の取り込みの違いにあることを明らかにした。これは、気候モデルによる温暖化予測の不確実性について理解する上で重要な知見となる。
*1 CO2倍増平衡気候感度:気候モデルの中で大気二酸化炭素濃度を現在の2倍に増やし、モデルの気候状態が平衡 に達したときの全球平均地表気温変化。
*2
CO2漸増過渡気候応答:気候モデルの中で大気二酸化炭素濃度を徐々に(例えば年率1%の割合で)増やしたときの全球平均地表気温変化。
*3
気候フィードバック過程:例えば、二酸化炭素濃度の増加によって温室効果により大気温度が上昇し、それに伴い水蒸気濃度が増大し、さらに温室効果が増強される「水蒸気フィードバック」や、温暖化に伴い高緯度域の氷が解け、地表の日射吸収量が増えることにより温暖化がさらに促進される「氷アルベドフィードバック」など、様々なフィードバック過程が存在する。