NEWS2021年10月号 Vol. 32 No. 7(通巻371号)

夏の大公開 「みんなで実験、ラボ訪問環境を考える夏休みオンライン体験」を開催しました(3) どう思う?なにができる?みんなで話そう、地球温暖化のほんとうのこと

7月17日(土)国立環境研究所は夏の大公開をオンラインで開催しました。地球システム領域地球環境研究センターでは、「100人で海水酸性化実験」「つくば/東京/北海道3元生中継ラボツアー」「どう思う?なにができる?みんなで話そう、地球温暖化のほんとうのこと」「CGER virtual lab tour: A sneak peek into our global environmental monitoring activities」を企画しました。本稿では、「どう思う?なにができる?みんなで話そう、地球温暖化のほんとうのこと」の様子を担当者から簡単に報告いたします。

ワークショップ「どう思う?なにができる? みんなで話そう、地球温暖化のほんとうのこと」を開催しました

前田和(社会対話・協働推進オフィス)

1.はじめに

地球システムリスク解析研究室の横畠徳太主幹研究員が講師となり、イラストなどを交えながら小学生にもわかりやすく地球温暖化について説明しました。その後、3つのグループにわかれて、参加者たちと意見を出し合いました。

当日は、小学3年生から大人まで12組(25名)の親子や子どもたちが参加。終了後のアンケートでは、

「グラフや絵、図などを入れていて、飽きないで、子どもにもわかりやすかった」
「地球温暖化に関して、現状から100年後までわかりやすく説明された」
「地球温暖化について、みんなで考えられ、考えが深まった」
「自分の住んでいる地域以外の参加者の話や取り組みを聞く事が出来て、とても良かった」
「国内国外色々な場所から参加している方がいて、刺激的だった」
「詳しく教えてくれて良くわかりました!」
「より多くの人が参加できる方法を検討してほしい」

など、地球温暖化に関する知見が深まったとの声や、場所に関係なく参加できるオンライン開催ならではの感想もあり、参加者のみなさんからとても好意的な感想をいただきました。

ワークショップの様子をご紹介します。

2.地球温暖化ってなに?何が困るの?

第一部では、「地球が温暖化することによって何が困るのか?」をテーマに、まずは横畠さんが地球温暖化とその影響について解説しました。

地球全体の年平均気温は、この100年で1℃ほど上がっており、地球ではすでにさまざまな影響が出始めています。

気温が上昇すると海水が温まり、空気中の水蒸気が増えます。水蒸気が増えると、ある場所では一度に降る雨の量が増え、それは大雨や洪水につながります。一方で、雨が降らない地域では水蒸気の蒸発が加速し、ますます雨が降らなくなり乾燥して火災が増える要因にもなります。

大雨や洪水による住宅やインフラへの被害、干ばつによる農作物の不作、熱波による熱中症患者の増加など、私たちの暮らしですでに起こっているさまざまな影響についても説明がありました。

横畠さんの解説の後には、参加者が自分の考えや思いを話すグループワークを行いました。
第一部のお題は、「地球温暖化で、何が困ると思いますか?」。

各グループから出た意見を紹介します。

まず、地球温暖化による農作物への影響について多くの声があがりました。食べ物が作れなくなることにより食料価格が上がり、貧しい人ほどご飯を食べられなくなるなど、貧富の差がもっと大きくなるのでは?といった意見も出ました。

また、大雨や洪水、森林火災やそれに伴う健康被害など、すでに起こっている影響のほか、暑さは人間だけでなく、植物や動物へも影響を及ぼし、動植物の絶滅について心配する声もありました。

このままでは、地球に住めなくなるのでは?という意見も小学生からあがり、未来を生きる若い世代からの率直な声を聞くことができました。

3.地球温暖化をとめるにはどうしたらいい?

第二部は、「地球温暖化をとめるためになにができるか」をテーマに、進行しました。

地球温暖化の主な原因である二酸化炭素(以下、CO2)は、主としてものが燃えることにより発生しますが、現在では化石燃料(石炭、石油など)を燃やし電気などのエネルギーを作ることによって、空気中に大量のCO2が排出されています。

 解説で使用したスライドの一部

排出されたCO2は、植物が成長する際に吸収されたり(光合成)、海にとけて吸収されますが、私たちの暮らしから出るCO2量が多すぎるため、自然では半分しか吸収されず、どんどん空気中にたまっていく状態が続いています。

このまま濃度が上昇を続けるとさらに気温が上昇し、今以上の影響が予想されるため、現在400億トンといわれるCO2の排出量を、できるだけ早く“0”トンにすることが今後重要なカギに。

2020年10月に、日本政府も2050年までにCO2を含む温室効果ガスの排出量実質ゼロを目指すことを世界に宣言しました。

CO2を排出しないエネルギーの普及や、出てしまったCO2をできるだけ吸収するなど、これからは自分たちが出したCO2は自分たちで吸収する「カーボンニュートラル」という考え方が、世界的に求められています。

第二部でも、参加者によるグループワークが行われ、「地球温暖化をとめるためには、どうしたらいい?」をテーマに話し合いました。

まずは、再生可能エネルギーに関する意見が出ました。火力発電に替わるものとして、太陽光発電、風力発電、水素ガスなどの利用が挙げられました。

小学生からは、実際に学校で太陽光パネルが使われている話や、グリーンカーテン用の苗をもらったなど実体験に基づいた話も聞けました。

化石燃料を使う代わりに、再生可能な方法で生産された電力(再生可能エネルギー)や、CO2を発生しないエネルギーを使うことが重要です。ガスコンロをIHコンロに、ガソリン車を電気自動車や水素ガス利用に替えるといった意見も出ましたが、気軽に利用できるような設備がまだあまり整っていないという指摘もありました。

また廃棄の際など、ごみを燃やすときに出るCO2を減らすため、4R(リフューズ、リデュース、リユース、リサイクル)の徹底や、プラスチックの利用をやめ木材を使っては?との意見が出ました。木材を使うために木を植えることで、カーボンニュートラルにもつながるといった声もありました。

このほかに、地球を脱出して新しい惑星に住むのはどうか?といった独創的な視点の意見も出て、地球温暖化の解決に向けたさまざまな考えや思いを聞くことができました。

4.おわりに

ワークショップの最後では、参加者からいただいた質問に横畠さんが回答しました。

1時間半という長い時間でしたが、小学生から親子、大人の参加者など、幅広い世代の方と自由に話し合うことで、登壇した研究者を含め、最後まで楽しく進行することができました。

参加者のみなさんの率直な意見を聞くことができ、私たちもとても良い機会となりました。オンラインというツールを生かして、こういった会を今後も実施していけたらと思います。
ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました!